The Black Wizards – “Killing The Buzz”

ポルトガル出身のバンドThe Black Wizardsが、最新シングル “Killing The Buzz” をリリースしました。本作は、短視眼的で強欲な「ありふれた男」が、他者を争わせて私欲を肥やす歪んだ社会構造を鋭く描き出しています。「俺たちが礼儀正しく血を流している間に、彼は瓶を揺さぶっている」という象徴的な一節からは、権力による搾取と、それに翻弄される大衆の対比が鮮明に浮かび上がります。

楽曲の後半では、空虚な言葉を連ねる相手への嫌悪感と、そこからの決別が力強く歌い上げられます。「You’re killing the buzz(お前は興奮をぶち壊している)」というリフレインは、精神的な抑圧に対する苛立ちを爆発させ、1分後にはその場を去るという宣言へと繋がります。バナーに飾られた外面の良さや、金銭で時間を買い戻そうとする欺瞞を痛烈に批判する本作は、バンドのルーツであるヴィンテージなロックの熱量と、現代的な社会風刺が見事に融合した一曲です。


緻密な設計図を微風にさらし、偶然性の色彩で塗り替える——Kreidlerが『Schemes』で到達した、執着を手放した先の多幸感

ベルリンとデュッセルドルフを拠点に長年活動を続けるトリオKreidlerが、Bureau Bからの9作目となるニューアルバム『Schemes』を5月にリリースします。本作では彼らの代名詞であるリズミカルなグルーヴを維持しつつ、より軽やかで推進力を抑えたアンビエントな音響空間へとシフト。先行シングル「Marble Upset」の抽象的で脈打つようなサウンドが示す通り、緻密な設計図(スキーム)をあえて解きほぐし、偶然性や遊び心に満ちた実験的なアプローチが全編を貫いています。

今作の大きな特徴は、自然音や屋外でのフィールドレコーディングを大胆に取り入れている点です。ベルリンのandereBaustelleで行われた録音セッションでは、スタジオ内にあった巨大なスチール製のオイルタンクを楽器として使用するなど、その場の衝動を形にする即興性が重視されました。ゲストにブエノスアイレスの旧友Leo Garciaを迎えた楽曲でも、都市の喧騒の中で録音されたフィールドレコーディングを基盤に多幸感溢れるメロディが構築されており、精緻なエレクトロニクスと予測不能な現実の音が鮮やかに融合しています。

全編を通して、楽曲はまるで一本の糸に吊るされたビーズのように、それぞれが独立した世界を持ちながらも緩やかに繋がっています。ファンキーなシンセが躍る「Beads」から、夏の雪片のようにメロディが重なる「Snowflakes」、そしてセミの鳴き声が夜の静寂を彩る終盤の「Tar」まで、音楽は常に多方向へと揺れ動いています。構造の「折り畳みと展開」の中に喜びを見出した本作は、ストイックな静止を拒み、知的なユーモアと寛容さを備えた現代のアンビエント・ポップとして結実しました。


Starter Car – Throwing Down

Starter Carが放たれた最新曲「Throwing Down」は、荒削りなエネルギーと緻密なソングライティングが交錯する、バンドの新たなフェーズを象徴する一曲です。ライブシーンで培われた爆発的な衝動をそのままに、90年代のオルタナティヴ・ロックへの深い敬意を感じさせる重層的なギターサウンドが、聴き手の感情を力強く揺さぶります。

楽曲全体を貫くのは、日常の閉塞感を打ち破るような爽快な疾走感と、どこかノスタルジックなメロディの融合です。2026年のインディー・シーンにおいて、Starter Carが提示するこの「等身大の咆哮」は、既存のファンのみならず、新たなリスナー層をもその渦中に巻き込む決定的なアンセムとなるでしょう。

90sの轟音とドゥルーズの哲学が交差する、AI時代への鋭い逆襲——Ain’tがデビューEPで描き出す、欲望と初期衝動の『月面着陸』

サウス・ロンドンの5人組バンドAin’tが、5月22日にリリース予定のデビューEP『How They Faked The Moon Landing』から、強烈な新曲「Grazer」を公開しました。2024年に「Best New Bands」の一つに選出されて以来、「Pirouette」などの優れたシングルを発表してきた彼らですが、今作ではClive Barkerの伝説的ホラー映画『ヘル・レイザー』から直接的なインスピレーションを得ています。旋律的でありながら研磨するように響くギターに乗せて、人間の欲望と恐怖、そして「悦楽と腐敗の器」としての身体性が、ドゥルーズ=ガタリの哲学的な視点をも交えて生々しく描き出されています。

ボーカルのHanna Baker Darchは、本作を通じて「ポップカルチャーは深遠ではない」とする風潮に異を唱えています。劇中の悪役フランク・コットンを「器官なき身体」や「欲望する機械」になぞらえ、通俗的と見なされがちなスラッシャー映画の中に潜む神秘的な芸術性を抽出しました。AIの台頭により表現の価値が揺らぐ現代において、彼女は単なる「ハイブロー」な作品だけでなく、あらゆる創造性の重要性を強調しています。90年代のスラッカー・インディーやシューゲイザーの質感を纏いつつ、知的な批評性と肉体的な衝動が同居する、Ain’tの真骨頂とも言える一曲です。


Blood Wizard – “I Know You Well”

Blood Wizardが、4月16日にSad Club Recordsからリリースされる最新EP『Lucky Life』より、新曲「I Know You Well」を公開しました。2024年のアルバム『Grinning William』を経て届けられた本作は、中心人物のCai Burnsにとって極めてパーソナルな「親密な人々との超感覚的な繋がり」をテーマに据えています。サウンド面では彼が影響を受けてきたオルタナティヴ・ロックへの本能に立ち返り、これまでの作風よりも厚みのあるシューゲイザー的な空気感を導入。重厚なギターが空間を支配する、バンドにとって新たな境地を示す一曲となっています。

今作『Lucky Life』の制作において、バンドは従来のスタジオ練習から離れ、メンバーそれぞれの自宅に集まってサンプル実験やボーカルアレンジを練り上げるという、より親密で実験的なアプローチを採用しました。この共同作業による変化は、4月に控えるバーミンガム、リーズ、ブリストル、そしてロンドンのMoth Clubを巡るヘッドラインツアーや、Sad Club Recordsがキュレーションを務める「Young Barbican Takeover Festival」でのステージでも遺憾なく発揮されるはずです。「プロジェクトの転換点」とバンド自らが語る本作は、2026年のインディー・シーンにおいて彼らの存在感をさらに強固なものにするでしょう。


暖炉の前で演じた夢と、履歴書が消える冬の現実——Rua Ríが『Johnny Workman』で剥き出しにする、アイリッシュ・フォークの新たな鼓動

アイルランドのコーヴ出身のシンガーソングライターRua Ríが、デビューアルバム『Tell Your Mother I Saved Your Life』を5月1日にSoft Boy Recordsからリリースすることを発表しました。アイルランドのフォークの伝統を背景に持ちながらも、極めて独創的でパーソナルな表現スタイルを確立。ささやくようなミニマルな音像の中に、鋭い言葉遊びと感情に深く切り込む叙情性を共存させた、全10曲からなる自伝的な作品に仕上がっています。

アルバムからの先行シングル「Johnny Workman」は、彼の幼少期の思い出に端を発する楽曲です。かつて実家の暖炉の前で「仕事を探しているジョニー・ワークマンだ」と言いながら様々な職業の真似をして遊んでいた無邪気な記憶を、現代のシビアな現実へと反転させています。曲の中では、クリスマス時期の失業という厳しい経験が綴られ、履歴書を送り続けても返信がない「ゴースト(音信不通)」状態が続くことの精神的な消耗が、切実に描き出されています。

この楽曲は、苦境に立たされた人々に寄り添うアンセムであり、Rua Ríというアーティストが持つ独自の視点と、コーヴという土地が育んだ音楽的感性を雄弁に物語っています。子供の頃の遊びが大人になってからの切実な「仕事探し」へと繋がる構成は、彼のソングライティングにおける物語性の豊かさを象徴しています。伝統的な響きと現代の生活の痛みが交錯する本作は、2026年のアイリッシュ・インディーシーンにおいて重要なマイルストーンとなるでしょう。


TV Star – “Reality Cheque”

シアトルとタコマを拠点に活動する5人組バンドTV Starが、4月24日にFather/Daughterからリリースされる待望のデビューアルバム『Music For Heads』より、新曲「Reality Cheque」をミュージックビデオと共に公開しました。先行シングル「Out of My Bag」が各メディアで高い評価を受ける中、満を持して届けられた本作。2020年の結成以来、数年の歳月をかけてEPやシングルで着実に実力を蓄えてきた彼らにとって、本作はまさにバンドの集大成となるフルアルバムへの決定的な一歩です。

彼らのサウンドは、シューゲイザーやブリットポップの黄金期を現代的に再解釈したもので、The Stone RosesやMojave 3、さらにはCatherine Wheelといった名立たるバンドを彷彿とさせます。バンド名の由来が1996年のButthole Surfersの楽曲にあることからも窺える通り、90年代のオルタナティヴ・ロックへの深い敬意がその核に流れています。アルバムのリリースに合わせたツアーも控えており、2026年のインディー・シーンにおいて、彼らが紡ぐノスタルジックかつ新鮮な音像は多くの「ミュージック・ヘッズ」を虜にするでしょう。


荒廃する世界で鳴らす、重厚なアシッド・ロックの咆哮——Primitive Ringが『Heads Will Roll』で切り拓くヘヴィ・サイケの新章

Ty Segallとのプロジェクト(FuzzやGØGGSなど)やソロ名義CFMでの活動を通じ、20年にわたり西海岸のガレージロック・シーンを牽引してきたCharles Moothart。彼がHooveriiiのBert Hoover、Jon Modaffと共に結成した新プロジェクト「Primitive Ring」が、セルフタイトルのデビューアルバムのリリースを発表しました。2025年に立て続けに発表された一連のダブルシングルを経て、ついに11曲入りのフルレングスとしてその全貌が明かされます。

アルバムからの先行シングル「Heads Will Roll」は、Blue Cheerに代表される60年代アシッド・ロックの衝動を現代に蘇らせたような、重厚なサイケデリック・プロトメタルサウンドです。バンドが「アルバムを一つに繋ぎ止める接着剤になった」と語るこの曲は、レコーディングの最後に制作され、プロジェクトのビジョンを完成させる重要なピースとなりました。高速で容赦なく畳みかけるリフの応酬は、まさに彼らが得意とするヘヴィ・サイケの真髄を体現しています。

歌詞や精神性の面では、混迷を極める現代の政治的状況や、荒廃へと向かうかのような世界に対する「今、この瞬間を生きる」という切実な緊張感が込められています。絶望的な状況下であっても、自分たちが今手にしているものの中に美しさを見出そうとする彼らの姿勢は、荒々しいサウンドの裏側にある強い生命力を感じさせます。今春にはTy Segallとのツアーも控えており、ライブシーンでもその圧倒的な熱量が炸裂することになりそうです。


Lime Garden – “Downtown Lover”

ブライトンを拠点に活動するLime Gardenが、来月リリースされるセカンドアルバム『Maybe Not Tonight』より、新曲「Downtown Lover」を公開しました。タイトル曲や「23」、「All Bad Parts」といった中毒性の高い先行シングルに続く本作は、わずか3つのコードから数分で書き上げられたエネルギッシュなナンバーです。バンドらしいキャッチーな疾走感はそのままに、アルバムへの期待をさらに加速させる一曲となっています。

ボーカル兼ギタリストのChloe Howardによれば、本楽曲は自身の恋愛における「回避的な行動」を深く掘り下げた内容になっています。ネットの記事で見かけた「downtown love」という、常に新しい刺激や注目を求める恋愛傾向を示す言葉にインスパイアされ、自分自身の行動原理を理解しようとする試みが歌詞に反映されました。2024年のデビュー作を経て、より自己内省的でありながらも開放的なポップ・サウンドへと進化したLime Gardenの現在地を象徴しています。


Eaves Wilder – “Mountain Sized”

北ロンドンのアーティストEaves Wilderが、4月17日にSecretly Canadianからリリースされる待望のデビューアルバム『Little Miss Sunshine』より、多幸感に満ちた新曲「Mountain Sized」を公開しました。一時は音楽活動を完全に休止し、修道院への入門を検索するほど自らの存在意義に悩んだ彼女ですが、その空白期間が「感情のスケールを最大化させる」という創作の原動力となりました。本作は、Lily Allenの「The Fear」のように自らの弱さをさらけ出す勇気に触発され、山や空のように揺るぎない存在への憧憬を爆発的なリリースの感覚へと昇華させた、彼女にとっての新たな夜明けを象徴する楽曲です。

自身の庭の小屋(シェッド)に引きこもり、作詞・作曲・アレンジ・プロデュースまでを自ら手がけたこのアルバムは、Cocteau TwinsやSlowdiveといったドリーム・ポップの系譜から、Jane’s Addictionのダイナミズム、さらにはWolf AliceやWet Legに通じる現代的なエネルギーまでを飲み込んだ、極めて豊潤な音楽的風景を描き出しています。元恋人からのニックネームを皮肉を込めて冠したタイトル作『Little Miss Sunshine』は、女性に向けられる「愛想良くあるべき」という社会的圧力への批評を内包しつつ、一人の音楽愛好家としての深い造詣と、独自の「世界」を構築しようとする不屈の情熱が結実した一作となっています。