CARR – “Bang It Out”

「Bang it Out」は、言葉や意味、そして真の情緒的な親密さが枯渇してしまった関係性の終着点を鮮やかに描き出しています。修復すべきものが何も残っておらず、もはや互いの心を通わせる術を失ったカップルが直面する、虚無的で重苦しい瞬間を切り取った楽曲です。

あらゆる感情的な繋がりが消え去った後に残された、唯一の結びつきである「肉体的な繋がり」だけに焦点を当てています。親密さの崩壊という冷徹な現実を直視しながらも、その物理的な接触だけが虚しく繰り返される様子を表現しており、現代的な人間関係の孤独と虚脱感を浮き彫りにしています。

Agitator – “Vänlighet”

Agitatorのニューアルバム『Aret av sex』に向けた最初の楽曲として制作された「Vanlighet」は、バンドの卓越した技術力と、これまで以上に鋭利に研ぎ澄まされたリリックが際立つ一曲です。作詞を担当したFelixは、Morrisseyの歌詞の世界観に影響を受けたことで、「史上最も意地悪な曲を書く」という試み自体に価値を見出しました。これまで無意識に追求してきた毒のある表現を明確に言語化し、バンドの新たな指針として提示しています。

歌詞の内容は、パーティーに乗り込み「俺と付き合うにはお前らはブサイクすぎる」と言い放って立ち去るような、冷徹で容赦のないものです。しかし、Felixは「現実に悪意を振りまくよりも、神だけを基準にして歌詞の中で悪意を爆発させる方が、何千倍も親切(Vanlighet)である」という逆説的な哲学を込めています。技術的なバンドアンサンブルと、人間の内面にある残酷さをえぐり出すような言葉が融合し、聴き手に強烈なインパクトを与える楽曲に仕上がっています。

Wavves – “Bozo”

サンディエゴのロックシーンを代表する Wavves が、わずか42秒という短さに初期衝動を凝縮したニューシングル「Bozo」をリリースしました。Nathan Williams らしい、不遜ながらも切実なエネルギーが爆発するこの曲は、装飾を一切排除した極めてパンキッシュな一曲。一瞬で駆け抜ける演奏のなかに、バンドが持つ独自の荒々しさとキャッチーな毒気が濃縮されています。

歌詞では、「酒が必要だ」「身動きが取れず、死にそうだ」といった閉塞感や、電話越しに感じる孤独、そして元恋人への愛憎が入り混じる生々しい感情が叩きつけられています。「俺はお前が嫌いだし、お前も俺が嫌いだろ」と潔く言い放つリリックは、まさに Wavves 節。失恋の痛みやフラストレーションを、42秒間のノイズとスピードで一気に昇華させる、彼らなりの爽快なカムバック・アンセムです。

南カリフォルニアの光と毒。Lavalove が 2nd アルバム『TAN LINES』を4月に発表!サーフ・ロックと現代インディーが交差する「終わらない夏」のサウンドトラック

南カリフォルニアを拠点に活動するインディー・ロックバンド Lavalove が、待望の2ndアルバム『TAN LINES』を4月3日に Pure Noise Records からリリースすることを発表しました。あわせて先行シングル「Sniffin’ Around」の配信とミュージックビデオも公開。今作は State Champs や The Warning を手がけた Anton DeLost をプロデューサーに迎え、終わらない夏の興奮をパッケージした作品に仕上がっています。

リード曲「Sniffin’ Around」について、ボーカル兼ギタリストの Tealarose Coy は「ノスタルジックで踊りやすいけれど、歌詞は浮気した恋人を殺害するというダークな内容」と語っています。「カリフォルニアのチアリーディング」のような明るいサウンドと、パラノイアに支配される不穏なストーリーの対比が特徴です。語り手の暴走に思わず共感してしまうような、ブラックユーモア溢れる「女性の権利(と過ち)」を支持する一曲となっています。

アルバム『TAN LINES』の核にあるのは、完璧な一夜の先に自由な人生があると信じる「エスカピズム(現実逃避)」の精神です。60年代のポップスやサーフ・ミュージックのシンプルさを、現代のガレージ・ロックやサイケ・ポップの質感でフィルターにかけたサウンドは、時代を超越した即効性を持っています。南カリフォルニアのバーシーンを突き進み、期待を裏切り続ける Lavalove らしい、自信に満ちた太陽の輝きを感じさせる快作の誕生です。

James Blake – “I Had a Dream She Took My Hand”

ついに James Blake が帰還した。静かな熱を帯びた彼は、これまで以上に切なくロマンチックなムードをまとっている。新作『Trying Times』からはすでに「Death Of Love」が公開されているが、本日さらに新曲「I Had A Dream She Took My Hand」が登場した。

この曲は、50年代のデヴィッド・リンチ映画を思わせるポップ・スタンダード風のムードを漂わせつつ、実際には LA のバンド Thee Sinseers が2019年に発表した「It Was Only A Dream」をサンプリング。繊細なピアノと歌声から始まり、深いリバーブのクワイア、生ドラムへと広がる構成が見事だ。あわせて、スタジオでの緊迫感あるライブ映像と北米ツアー日程も公開されている。

ローファイから洗練の極みへ。Emma Witmerが贈る8年ぶりの野心作。星の光のように心に届く、時代を超えた記憶の物語。

Emma Witmer によるソロプロジェクト gobbinjr が、8年という長い歳月をかけて磨き上げた待望のニューアルバム『crystal rabbit moon』を4月10日に Substitute Scene からリリースします。かつてのローファイなルーツを脱ぎ捨て、ミニマルな構成の中にテクスチャーの優雅さを追求した本作は、ベッドルーム・ポップとドリーミーなサイケデリアの間を自在に行き来します。映画のような広がりと、すぐそばで囁くような親密さが共存する、驚くほど透明感のあるサウンドへと進化を遂げました。

先行シングル第2弾となる「stars implode」は、柔らかなシンセの持続音と、Emma Witmer の卓越したベースラインが際立つ粘り強いリズムで幕を開けます。楽曲の骨組みを保ちながら、要素が消えては新たな形で現れる万華鏡のような展開が特徴です。一瞬のノイズやサンプルが差し込まれ、ファジーなパンクの熱量を見せたかと思えば、再びシュールでキャッチーなポップスへと回帰していく、緻密で中毒性の高い一曲に仕上がっています。

この楽曲のテーマについて Emma Witmer は、悲しみを「内省、記憶、そしてタイムトラベル」として捉えたものだと語っています。夜空の星がすでに消滅していても、その光が何年もかけて私たちに届くように、亡き人が与えてくれた影響は日々の中に残り続けるというメッセージが込められています。若くして去った遠い友人へのオマージュであり、決して色褪せることのない光を描いた感動的な賛歌となっています。

Cut Worms – “Dream”

Cut Worms の Max Clarke は、新作『Transmitter』に収録された「Dream」について「この曲はアルバムの中でも少し異質な存在だ」と語る。友人の協力で教会のピアノを使わせてもらったことから書き始まり、その後は自宅やニューヨークの“秘密のピアノ部屋”で録音を重ねたという。元のタイトルは「Cut Worms’ 1,111th Dream」だったが、長すぎるため「Dream」に落ち着いた。

ピアノとベース、電気的なストリングスやホーンのアレンジは Clarke 自身が担当し、さらに Jesse Kotansky を招いて本物のストリングスを録音。エンジニアの Tom がそれらを最終ミックスで丁寧にまとめ上げた。Clarke は「うまく仕上がったと思う」と手応えを語っている。

Crack Cloud – “Stop Cutting Me Down”

カナダを拠点に活動する実験的クリエイティブ集団 Crack Cloud が、近日リリース予定のニューアルバム『Peace and Purpose』から最新シングル「Stop Cutting Me Down」を公開しました。1月に発表された先行シングル「Safe Room」に続く本作は、彼らがこの10年間で磨き上げてきたシネマティックなビジョンをさらに深化させたものです。同時に、新作を携えたイギリスおよびヨーロッパでのツアー日程も発表され、バンドの再始動に大きな期待が寄せられています。

新作『Peace and Purpose』の核にあるのは、「生、生きることへの恐怖、無力感、そして剥き出しの人間としての意志」という深淵なテーマです。「Stop Cutting Me Down」は、そうした重層的な感情を音楽として具現化しており、リスナーを彼ら独特のダイナミックな世界観へと誘います。単なる音楽プロジェクトの枠を超え、視覚芸術や共同体としての哲学を融合させてきた彼らが、結成10年という節目に提示する、最も純粋で力強いステートメントと言えるでしょう。

ロンドンの新星Ms Ray、新作EP『Melt』を発表。Nourished By Timeを迎えた珠玉のデュエット。

ロンドンのアンダーグラウンドシーンで重要な役割を果たすレーベル Scenic Route 周辺で活動する謎めいたアーティスト Ms Ray が、3月13日リリースの新作EP『Melt』から、先行シングル「Miss You」を発表しました。本作は Nourished By Time(XL Recordings所属)とのコラボレーションによるもので、二人は以前から「Scenic Route」を通じて親交がありました。Ms Ray の神々しい歌声と、スペクトラルなアヴァント・ポップの響きが Nourished By Time の存在感と完璧なバランスで融合しています。

Ms Ray は、この曲が生まれた瞬間にデュエットにするべきだと直感し、相手には彼以外考えられなかったと語っています。特に男女の声が重なり合う表現を愛する彼女にとって、送られてきた彼の歌声は歌詞やメロディの面で楽曲をさらに高みへと引き上げるものでした。「誰もが誰かを恋しく思う」という普遍的な感情をテーマにしたこの曲は、彼女にとって喪失に伴う痛みの解毒剤となり、カタルシスをもたらす作品となっています。

Gun Outfit、20年の集大成となる2枚組大作を発表。哲学と自作楽器が織りなす、現代の黙示録的フォーク・ロック。

ロサンゼルスを拠点に20年以上活動を続ける Gun Outfit が、ニューアルバム『Process and Reality』を5月8日に Upset The Rhythm からリリースします。先行シングルとして「Unfelt Loss」が公開された本作は、パイン・フラットの牧場にて、近隣で森林火災が燃え広がるという黙示録的な状況下でレコーディングされました。彼らのキャリアで最も野心的な2枚組LPとなっており、長年追求してきた実験的なフォーク・ロックがより深く、親密に響きます。

アルバムのタイトルは哲学者 A.N. Whitehead の著書に由来しており、直感や経験の優位性を説くその形而上学を音楽的に表現しています。シタールやダルシマー、さらには Henry Barnes による自作楽器やエレクトロニクスといった多彩な楽器を取り入れ、アナログ機器を駆使したプロダクションが神秘的な残響を生み出しています。テクノロジーの侵食に抗い、目に見えない「意味」を音楽という贈り物を通じて保存しようとする彼らの哲学が反映されています。

創設メンバーの Dylan Sharp と Carrie Keith を筆頭に、現在の5人編成はかつてないほど強固なアンサンブルを見せています。さらに Chris Cohen や Kayla Cohen といった多彩な協力者たちが参加し、叙情的な歌詞と即興的なサウンドスケープが見事に融合しました。混沌とした現代社会への応答として、まろやかでありながらも力強い、アンダーグラウンド・ロックの真髄がここに凝縮されています。