名門Sub Popから放たれる衝撃の第4作——SLIFTが描く、最もダイレクトで研ぎ澄まされた重厚なサガ『Fantasia』の全貌
フランスのヘヴィ・サイケ・トリオ SLIFT が、名門Sub Popよりニューアルバム『Fantasia』をリリースすることを発表し、先行シングル「A Storm of Wings」を公開しました。10分を超える大曲が並んだ前作『Ilion』とは対照的に、本作は全8曲で50分弱という、彼らにとって最もダイレクトで研ぎ澄まされた構成となっています。トゥールーズ近郊の地下室で10年間培ってきた即興性を維持しつつも、より明確なビジョンを持って制作された楽曲群は、ベルギーのDaft Studiosにてほぼワンテイクで録音され、これまでにないパンチ力とスピード感を備えています。
アルバムのコンセプトは、アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編に触発された、排外主義と無知に支配された架空の町「Fantasia」を舞台とする物語です。シングル「A Storm of Wings」は、この閉鎖的なコミュニティにおいて、新参者が町の没落を予言する重要な局面を描いています。楽曲は John Coltrane や Mikhail Bulgakov といった異ジャンルの偉人たちからインスピレーションを得ており、解放の力や救済の真実の到来を予感させる、拳を突き上げたくなるような力強いアンセムに仕上がっています。
フロントマンの Jean Fossat は、本作を通じて現代の不条理や残酷な現実に真っ向から立ち向かい、現状を打破するための「魂の炎」を見出すことを提唱しています。アルバム後半では、社会の画一性に押しつぶされていた人々が記憶を取り戻し、変革へと向かうプロセスが描かれます。かつてないほど繊細なボーカルが響くサイケデリックなバラードなど、新たな表現の境地に到達した SLIFT は、この重苦しい時代においても「共に手を取り合えば、世界を変える戦いにまだ勝利できる」という切実で肯定的なメッセージを、爆音の重厚なサウンドに込めて届けています。
魂を解剖する「モカシン・ゲイザー」の新境地——ZOONが過去のトラウマを浄化する3rdアルバム『Happy Thought School』を発表
ZOON(Daniel Monkmanによるソロプロジェクト)が、3枚目のアルバム『Happy Thought School』のリリースを発表しました。2020年のデビュー作『Bleached Wavves』でシューゲイザーとアニシナベ族の伝承を融合させた独自のスタイルを確立し、続く2023年の『Bekka Ma’iingan』では文化的なルーツをより深く掘り下げてきましたが、本作ではこれまで以上に感情の機微を精緻に描き、音楽的な広がりを持たせた野心作となっています。
アルバムのタイトルは、マニトバ州東セルカークにある学校での実体験に由来しています。その「幸福な思考の学校」という楽観的な名に反し、先住民の生徒として受けた人種差別の記憶やトラウマ、そして孤独の中で聴いた2000年代のポップミュージックが作品の核となっています。失恋や依存症といった痛みを伴う背景を持ちながら、それを宇宙的な「モカシン・ゲイザー(moccasin-gaze)」ポップへと昇華させることで、輝かしい表面と複雑な内面が同居する独特の構造を作り上げています。
最新シングル「One Too Many Nights (feat. Sam Jr.)」は、この待望の新作からの先行カットとなります。本作は数量限定のオレンジ・スプラッター仕様クリア・ヴァイナルでの予約受付も開始されており、テープのヒスノイズや記憶の断片が織りなすドリーミーかつ鋭い世界観は、ZOONのキャリアにおいて最も重要なステートメントになると期待されています。
Zipper – “Hiko”
シドニーで2019年に結成されたZIPPERは、メンバーの移住や再編を経て現在はメルボルンを拠点に活動しています。2020年のデビューEP『Dreamer’s Gate』では、プラスチックスの佐藤チカがMagazineを率いているようなサウンドと評されましたが、2025年現在では、メンバーが関わるPROMAJAやWIREHEADS、DELIVERYといったバンドのエッセンスも融合。日本語と英語を自在に行き来するHarukaのボーカルが、ニューウェーブの系譜を受け継ぐポストパンク・サウンドの上で軽やかに浮遊しています。
新曲「Hiko」は、デビューEP以来のリリースであり、彼ららしい疾走感とエネルギーに満ちたニューウェーブ・サウンドを継承しています。この楽曲はHarukaの最愛の父に捧げられたもので、歌詞には「影(不幸に見えるもの)も自分の一部であり、それが心を強くする静かな調和である」という深い慈愛と内省が込められています。2026年後半に予定されているさらなる展開への期待を抱かせる、バンドの新たな一歩となるシングルです。
Dirty Three、Mudhoney、GODのメンバーが奇跡の集結――メルボルンの伝説たちが新バンド「Fancy Weapon」を始動
メルボルンのインディーシーンに多大な足跡を残してきたベテランたちが集結し、新バンド Fancy Weapon が結成されました。レーベルのPoison Cityから発表されたこのグループは、まさに「予期せぬ稲妻」のような異色のラインナップを誇ります。メンバーには、Dirty Three の Mick Turner、GOD の Joel Silbersher、Claire Birchall といった地元の重鎮たちに加え、近年移住してきた Mudhoney のベーシスト Guy Maddison が名を連ねています。
彼らが提示するサウンドは、ミニマリズムと白熱したギターサウンドが融合した、独自ブランドのヘヴィ・ロックです。世代を超えたメンバーによるアンサンブルは、現在の音楽シーンにおいて、時代に左右されない普遍性と新鮮さを同時に放っています。地下音楽の世界で数十年にわたり活動してきた手練れたちだからこそ到達できる、極めて個性的で力強い音楽性が特徴です。
6月19日にPoison Cityよりリリース予定のデビューアルバムに先駆け、新シングルのミュージックビデオも公開されました。このビデオはメンバーの Claire Birchall 自身が制作を手掛け、ライブ映像は Bec Birchall が撮影を担当しています。長年ロックンロールの現場で磨き上げられてきた彼らの「今」を凝縮した、待望の新プロジェクトがついに本格始動します。
Basement – “The Way I Feel”
イギリスのポストハードコアバンド、Basementが、2018年の『Beside Myself』以来8年ぶりとなるニューアルバム『Wired』での復活を鮮明にしています。活動休止期間中にTikTokを通じて新たなファン層を爆発的に獲得した彼らは、すでに公開されたタイトル曲や「Broken By Design」に続き、新曲「The Way I Feel」を発表しました。この楽曲は、重要な決断を目前にした心の葛藤や、自分を貫く勇気と許しを乞う気持ちの間で揺れ動く繊細な感情を、ヴォーカルのアンドリュー・フィッシャーによる皮肉を交えた歌詞で描き出しています。
サウンド面では、ギタリストのアル・ヘネリー(Fiddlehead)がルーパーで制作したサンプルをそのまま導入部に採用するなど、シンプルながらもアンセムのような力強さを備えています。また、ケイリン・ダフィーが監督を務めたミュージックビデオは、映画『プリンセス・ブライド・ストーリー』を観に行くスケーターの少年たちの姿を瑞々しく捉えており、何かに全力で飛び込もうとする勇気を模索する少年に焦点を当てた、楽曲のテーマを象徴する映像作品となっています。
元My Dying Brideの面々が集結——新体制で挑むGODTHRYMMが、過去最高の重厚さと多様性を備えた新作の全貌を公開
イギリスのドゥーム・メタルの重鎮 Godthrymm が、Profound Lore Recordsより5月29日にニューアルバム『Projections』をリリースすることを発表しました。2023年の『Distortions』以来となる本作は、バンドにとっての「Visions三部作」を完結させる重要な位置付けとなります。あわせて公開されたリードシングル「Truth In My Own」は、フロントマンの Hamish Glencross が「アルバムで最も拳を握りしめ、ヘッドバンギングしたくなる曲」と語る通り、ストレートで重厚なヘヴィメタル・サウンドに仕上がっています。
本作はバンドのラインナップが拡大してからは初となるフルアルバムで、Hamish Glencross (G/Vo) と Shaun Taylor-Steels (Dr) のコンビに加え、キーボード兼共同ボーカルの Catherine Glencross、ベーシストの Bob Crolla、そして新ギタリストの Kris McLaughin が参加しています。また、ゲスト陣も豪華で、「Trenches Deep」には English Dogs の Adie Bailey と Xentrix の Jay Walsh が、「Endure My Skin」には元 My Dying Bride の Aaron Stainthorpe が名を連ね、サウンドの厚みをより強固なものにしています。
Hamish Glencross は、本作がバンドの内省や感情のコントラストを深く掘り下げた、最も自分たちらしい作品であると強調しています。1作目での情熱の再燃、2作目での壮大な進化を経て、今回の『Projections』では音楽的な魂の深淵へと到達したと述べています。Ash Pears が監督を務めた熱狂的なミュージックビデオとともに、ドゥーム・メタルの極致を追求しながらも、多様な感情が渦巻く野心的なアルバムとして期待を集めています。
Robber Robber – New Year’s Eve
バーリントンを拠点にエレクトロニクスを融合させたサウンドを展開するインディーバンド、Robber Robberが、ニューアルバム『Two Wheels Move The Soul』のリリースを目前に新曲「New Year’s Eve」を公開しました。これまでに発表された一連のシングルに続く本作は、ニーナ・ケイツの吐息混じりのヴォーカルと、背後で不穏に鳴り響くリズム隊、そして切り裂くようなギターノイズが鮮烈なコントラストを描いています。
楽曲制作はメンバー4人によるジャムセッションからスタートしており、その場の熱量を閉じ込めたようなバイオレントなライブ感が特徴です。脈動するようなリフレインを最大限に活かした構成は、中毒性のある高揚感を生み出しています。また、ノア・レンカーが手掛けたミュージックビデオもあわせて公開されており、楽曲の持つスリリングな空気感を視覚的にも補完しています。
Helenor – “Windshield”
ブルックリンを拠点とする視覚芸術家兼シンガーソングライター、David DiAngelisのソロプロジェクト「Helenor」が、Mtn Laurel Recording Co.より新曲『Windshield』をリリースしました。本作は、パンデミック後の移住という人生の大きな転換期を経て制作され、現状打破を渇望するディアンジェリスの決意(変容)が反映されています。ヴィシャール・ナヤックやジョシュ・ボナティといった実力派の協力により、象徴的なギターとシンセのサウンドはより洗練され、都会の喧騒の中に涼やかな開放感を感じさせる仕上がりとなっています。
歌詞の面では、壊れたフロントガラスや保険詐欺といった皮肉な比喩から始まり、SNSのコメント欄や「安売りされる精神状態」といった現代的な孤独感を、Helenor特有の詩的な感性で描き出しています。大人の体に少年のままの渇望(a hunger to fix)を宿した葛藤を歌いながらも、その表現は重苦しい絶望ではなく、きらめきを伴うカタルシスへと昇華されています。自身の不完全さを「おどけた衣装(silly little outfits)」を着て笑い飛ばすような、遊び心と切実さが同居する世界観がこの楽曲の核となっています。
hackedepicciotto – Wiederbelebung
hackedepicciottoがMute Recordsから発表する新作『LICHTUNG』は、Alexander HackeとDanielle de Picciottoのデュオが14年にわたる放浪生活に終止符を打ち、ベルリン郊外に構えた新居で制作されました。タイトルの「林間の空き地(明かり)」という言葉が示す通り、世界的な激動の中で見出した個人的な避難所や内省の場を象徴する作品です。また、2025年4月にAlexander HackeがEinstürzende Neubautenを脱退して以来、初めてリリースされるフルアルバムという大きな節目でもあります。
本作の最大の特徴は、周囲の環境と言語への敬意を込め、全編ドイツ語で綴られ演奏されている点です。Alexander Hackeは、ベルリンのリヒテンラーデで過ごした少年時代の電子音楽的ルーツへと立ち返り、これまでの音楽活動で無意識に従ってきた英米的な慣習から解き放たれたアプローチを試みています。アメリカ出身のDanielle de Picciottoにとっても、第二の故郷の言語で歌うことは、ベルリン生まれのレコードとしてのアイデンティティを強固にする慈愛に満ちた表現となっています。
音楽的には、これまでのトレードマークであった反復的なドローンから一歩踏み出し、より複雑なエレクトロニクスと構造的なアレンジを追求しています。Danielle de Picciottoが長年離れていたピアノを再開し、新たな表現を模索した一方で、Alexander Hackeは緻密で実験的な電子音のテクスチャーを構築しました。Phewとの共作や自叙伝の出版といった2025年の精力的な活動を経て、デュオが辿り着いた新たな音楽的到達点と言える一作です。
打楽器的な構造から解放された音の物理学:ガーナへの旅を経てAho Ssanが到達した、カオスと静寂が共生する抽象的音響空間
SubtextとIci, d’ailleursから発表されたAho Ssanの3rd LP『The Sun Turned Black』は、パリを拠点とするNiamké Désiréが、自身の魂の深淵とガーナへの旅で得たインスピレーションを形にした作品です。前作までの厳格な構造から離れ、音そのものが持つ生の物理性や「圧倒的で壮大なノイズの組織化」を追求した本作は、ディアスポラとして生きる自身のアイデンティティや、故郷と生誕地の間に生じる歴史的・個人的な緊張感を反映しています。
アルバムの骨格を成すのは、バイオリニストのASIAをフィーチャーした4部構成の組曲「100 Suns」です。先行シングルとしてリリースされた「100 Suns, Pt. III」は、このプロジェクトが持つ「不安定さ」や「重心の欠如」を象徴する重要なピースとなっています。Désiréは打楽器的な要素を排し、シンフォニックなシンセサイザーと耳を刺すような高域の干渉音、地を這う重低音を対比させることで、単なるアンビエントやノイズという枠組みを超えた、変容し続ける音像を作り上げました。
本作における「暗転」や「崩壊」は、決して終わりを意味するものではなく、新たな知覚の始まりを告げるプロセスとして機能しています。ノイズが収まる瞬間に現れる子守唄のようなチャイムや、崩壊の最中にのみ姿を現す微細なディテールは、聴き手に新しい聴取のあり方を提示します。「100 Suns, Pt. III」から続くこの旅路は、目的地に到達することよりも、予測不能なカオスの中に美しさを見出す体験そのものを優先しており、現代電子音楽における極めてパーソナルで独創的な到達点となっています。
