荒廃する世界で鳴らす、重厚なアシッド・ロックの咆哮——Primitive Ringが『Heads Will Roll』で切り拓くヘヴィ・サイケの新章
Ty Segallとのプロジェクト(FuzzやGØGGSなど)やソロ名義CFMでの活動を通じ、20年にわたり西海岸のガレージロック・シーンを牽引してきたCharles Moothart。彼がHooveriiiのBert Hoover、Jon Modaffと共に結成した新プロジェクト「Primitive Ring」が、セルフタイトルのデビューアルバムのリリースを発表しました。2025年に立て続けに発表された一連のダブルシングルを経て、ついに11曲入りのフルレングスとしてその全貌が明かされます。
アルバムからの先行シングル「Heads Will Roll」は、Blue Cheerに代表される60年代アシッド・ロックの衝動を現代に蘇らせたような、重厚なサイケデリック・プロトメタルサウンドです。バンドが「アルバムを一つに繋ぎ止める接着剤になった」と語るこの曲は、レコーディングの最後に制作され、プロジェクトのビジョンを完成させる重要なピースとなりました。高速で容赦なく畳みかけるリフの応酬は、まさに彼らが得意とするヘヴィ・サイケの真髄を体現しています。
歌詞や精神性の面では、混迷を極める現代の政治的状況や、荒廃へと向かうかのような世界に対する「今、この瞬間を生きる」という切実な緊張感が込められています。絶望的な状況下であっても、自分たちが今手にしているものの中に美しさを見出そうとする彼らの姿勢は、荒々しいサウンドの裏側にある強い生命力を感じさせます。今春にはTy Segallとのツアーも控えており、ライブシーンでもその圧倒的な熱量が炸裂することになりそうです。
Broken Chanter – “A Year Without A Summer”
Broken Chanterの待望のニューアルバム『This Could be Us, You, Or Anybody Else』から、第2弾シングル「A Year Without A Summer」が公開されました。政治的な色彩の強いアルバムの中で、この曲は感情の核心を突くパーソナルな例外となっており、哀愁漂うシンセのリフレインと、スナップショットのような美しい歌詞が印象的です。悲しみが人生のあらゆる隙間に染み込んでいく様を、David MacGregorは鋭い洞察力で描き出しており、聴き手に自身の脆弱性をさらけ出しながらも、深い共感と連帯の手を差し伸べるような一曲に仕上がっています。
2024年のアルバム『Chorus Of Doubt』のツアー直後、2025年の夏から秋にかけて録音された本作は、バンドとしての結束がかつてないほど強固になっています。Martin Johnstonの力強いドラムとCharlotte Printerのしなやかなベースが土台を支え、MacGregorとBart Owlのギターがステレオフィールドを縦横無尽に駆け巡るワイドスクリーンな音像が特徴です。前作が拒絶の怒りに満ちていたのに対し、今作はディストピア的な未来を前にした激しい抵抗心を持ちつつも、コミュニティや人々の繋がりの中に救いを見出そうとする、より映画的なディテールと慈愛に満ちた作品となっています。
Figmore – “The Tale of the Rattlesnake, Part 2”
JUICEB☮Xと10.4 RogによるユニットFigmoreが、デビューアルバム『Jumbo Street』のリリース5周年を記念して、新曲「The Tale of the Rattlesnake」を公開しました。この楽曲はアルバムのハイライトであった同名曲を再構築したもので、彼らの友人であり、シンガーやマルチ奏者として多才な活動を展開するJake Shermanをゲストに迎えています。
5年前のデビュー作を祝う今回のプロジェクトでは、Jake Shermanの参加によって、原曲が持つ独特な「蛇の物語(レプティリアン・ヤーン)」の世界観に新たな息吹が吹き込まれました。3人の才能が交錯することで、楽曲はこれまで到達したことのない未知の高みへと引き上げられており、アニバーサリーにふさわしい贅沢な進化を遂げています。
Wings of Desire – “This Is The Life”
Wings of Desireがリリースしたニューシングル「This Is The Life」は、彼ららしい壮大なポストパンクの質感と、80年代のニューウェーブを現代的にアップデートしたような煌びやかなサウンドが特徴の一曲です。前作のアナログな温かみを残しつつも、よりワイドスクリーンで疾走感のあるギターリフと、地平線まで届くような開放的なボーカルが、聴く者を日常の喧騒から解き放つような高揚感をもたらします。
歌詞の面では、現代社会の加速するスピードやデジタルな虚飾に対するアンチテーゼとして、「今、この瞬間を生きること」の尊さを問いかけています。バンドが掲げる「意識的な生き方」というテーマを象徴するように、絶望や孤独の中でも人生の美しさを見出すための賛歌となっており、重厚な音像の奥底には、人間らしい繋がりと精神的な自由への強い渇望が脈打っています。
7年の潜伏を経てたどり着いた、聖なる響きとポップの臨界点——Kelsey LuがJack AntonoffやKim Gordonと共に紡ぎ出す、魂の救済と解放の全10曲
シンガー、ソングライター、そして作曲家であるKelsey Luが、前作『Blood』から7年の歳月を経て、ついに沈黙を破りました。2026年6月12日にDirty Hitからリリースされる待望のセカンドアルバム『So Help Me God』は、Jack AntonoffやYves Rothmanを共同プロデューサーに迎え、Sampha、Kamasi Washington、さらにはKim Gordonといった錚々たる顔ぶれが参加。現代音楽シーンにおける最も独創的な声の一つである彼女の帰還を告げる、記念碑的な作品となっています。
先行シングル「Running To Pain」は、オーケストラルで荘厳だった前作の作風から一転し、よりストレートなポップ・ディレクションを示唆しています。高揚感のあるシンセのフックと力強いドラムマシンのビートが響くこの曲は、青春映画のクライマックスを彷彿とさせる躍動感に満ちています。スペイン・ランサローテ島の荒涼とした火山地帯を舞台にしたミュージックビデオでは、映画『TITANE/チタン』のGarance Marillierと共演し、視覚芸術と音楽が密接にリンクする彼女ならではの世界観を提示しています。
全10曲で構成される本作は、歪んだギター、聖歌のようなコーラスのうねり、そしてダークな電子パルスが交錯する、映画的なスケール感を持った音像が特徴です。「影と解放」の間を揺れ動くこのアルバムは、音楽、ビジュアル、パフォーマンスが融合した多角的なプロジェクトとして結実しました。祈りのような切実な強度を持ちつつ、既存のジャンルの枠組みを軽やかに拡張していくKelsey Luの進化が、この一枚に凝縮されています。
6年の沈黙を破り、魂の全軌跡をセルフタイトルに刻む——Seahavenが『Midnight Hour』で提示する、内省とカタルシスの最終形
カリフォルニア州トーランス出身のSeahavenが、前作『Halo of Hurt』から6年の歳月を経て、通算4枚目となるセルフタイトル・アルバム『Seahaven』を6月5日にPure Noise Recordsからリリースすることを発表しました。先行シングル「Midnight Hour」は、バンドの真骨頂である物憂げな内省と感情的なカタルシスの境界線を鮮烈に描き出しており、グラミー賞受賞プロデューサーのWill Yipがミックスとマスタリングを担当。バンド史上最も決定的なステートメントとなる一作を予感させています。
アルバム制作の起点となったのは、2025年4月にフロントマンのKyle Sotoが書き上げた「Wedding Bells」でした。そこから彼自身の「フロー状態」による創作が加速し、自宅スタジオで一晩のうちに楽曲の骨組みを完成させるなど、作為を排した自然なインスピレーションによって全編が形作られました。自身の人生における様々な出来事と向き合い、ギターを手にする中で自然と溢れ出したパーソナルな感情が、Cody Christian(Gt)、Mike DeBartolo(Ba)、Eric Findlay(Dr)らメンバー全員の手によって、より強固なバンドサウンドへと昇華されています。
本作についてKyle Sotoは、「過去の全作品の要素を一つに集約した、まさにバンドそのものの音」だと語っています。「Hellbound」や「Infinite Blue」といった楽曲で見せるキャリア史上最も記憶に残るフックと、「Remember Me」などの静かな場面で探求される喪失や記憶といった深淵なテーマが、見事なバランスで共存しています。2009年の結成から培ってきた独自のスタイルをさらに押し広げ、新たな感情的・音響的領域へと到達した、彼らの集大成とも呼べる全10曲(またはそれ以上)の物語が幕を開けます。
搾取される日常への静かな抵抗と、沈黙の奥底に眠る調和——some fearが『Word Eater』で到達した、ハイファイな内省のスローコア
オクラホマシティを拠点に活動するスローコア・バンド、some fearが、昨年高い評価を得たセルフタイトルのデビュー作に続くセカンドアルバム『Word Eater』を来月リリースすることを発表しました。バンドの活動初期を象徴したローファイな質感から一歩踏み出し、より緻密で洗練されたハイファイなプロダクションへと進化を遂げた本作は、音の密度を増しながらも彼ららしい内省的な世界観を深化させています。
アルバム発表に合わせて公開された新曲「I Don’t Want To Spend My Money」は、そのタイトル通り現代社会の切実な実感を歌ったダウンビートなナンバーです。フロントマンのBranden “Bran” Palesanoは、この曲について「自分たちの血を吸うヴァンパイアのように肥え太る億万長者や大企業と、給料日を待ちわびて必死に生きる我々との格差」をテーマにしたと語っています。富が偏在する不条理な社会構造への怒りと、「一銭も使わずに家に閉じこもりたい」という切実な心理が、不穏ながらも心地よいサウンドに乗り、聴く者の共感を誘います。
本作『Word Eater』は、内なる独白の掘り起こしを試みており、特に「言葉にできなかったこと」がもたらす肉体的・感情的な代償を丹念に描き出しています。アルバム全体を通じて、大人になる過程で直面する混沌や重苦しい瞬間の中にも、信頼と調和を見出そうとする真摯な姿勢が貫かれています。不条理な社会への冷徹な視線と、個人的な内面への深い洞察が交錯する、彼らにとって極めて重要なステップとなる一作です。
LANNDS – “Hold My Place”
LANNDSが、4月24日リリースの新作EP『If The Door Closes』からの最新シングル「Hold My Place」を発表しました。前作「Is There Any More To This?」に続く本作は、彼らのドリーミーなエレクトロニック・プロダクションをより実験的な方向へと推し進めており、深夜の静寂を感じさせる少しダークでムード溢れるエッジが加わっています。一見控えめな音像ながら、その水面下では緻密な音が幾重にも重なり合っており、聴くほどにその世界観へと深く引き込まれる仕上がりです。
楽曲についてメンバーのRaniaは、愛の形が変化した後に訪れる「奇妙な感情の空白」を描いた特別な一曲だと語っています。たとえ状況が不透明であっても、誰かの人生の中に自分の居場所(スペース)を保っていてほしいと願う切実な思いが「Hold My Place」というタイトルに込められています。離れてしまった距離や後悔、そして関係が終わった後も長く心に残り続ける静かな問いかけを、内省的な響きとともに美しく昇華させています。
Cola – “Conflagration Mindset”
元OughtのTim Darcy率いるColaが、今春リリース予定のニューアルバム『C.O.L.A.(Cost Of Living Adjustment)』から新曲「Conflagration Mindset」を公開しました。この楽曲は、昨年ロサンゼルスの山火事で自宅を焼失したDarcyの実体験が色濃く反映された、荒涼としたポストパンク・ナンバーです。冬の寒さを思わせる冷ややかなシンセとドラムマシンの探求から始まった本作は、スタジオで生楽器と電子音を巧みにブレンドすることで、日常が混沌に投げ出された際の麻痺した精神状態を見事に音像化しています。
歌詞において「大火災の心理状態(Conflagration Mindset)」というフレーズは、単なる火災の記録を超え、あらゆる「喪失」の本質を突く出発点となっています。ホテルで冷えたビールを飲み、虚脱感の中で機械的に車に給油するような、あまりに過酷な状況下での空虚な日常が描かれています。Darcyは、この災難を通じてコミュニティの人々と分かち合った物語から、火災がいかに人生を根底から作り変えてしまうかを学んだと語っており、個人的な悲劇を普遍的な喪失と再生の物語へと昇華させています。
zouz – “Le vice et le culte”
ケベックを拠点に活動するオルタナティヴ・ロックバンド、zouzが新曲「Le vice et le culte」を携えて帰ってきました。パワフルで中毒性の高いサウンドが特徴の今作は、公式リリースにおいて待望のサードアルバムに向けた「前兆」である可能性を示唆しつつも、あえて明言を避けるというミステリアスな形での発表となりました。バンドは現在、極めて好調なコンディションにあり、再始動への期待を抱かせる一曲となっています。
公開されたミュージックビデオには、歌詞の中にいくつかのユーモア溢れる「小ネタ(blagounettes)」が仕掛けられており、視覚的にもバンド特有の遊び心が散りばめられています。鋭いグルーヴとフランス語詞の響きが交錯するzouzらしい美学は健在で、彼らが提示する新たな音像が、次なるプロジェクトへとどのように繋がっていくのか、ファンやメディアからの熱い視線が注がれています。
