名門 Big Scary Monsters より放たれる「混沌」の再定義――Bicurious が最新シングル「Papa」で示すマスロックの新たな極致

ダブリンとライプツィヒを拠点とするロック・デュオBicuriousが、2026年5月15日に名門Big Scary MonstersよりニューEP『Afterthoughts』をリリースし、先行シングル「Papa」のミュージックビデオを公開しました。本作は、彼らの代表作『Your Life is Over Now…』のB面曲やアコースティック・バージョンを収録した作品で、録音はサウスポートのThe Arch StudiosとコークのThe Narrow Studioにて、Tom PetersとAlessandro Vinciの手によって行われました。

ポストロック・フェスティバル「ArcTanGent」に3年連続で出演し、同イベントの「定番」としての地位を確立した彼らは、マスロックの緻密さとオルタナティブな衝動を融合させた、ダンサブルでカオスなライブパフォーマンスで知られています。今回のリリースに伴い、イギリスおよびヨーロッパ全土を巡るツアーも決定。Taran Plouzanéが監督を務めたビデオと共に、彼ら特有のチャントを巻き起こす熱狂的なステージを各地に届けます。

スタジオを捨て、愛する人とのロフトで紡いだ純真――Buzzy Leeが新作『Shoulder To Shoulder』で到達した「究極の親密さ」

シンガーソングライターのBuzzy Lee(Sasha Spielberg)が、2023年の『Internal Affairs』に続くサードアルバム『Shoulder To Shoulder』を2026年3月27日にリリースすることを発表しました。本作の制作は、彼女が現在の夫であるHarry McNallyと暮らすためにロサンゼルスからニューヨークへ拠点を移した2021年に始まっており、二人が自宅で録りためた素朴な音源がプロジェクトの基盤となっています。

当初はスタジオでの制作を試みたものの、デモテープに宿っていた誠実さと精神を維持するため、最終的にはチェルシーにある二人のロフトに機材を持ち込み、McNallyのプロデュースのもとでレコーディングが行われました。リビングルームから寝室のクローゼット、デスクに至るまで、家のあらゆる場所が録音スペースとして活用され、生活感と密接に結びついた親密なサウンドが追求されています。

制作過程では、腹部に湯たんぽ、その上に毛布、さらにその上にシンセサイザーを置くといった「火災の危険さえある」ほど型破りでリラックスした手法が取られました。こうした心地よくも型破りなアプローチが功を奏し、結果としてBuzzy Leeのキャリアの中で最も感情的な響きを持つ、親密度の高い作品が完成しました。

幻想と現実が衝突する「生い茂る庭園」への招待状――Nymphlordがデビュー作で描く、剥き出しの自己像

Nymphlordが2026年5月15日にリリースするデビューアルバム『Shedding Velvet』から、ニューシングル「Garden」を公開しました。本作は90年代オルタナティブ・ロックの質感と初期フォークの叙情性を巧みに融合させており、壮大な夢が非現実的に感じられ始めた時に生じる「空想と現実の摩擦」を深く掘り下げた、幻滅と再起の成長物語となっています。

楽曲は、伝統的なポップスの構造からあえて距離を置きつつも、ドライなウィットと心地よい違和感によって思わず口ずさみたくなるような中毒性を備えています。繊細な独白を刻む彼女のボーカルは、力強いアコースティック・ギターの伴奏に支えられながら、やがて生々しくうねるエレキギターの激しいサウンドへと飲み込まれていきます。

アルバム全体を通じて、Nymphlordはベルベットを剥ぎ取って骨を晒すような、形成過程にあるアイデンティティの生々しい肖像を提示しています。不安や不協和音の中に空想的な美しさと希望を同居させたその世界観は、草木が生い茂る彼女自身の内なる庭園へと聴き手を優しく招き入れ、剥き出しの真実を共有するような音楽体験をもたらします。

「適切な仕事が人生を救う」という幻想を打ち砕く――バーンアウトの淵から放たれた、冷徹でシュールなアンチ・ワーク・アンセム

シアトルのポストパンク・バンド Telehealthが、2026年5月15日に名門Sub Popからリリースされるセカンドアルバム『Green World Image』より、新曲「Cool Job」を公開しました。本作は、Paul McCartneyの「Temporary Secretary」的な奇妙な疾走感とミーム・カルチャーのパッチワークを融合させ、「適切な職に就けば人生が救われる」という現代の幻想を鋭く風刺しています。

楽曲の背景にあるのは、深刻なバーンアウト(燃え尽き症候群)の経験です。あらゆる物事が崩壊していく中で、メール一通で済むような会議に無理やり関心を持とうとする苦痛や、企業の腐敗、自己喪失を描いた「アンチ・ワーク(労働反対)」アンセムに仕上がっています。神経質なベースラインと強烈なパーカッションが、現代労働者の極限状態にある精神をダイレクトに表現しています。

自社の映像部門「Telehealth Music Conglomerate」が制作したミュージックビデオは、2025年のツアー映像やネット上のクリップを、VHS風の「ノスタルジー・コア」な美学で再構築したものです。世界がバラバラに解けゆく中で、ツアーという(極めて収益性の高い!)シュールな行為を通じて喜びを捏造しようとする姿をドキュメントしており、シニカルなユーモアと現代的な「ブレイン・ロット(脳の腐敗)」感覚が交錯する映像作品となっています。

Cheekface – “Hostile Street”

ロサンゼルスを拠点に活動するインディー・ロック・トリオ、Cheekfaceの新曲「Hostile Street」は、彼ら特有の「トーク・シンギング」スタイルで、現代社会に蔓延する不寛容さを鋭く風刺した一曲です。楽曲のモチーフとなっているのは、ホームレスの人々が横たわれないように設計されたバス停のベンチなどの「排除アート(敵対的什器)」。善良に生きようとする人々を執拗に追い詰める不穏な社会の空気を、軽快ながらもどこか奇妙な焦燥感を伴うサウンドに乗せて描き出しています。

歌詞では、自分を徹底的に「削減(reduce)」し、社会が求めるサイズにまで押し込めてほしいという自虐的な叫びと、そんな冷徹な路上で「キスをしたら、愛の力でこの什器の敵意を変えられるだろうか?」という皮肉めいた問いかけが交錯します。結局のところ愛で社会を変えるのは「現実離れしている(far-fetched)」と断じつつ、支配や制限にさらされる個人の無力感を、ケーキを差し出すような日常的な仕草と破壊的な衝動を混ぜ合わせながら、Cheekfaceらしいシニカルなユーモアで表現しています。

ジャズの知性とインディーの衝動が交錯する――Cynthia TauroとBroken Social Sceneの重鎮が放つ新次元の音像to Be Distant

ジャズの素養を持つピアニスト兼ソングライターのCynthia Tauroと、Broken Social Sceneの核としてインディー・ロック界を牽引するBrendan Canning。この二人の強力なコラボレーション・プロジェクト、TAUROが、待望のデビュー・アルバム『Act I』から先行シングル「Crüel to Be Distant」をリリースしました。アルバムはBirthday Cakeレーベルより2026年4月4日に発売されます。

本作は、ジャズの洗練とインディー・ロックのダイナミズムが融合したTAURO独自の音楽性を象徴する一曲です。歌詞では、四季を通じて拭えない不信感や、相手の声のトーンに潜む「何か」を鋭く察知する緊迫感が描かれています。タイトルの通り「距離を置くことの残酷さ(cruel to be distant)」をテーマに、親密だったはずの二人の間に生じた埋められない溝と、真実を隠し通そうとする相手への冷ややかな追求が綴られています。

楽曲のクライマックスでは、「去っていくなら構わない、そもそも君は最初からここにいなかったのだから」という痛烈なフレーズが登場し、不毛な関係に終止符を打つ強い意志が示されます。Brendan Canningの確かなインディー・センスとCynthia Tauroの繊細なソングライティングが交錯するこの曲は、人間関係の虚無感を鮮やかに描き出し、2026年のオルタナティブ・シーンを象徴する重要なアルバム『Act I』の幕開けに相応しい完成度を誇っています。

Night Swimming – “Poison Berry”

イギリスのバースおよびブリストルを拠点に活動するNight Swimmingが、Venn Recordsよりニューシングル「Poison Berry」をリリースしました(同レーベルからは「Submarine」も配信中)。ドリームポップやシューゲイザーの系譜を感じさせる幻想的な音像の中で、一人の男性との歪んだ関係性や、心の奥底に沈殿する孤独感を浮き彫りにしています。「日曜日の苦さ」や「人里離れた場所への渇望」といった内省的なフレーズが、冷ややかで美しいメロディに乗せて綴られています。

歌詞では、独善的な男性の振る舞いに対する冷ややかな視線と、どこかで「利用されている」感覚を享受してしまう自己矛盾が描かれています。シャワー越しに聞こえる低い歌声や、悲しげなギターの旋律を「ポイズン・ベリー(毒のある実)」と呼び、それが冷え切った心に突き刺さる痛みを表現。鏡が割れるような劇的な感情の爆発を予感させつつ、深い孤独(remoteness)を馴染みのある疼きとして抱え続ける、耽美的でヒリついた世界観を提示しています。

KNEECAP – “Smugglers & Scholars”

アイルランドのラップトリオ Kneecap が、2026年4月24日に Heavenly Recordings からリリース予定のニューアルバム『Fenian』より、先行シングル「Smugglers & Scholars」を公開しました。重厚なスチールの鼓動を感じさせる不穏でパワフルなこのトラックは、アイルランドのアナーキズムをテーマに据えています。混乱を糧とするような刺激的かつ情熱的なサウンドは、聴く者に電撃的なインパクトを与えます。

メンバーはこの楽曲について、アイルランドの革命期を彷彿とさせるものであり、労働者階級や学識者、そして善良な人々がより良い未来を求めて団結し行動した「希望」に突き動かされていると語っています。バンドは4月23日のイギリス公演を皮切りに、11月のパリ公演まで続く大規模なUK・ヨーロッパツアーを予定しており、革命の精神を宿した新章の幕開けに大きな注目が集まっています。

The Menzingers – “Nobody’s Heroes”

フィラデルフィアのパンク・ベテラン、the Menzingersが、2023年のアルバム『Some Of It Was True』以来となる新曲「Nobody’s Heroes」をリリースしました。今作は従来のパンク・スタイルを超え、生ドラムに重ねられたリズムマシンのビート、高らかに響くサックス、そしてオルガンを取り入れた「ハート・オン・スリーブ(感情を剥き出しにした)」なクラシック・ロックスタイルへと舵を切っています。The Gaslight Anthemがブルース・スプリングスティーンではなく、ジョン・メレンキャンプを目指したかのような、力強く雄大なシンガロング・アンセムに仕上がっています。

フロントマンのGreg Barnettによれば、この曲は離婚を経験していたメンバーのTom Mayを励ますために書き始められたものですが、制作過程でバンドそのものを象徴する大きな物語へと進化しました。「自分たちらしくある時こそ、自分たちは最高でいられる」というメッセージが込められており、バンドの絆と新たな音楽的挑戦が結実した一曲となっています。現在、この楽曲と共に最新のツアー日程も公開されており、アルバム間の端境期においても彼らの勢いが健在であることを示しています。

Degler – “It’s All The Same Somehow”

Deglerのシングル「It’s All The Same Somehow」は、アイダホ州ボイシを拠点とする才人、Zachary Deglerの脳内から溢れ出した、既存の枠組みに囚われない実験的な精神の結晶です。「どういうわけか、すべては同じことの繰り返し」というタイトルを掲げながら、その内実はインディー・ロックの枠を押し広げ、特定のジャンルに分類されることを拒むようなエクレクティック(折衷的)で予測不能な展開を見せます。

本作は、ボイシの風景が持つ独特の孤独感とZachary Deglerの思索的なビジョンが交錯する、ジャンル超越(ジャンル・ベンディング)な一曲に仕上がっています。ミニマルな定石をあえて崩し、多層的な楽器構成と大胆な展開を組み込むことで、時代に流されない「タイムレス」な響きを追求。彼の頭脳が描き出す複雑な音の迷宮は、日常の倦怠を単なる繰り返しではなく、重層的で奥行きのあるロックの叙事詩へと昇華させています。