Arab Strap – “Glamour Magick”

スコティッシュ・デュオ Arab Strap のシングル「Glamour Magick」は、重厚なクラウトロックのグルーヴに乗せて、現代の美容業界と「若さへの執着」を皮肉たっぷりに解剖した楽曲です。フロントマンの Aidan Moffat が、自身が中年に差し掛かって日常的に使うようになったカフェインシャンプーやアイクリームといった身近な製品から着想を得て制作されました。歌詞では、シワ取りの脂肪注入や怪しげな裏通りの医師から購入した豊唇手術、さらには「千人の処女の血を浴びる」といったエスカレートしていく若返りへの欲望が描かれ、時間という人類共通の敵に抗うために私たちが支払う代償を、痛烈かつクレバーに問いかけています。

David Arthur が監督を務めたミュージックビデオは、映画『The Substance』や David Cronenberg 作品を彷彿とさせる、生々しくグロテスクな「ボディ・ホラー」の世界観を見事に構築しています。映像では、Aidan Moffat 自身がオカルト的な怪しい美容外科医の施術を受ける様子が描かれており、美を追求する代償が金銭だけに留まらない不穏な結末へと向かっていきます。前作「Strawberry Moon」での人狼をモチーフにしたアプローチに続き、ホラーの要素を巧みに取り入れながら、人間の深すぎる虚栄心と狂気を不気味かつユーモラスに描き出した傑作ビデオに仕上がっています。


jo from school – “Weight”

「jo from school」によるニューシングル「Weight」は、ウェールズでライブレコーディングされた臨場感と生々しい緊張感を湛えた楽曲です。シンプルに生み出された初期の衝動を宿しながらも、リスナーを深く引き込む親密な音響空間が特徴的。飾らない剥き出しの演奏が生む温かみと、ライブ録音ならではのダイナミズムが、聴き手の心に直接訴えかける仕上がりとなっています。

歌詞においては、愛するがゆえに生じる「重さ(Weight)」や葛藤、そして人間関係に横たわる複雑な感情が詩的に描かれています。「私は愛している、けれどあなたが世界を重くしている」「私が世界を重くしている」といったリリックは、互いを引き寄せ合いながらも疲弊していく、愛と重力のあいだのジレンマを表現しています。素朴な言葉遣いでありながら、鋭く胸を刺すエモーショナルな世界観が表現された一曲です。


Kiwi Jr. – “Photos Of The Reenactment”

Kiwi Jr.の新曲「Photos Of The Reenactment」は、2026年8月14日にK RecordsとPerennialからリリースされるニューアルバム『Blowin’ Up』に収録される先行シングルです。冷たい冬の夜に体を包み込んでくれる温かい毛布のような心地よいギターの音色と、どこか懐かしさを覚えるメロディが非常に印象的な楽曲に仕上がっています。さらに、ボーカルを務めるJeremy Gaudetの人間味あふれる誠実な歌声が、彼らの持ち味であるストーリーテリングの魅力を何倍にも引き立て、聴く人を惹きつけます。

この曲の背景には、「未解決殺人事件のポッドキャストを制作するために、娘と共に小さな田舎町へ引っ越してきた女性」というJeremy Gaudetの映画のアイデアのようなユニークなストーリーが描かれています。どこか閉塞感のある田舎町で過去を掘り起こすことの重みや、何者かになりすますような「模倣の模倣」といったテーマが、彼ららしいひねりの効いたポップソングとして昇華されています。また、Jolie M-Aが手掛けたミュージックビデオも公開されており、バンドがこれまでに培ってきたキャッチーなセンスと不穏ながらも愛らしい世界観が、シングルと映像の両方から存分に堪能できる仕上がりとなっています。



Swapmeet – “Bonny”

オーストラリア・アデレード出身の4人組オルタナティブ・ロックバンド Swapmeet が、2026年7月17日に名門レーベル Winspear からリリースする待望のデビューアルバム『Mount Zero』より、先行シングル「Bonny」を公開しました。高校の最終学年だった2020年に結成され、メンバー全員がマルチプレイヤーかつソングライターとして対等に曲作りに関わる彼らは、2024年のデビューEP『Oxalis』で高い評価を獲得し、オーストラリアの音楽賞を受賞するなど一躍注目を集める存在となりました。本作「Bonny」は、「I Know!」や「Halfway」といったこれまでの先行曲に続く、アルバムの発売を目前に控えた最終先行シングルであり、バンドの武器である90年代?2000年代初頭のオルタナティブ・ロックやスロウコアの系譜を引く瑞々しいインディーロック・サウンドが凝縮されています。

今作を収録したアルバム『Mount Zero』は、アデレードとメルボルンの間にある実在の地名であり、バンドにとって「ただ通り過ぎるだけで、決して立ち寄ることのない場所=移動の中で目にするものの、深く関わることのない人々や経験」の象徴として名付けられました。海辺の家にこもって4人だけでレコーディングされた本作は、何百ものトラックを重ねては削ぎ落とすというこだわりのDIY精神によって構築され、若さゆえの揺らぎや初恋、痛みを美しく描き出しています。先行シングル「Bonny」のノイジーかつセンチメンタルなギター・アンサンブルは、そんなアルバムの旅情的なムードを見事に体現しており、リリースに伴って予定されている全米・全欧・全英を巡る大規模なワールドツアーへの期待をさらに高める仕上がりとなっています。


Cel Ray – “Teen (Cult) Song”

シカゴを拠点に活動するポストパンク・バンド、Cel Ray(セル・レイ)のシングル「Teen (Cult) Song」は、Exploding in Sound Recordsから7月24日にリリースされたアルバム『Cel Rayzer』からの先行第3弾シングルです。この楽曲は、バンドの持ち味であるエネルギッシュで緊張感のあるポストパンク・サウンドが炸裂しており、中毒性の高い鋭いギターリフと、焦燥感やシニカルさを漂わせるヴォーカルが絶妙に絡み合っています。タイトルの通り、どこかカルト的で衝動的なティーンエイジャーの不条理なエネルギーを、疾走感あふれるロックサウンドに昇華させた、聴く者を一気に引き込む仕上がりになっています。

同時に公開されたミュージックビデオは、楽曲が持つオルタナティブで少し不気味、かつユーモラスな世界観をDIY精神たっぷりに表現しています。ローファイでざらついた質感の映像と、メンバーたちのシュールで風変わりなパフォーマンスが特徴的で、まるで深夜の怪しいカルト番組や自主制作のB級ホラー映画を観ているかのような、独特のトリップ感を味わえます。音楽が持つ爆発的なスピード感と視覚的な遊び心が完璧にシンクロしており、彼らの個性的で自由奔放なアートセンスが詰め込まれたスリリングな映像作品です。


FREE ZORBA THE HOOLIGAN – “BOYO”

フランスとイギリスを股にかけて活動するオルタナティブ・パンクバンド、FREE ZORBA THE HOOLIGANのニューシングル「BOYO」は、秋にリリースを控える待望の新作EPからの先行カットです。デビューEP『BURNER』の発表以降、数々のライブやフェス出演を経てスケールアップした彼らのサウンドは、KnivesやShow Me The Bodyを彷彿とさせるハードコア精神をさらに色濃く反映しています。「悪魔との対話」をテーマにしたこの楽曲は、人生の酸いも甘いも含めたリアルな現実を叫び、内なる葛藤や攻撃性を荒々しいパンクロックへと昇華させた重厚な仕上がりとなっています。

あわせて公開されたビデオ(映像作品)は、楽曲が持つダークで緊迫感のある世界観を見事に表現しています。Niko Mayが監督・編集を手掛けた映像は、ザラついた質感とソリッドなカメラワークが特徴で、バンドが放つヒリヒリとした焦燥感を引き立てます。「悪魔と闘うために恐れを知らずに生まれた」という歌詞の通り、生々しいエネルギーと内面の闇が視覚的に衝突し合うようなスリリングな映像体験となっており、パリでのリリースライブなど活発なライブシーンの勢いそのままの衝動が詰め込まれています。


koleżanka – “Levers and Pulleys”

ニューヨークを拠点に活動するアーティストKristina Mooreによるソロプロジェクト koleżankaが、傑作『Alone With The Sound The Mind Makes』以来3年ぶりとなるニューアルバム『Zone 2』のリリースを発表し、新曲「Levers and Pulleys」のシングルとミュージックビデオを公開しました。アルバムタイトルの「Zone 2」とは、腱の損傷により術後の回復が極めて難しく「No Man’s Land(前人未踏の地)」と呼ばれる手の解剖学用語に由来しています。2023年秋冬、左手中指の屈筋腱を断裂し、医師から「二度とギターは弾けないかもしれない」と告げられた彼女は、絶望のなかで借物のキーボードに向かい、右手だけでデモを制作しました。この大怪我からのリハビリと奇跡的な回復のプロセスそのものが楽曲の核心となっており、スタジオでElanaとともにクラリネットのパートをリアルタイムで構築していくなど、エモーショナルで特別な感情が注ぎ込まれたアルバムのフラッグシップ・ソングとなっています。

ミュージックビデオは、Moore自身が撮影した美しい砂浜でのある一日の映像で構成されており、極限のミニマリズムから洗練されたポップロックへとダイナミックに展開していく楽曲の構成と見事にシンクロしています。また、アルバムのアートワーク(Mathew F.G.撮影)には、今年の1月に亡くなった彼女の愛猫Felixと過ごした最後の姿が収められており、「二度と戻らない喪失を受け入れ、悲しみに立ち止まるのではなく、それによって自らを変化させ新しく生まれ変わる」という本作のテーマを象徴しています。先行シングル「Lessons In Textiles」に続き、彼女の壮絶な人生の転換点と混沌とした癒やしのプロセスを証明する、極めて美しく力強いDIY作品に仕上がっています。


Porcelain – “Apocalypse”

テキサス州オースティンを拠点とする4人組ポストハードコア・バンド Porcelain が、プロデューサーの Scott Evans とタッグを組んだセカンドアルバム『Today’s Minor Victories』のリリースを発表し、そのリードシングルとなる「Apocalypse」を公開しました。2022年に結成され、2024年にセルフタイトルのデビューアルバムを発表した彼らは、ノイジーで重厚なポストハードコア・サウンドを得意とする注目のバンドです。今回の新曲「Apocalypse」も、不穏でザラついたベーストーンと強烈なギターリフが炸裂し、彼ららしい荒々しくも緻密なノイズの世界を構築しています。

この楽曲は、私たちが幼少期に抱いていた明るい未来への希望が、現実の悲劇や社会の不条理によって崩壊していく「無垢の喪失」をテーマにしています。歌詞には、権力や強欲、帝国主義に突き動かされる世界に対する焦燥感と、国家の根底にあるシステム的な暴力に直面した人々の怒りが生々しく表現されています。あわせて公開されたミュージックビデオは、写真家・映像監督の Pooneh Ghana が手がけ、テキサスの広大な牧場を舞台に撮影されました。この映像は、曲が持つヒリついたディストピア感を見事に視覚化しており、バンド初の西海岸ツアーに向けてさらに勢いをつける仕上がりとなっています。

Nina Winder-Lind – “Headfirst”

ブライトンを拠点に活動するスウェーデン出身のシンガーソングライターであり、ロックバンド The New Eves のメンバーとしても知られる Nina Winder-Lind が、ニューシングル「Headfirst」をリリースしました。本楽曲は、2026年8月14日に Transgressive からリリース予定の彼女のデビューソロアルバム『Wild Love』からの先行シングルです。絡み合うギターと推進力のあるドラムを軸に、抑制されたリズムのグルーヴから、フルバンドによる爽快なクライマックスへと徐々に広がっていく構成が特徴で、彼女のトレードマークであるスモーキーなボーカルが、深く個人的でありながらも野生的な魅力を放っています。

この楽曲は、彼女が近所を散歩しているときに作った口語詩と、GarageBand に「テレビ・ギター(television guitar)」として録音していた変則的な2声ハモりのギターリフという、2つの要素が融合して誕生しました。Nina 自身が「存在の宣言であり、動きと感情への賛歌。これは動物的な歌です」と語るように、直感や生命の躍動感が表現されています。前作のシングル「This Is Our Life」や「Girls」に続く本作は、アルバム『Wild Love』が持つ、喜怒哀楽すべての感情、そしてただ生きていることへの高揚感を祝福するテーマを色濃く反映した1曲となっています。


Savanna Ruth – “Bad Thoughts”

Savanna Ruthが本名名義(旧名義:Burr Oak)としてリリースするデビューアルバム『The Baseball Diaries』から、リードシングル「Bad Thoughts」が発表されました。Local HのScott LucasとBlake Smithがプロデュース、John Agnello(Dinosaur Jr, The Breeders, Red Kross)がミックスを手がけた本作は、歪んだギターと陽光を浴びたようなポップさが同居するサウンドが特徴です。元婚約者とのオープン・リレーションシップへの移行や、別の女性への強い引力に葛藤した実体験に基づいて書かれており、人間関係の複雑さや予期せぬ欲望、そして自己探求のプロセスを包み隠さず描いたエモーショナルな楽曲に仕上がっています。

Todd Diederichが監督を務めたミュージックビデオは、夏のシカゴを舞台に、この複雑な感情の揺れ動きを「故郷」という確かな手触りのある場所に引き寄せています。単なる観光名所の紹介ではなく、Savanna Ruthが幼少期にリトルリーグで汗を流したThillens Stadiumや、夢や憧憬の象徴であるWrigley Fieldなど、自身の歴史が刻まれた本物のシカゴの風景をフィーチャー。ノスタルジーに満ちた思い出の地を巡ることで、過去と現在、幼少期と大人としての葛藤を交錯させ、シカゴの街を彼女自身の内面を映し出すエモーショナルなランドマークへと昇華させています。