Matmosの新作『Metallic Life Review』は、単なる音楽作品という枠を超え、まるで音響彫刻のような緻密さと独創性を湛えています。結成以来30年にわたり、Drew DanielとM.C. Schmidtの二人が探求し続けてきた音の可能性が、今作において一つの到達点を迎えたと言えるでしょう。彼らは、日常に存在するありふれた金属製品から、歴史的な音響機器に至るまで、あらゆる金属が持つ固有の振動と響きを丁寧に収集し、それを素材として、既存の音楽ジャンルの制約を大胆に打ち破る、全く新しい音響世界を構築しました。
アルバムを構成する一つ一つの楽曲は、まるで精巧なオブジェのように、注意深く選び抜かれた金属音によって形作られています。硬質なインダストリアル・ノイズと、予期せぬ瞬間に現れる繊細なメロディー、そして複雑に絡み合うリズムのパターンは、聴く者の耳を捉え、想像力を掻き立てます。それは、単なる音の羅列ではなく、Matmosの二人が長年にわたり培ってきた音響に対する深い理解と、それを具現化する卓越した技術によって初めて可能となる、唯一無二のサウンドスケープです。
特に注目すべきは、アルバムのB面がMatmosにとって初の試みとなる「ライブ・イン・ザ・スタジオ」録音で構成されている点です。通常のスタジオ録音のように、細部まで作り込むのではなく、即興演奏によって生まれる予測不可能な音の動きや、エネルギーの奔流をそのまま捉えることで、彼らのライブパフォーマンスの持つ生々しいダイナミズムをリスナーに伝えます。混沌の中から秩序が生まれ、そして再び崩壊していく、その刹那的な音の瞬間は、まさに彼らの音楽の核心をなすものです。