Hutch – “Pepper Kettle”

ブライトンを拠点に活動するジャンル・サイケバンド、Hutchがニューシングル「Pepper Kettle」をリリースしました。彼らが得意とする色鮮やかで万華鏡のようなサウンドは、日常の退屈から解き放たれるような遊び心に満ちており、自然界の驚異やその中でのめくるめく冒険を祝福しています。BBC Radio 6 Musicなどのメディアからも「喜びにあふれている」と高く評価される彼らの音楽は、聴く者の心に消えない微笑みを残すような、ポジティブなエネルギーを放っています。

今作の歌詞では、キッチンに置かれた「ペッパー・ケトル」を中心に、スパイスやシナモンが香るハーブティーを淹れる穏やかで親密な時間が描かれています。優しく、そして時には弾けるようなケトルの音を背景に、「今夜眠りにつくときは、きっとすべてがうまくいく」という安心感や、カフェインレスの紅茶がもたらす安らぎが歌われています。万華鏡のように広がるサイケデリックな音像と、日常の小さなしあわせを慈しむ内省的なリリックが、唯一無二の多幸感を生み出しています。


The Black Wizards – “Killing The Buzz”

ポルトガル出身のバンドThe Black Wizardsが、最新シングル “Killing The Buzz” をリリースしました。本作は、短視眼的で強欲な「ありふれた男」が、他者を争わせて私欲を肥やす歪んだ社会構造を鋭く描き出しています。「俺たちが礼儀正しく血を流している間に、彼は瓶を揺さぶっている」という象徴的な一節からは、権力による搾取と、それに翻弄される大衆の対比が鮮明に浮かび上がります。

楽曲の後半では、空虚な言葉を連ねる相手への嫌悪感と、そこからの決別が力強く歌い上げられます。「You’re killing the buzz(お前は興奮をぶち壊している)」というリフレインは、精神的な抑圧に対する苛立ちを爆発させ、1分後にはその場を去るという宣言へと繋がります。バナーに飾られた外面の良さや、金銭で時間を買い戻そうとする欺瞞を痛烈に批判する本作は、バンドのルーツであるヴィンテージなロックの熱量と、現代的な社会風刺が見事に融合した一曲です。


zouz – “Le vice et le culte”

ケベックを拠点に活動するオルタナティヴ・ロックバンド、zouzが新曲「Le vice et le culte」を携えて帰ってきました。パワフルで中毒性の高いサウンドが特徴の今作は、公式リリースにおいて待望のサードアルバムに向けた「前兆」である可能性を示唆しつつも、あえて明言を避けるというミステリアスな形での発表となりました。バンドは現在、極めて好調なコンディションにあり、再始動への期待を抱かせる一曲となっています。

公開されたミュージックビデオには、歌詞の中にいくつかのユーモア溢れる「小ネタ(blagounettes)」が仕掛けられており、視覚的にもバンド特有の遊び心が散りばめられています。鋭いグルーヴとフランス語詞の響きが交錯するzouzらしい美学は健在で、彼らが提示する新たな音像が、次なるプロジェクトへとどのように繋がっていくのか、ファンやメディアからの熱い視線が注がれています。


無限の回転の中で見出す、静かな受容のサイケデリア——Baby Coolが新作『Infinity Baby』で描き出す、人間らしさの影と光

Grace CuellによるプロジェクトBaby Coolが、セカンドアルバム『Infinity Baby』から先行シングル「Everything」を公開しました。前作『Earthling on the Road to Self Love』で見せた幻想的な探求心を受け継ぎつつ、今作ではより地に足のついた誠実な視点で「人間であることの意味」を追求しています。楽曲は渇望や敗北の間を揺れ動きながらも、最終的には希望へと立ち戻り、私たちが受け継ぎ、繰り返してきた行動や感情の「パターン」を浮き彫りにしています。

本作はKing Gizzardらを手がけるSamuel Josephをプロデューサーに迎え、オーストラリアの北部河川地域の丘陵地帯で制作されました。音楽的にはサイケデリア、フォーク、クラウト・ポップが境界なく混ざり合い、レコーディング環境である大自然の広大さがサウンドの随所に反映されています。シングル「Everything」は、あらゆる瞬間から意味を見出そうとすることへの疲弊を象徴的に描いており、アルバム全体に通底する「世界の大きさに圧倒される感覚」を、緻密なアンサンブルで見事に表現しています。

Dominic Sullivanが監督を務めたミュージックビデオは、ニューサウスウェールズ州政府のSound NSWによる支援を受け、先住民アラクワル・ピープルの土地で撮影されました。Grace Cuell自身の歌声とアコースティックギターを中心に、Samuel JosephのシンセやNicholas Cavendishのベースが重なる重層的なサウンドは、Greenway Records(米)およびBad Vibrations(英/欧)から世界へ届けられます。答えを出すのではなく、混沌とした回転の中に身を置くことで静かな受容を見出す、Baby Coolの新たな境地がここに結実しています。


30年の時を越えて鳴り響く、不屈の『ラヴ・ロック』精神——オリンピアの先駆者Some Velvet Sidewalkが、DIYの聖地K Recordsから放つ奇跡の再始動

ワシントン州オリンピアのDIYシーンを牽引し、Beat Happeningと共に「ラヴ・ロック(Love-rock)」ムーブメントを築いたSome Velvet Sidewalkが、約30年ぶりとなる復活を果たしました。中心人物のAl Larsenと長年のドラマーDon Blairが再集結し、数人のベーシストの助けを借りて制作された29年ぶりのニューアルバム『Critters Encore』は、6月26日に名門K Recordsよりリリースされます。かつてカート・コバーンもファンを公言し、Tobi Vail(Bikini Kill)も在籍した彼らの帰還は、インディー・シーンにとって記念碑的な出来事です。

先行シングル「Don’t Fuck With Your Luck」は、彼らの代名詞であるルーズで粗削りなDIY精神が今なお健在であることを証明しています。「容赦なき素朴さを備えたポップ・マシン」と評される彼らのサウンドは、ローファイ、ノイズ・ポップ、パンクが混ざり合い、忘却の淵で震えるギターと一度聴いたら耳を離れない幽玄な歌声が特徴です。新作はオリンピアとバーモントを跨ぐ再結成ツアーの合間にレコーディングされ、10曲入りの33回転レコードとして、当時の情熱と現代の感性が交錯する音像を提示しています。

本作のテーマは、郊外に息づくウサギやカラス、リスといった生き物たちとの「種を超えたつながり」にあります。マーシャル・マクルーハンの思想がロイ・オービソンのバイクに相乗りしたような知性と情熱が同居し、焦燥感に満ちたカタルシスの中にも、しっかりと地に足のついた感覚を失っていません。長年シーンに多大な影響を与えてきた彼らが、現代の複雑な社会において再び「ラヴ・ロック」革命を掲げ、ミニマリズムの美学をもって新たな物語を綴り始めました。


16年の実験を経て到達した、知性と肉体を解放する音のユートピア——Horse Lordsが初のボーカル導入と北アフリカのリズムで切り拓く、実験的ロックの新次元

ボルチモアを拠点に活動し、現代アメリカで最も刺激的な実験的ロックバンドの一つであるHorse Lordsが、通算6作目のスタジオアルバム『Demand to Be Taken to Heaven Alive!』を6月12日にRVNG Intl.よりリリースすることを発表しました。先行シングルとして公開された「Eureka 378-B」では、結成16年の歴史で初めてボーカル(Nina GuoとEvelyn Saylor)を導入するという新たな試みに挑戦しています。本作は全12曲が相互に作用し合う構成となっており、多角的な視点から音楽を捉え直す「視点を変えるためのツール」としての芸術性が追求されています。

サウンド面では、これまでの代名詞であったマスロックやプログレの要素に加え、北アフリカのトゥアレグやティシュマレンといったギターリズムを大胆に取り入れ、独自の音楽言語をさらなる高みへと進化させています。不可能に思えるほど精緻なディテールと、逃れようのない強烈なグルーヴが同居するその音像は、知性と肉体の双方を刺激する「モアレ(干渉縞)」のような複雑なパターンを描き出しています。前作『Comradely Objects』からの飛躍を感じさせる、極めて重層的でエネルギッシュなアンサンブルが本作の核となっています。

このアルバムは、リスナーを音の精神的、恍惚的、そしてユートピア的な次元へと解放することを目指して制作されました。緻密に編み込まれた12の楽曲群は、単なる固定された構造ではなく、聴くたびに新しい発見をもたらす動的な音の迷宮を形成しています。16年にわたり磨き上げられてきたバンドの共有言語が電撃的な進化を遂げた本作は、実験音楽の枠を超えて、聴く者の魂を震わせるような人間味あふれる音楽体験を提示しています。


Kulk – “Ache”

イギリスを拠点に活動するKulkが、名門Church Road Recordsとの契約を発表し、ニューシングル「Ache」をリリースしました。本作はBear Bites HorseスタジオのWayne Adamsを再びエンジニアに迎え、さらにIanのHannah Aspreyによる美しくも悲痛なチェロの音色が加えられています。2023年に亡くなった友人・Megへの献辞であると同時に、後に残されたすべての人々に捧げられたこの曲は、彼女の死後、バンドが最初に書き上げ、ライブの幕開けを飾ってきた極めて重要な一曲です。

「Ache(痛み)」というタイトルの通り、本作が描き出すのは、数年が経過してもなお消えることのない「悲しみと共に生きること」の実感です。それは数日間の激痛のようなものではなく、正しく接合されなかった骨折の痛みのように、常にそこにあり、行動や思考、動き方さえも変えてしまう持続的な重みとして表現されています。執拗に繰り返される重厚なサウンドとチェロの旋律は、決して癒えることのない喪失感を、ただ悲嘆するだけでなく、自分たちの一部として受け入れて生きていく覚悟を象徴しているかのようです。


Radioheadの重圧を脱ぎ捨て、一人の『新人ソングライター』として向き合う真実——2027年のバンド再始動を前に、Ed O’Brienが『Blue Morpho』に封じ込めた不変の精神性

Radioheadのギタリスト、Ed O’Brienが、EOB名義の前作から約6年ぶりとなるソロ第2作『Blue Morpho』を本名名義でリリースすることを発表しました。パンデミック初期の深い鬱状態や「中年の危機」を経て制作された本作は、ウェールズの豊かな自然とロンドンの神聖なスタジオで録音され、自身の過去のトラウマや内面的な葛藤と向き合う癒やしのプロセスそのものとなっています。先行シングルであるタイトル曲には、Paul EpworthやShabaka Hutchingsに加え、RadioheadのPhilip Selwayら豪華な顔ぶれが参加しており、精緻かつ壮大なアンサンブルを聴かせてくれます。

本作の背景には、かつてRadioheadとしての活動に違和感を抱き、バンドとの距離感に悩んだ時期を経て、現在の自分を肯定できるようになった彼の精神的な成熟があります。特にウェールズの静かな環境で自然と触れ合い、Wim Hofのメソッドなどを通じて心身を整えた経験が、音楽に深い静謐さと再生のエネルギーを与えています。かつて「新品同様(ミント・コンディション)」であることに固執し、変化を恐れていた彼は、今や「暗闇を通り抜けることでしか光は見つからない」という信念のもと、未完成な自分や偶然の出会いを受け入れる強さを手に入れました。

また、インタビューではRadioheadの今後の活動についても言及しており、2026年の公演予定はないものの、2027年以降に北米やアジアを含む世界各地で年間20公演ずつを巡る計画があることを明かしました。現在の彼は、世界的なバンドの一員としての責任感と、一人の新人ソングライターとしての探求心を両立させています。新作『Blue Morpho』は、単なるソロプロジェクトの枠を超え、人生の暗闇から抜け出し、再び歩み始めた一人の音楽家の誠実なドキュメントと言えるでしょう。


締め切りという「重圧」が導き出した、3日間の純粋な即興記録。Index For Working Musik が放つ、本編を凌駕する熱量を孕んだ「アンチ・フォーマリズム(反形式主義)」のドキュメント

ロンドンを拠点に活動するアンチ・フォーマリスト(反形式主義)集団、Index For Working Musikが、4月3日にTough Loveからリリースされるアルバム『Bunker Intimations II』より、最新シングル「Geordie Vision」を発表しました。本作はセカンドアルバム『Which Direction Goes The Beam』の姉妹盤であり、元々は同作の初回限定アナログ盤にのみ付属していた貴重なカセット音源が、待望の単独リリースとなります。

収録された50分に及ぶ録音は、2025年3月のわずか3日間という、極めて厳しい締め切りの重圧下で制作されました。すべての楽曲はその場で即興演奏され、即座にミックスダウンされており、作為的な加工を排した「その瞬間」の記録となっています。この切迫した状況下で生まれた生々しいエネルギーは、制作陣の一部から「本編のアルバムを凌駕している」と評されるほどの完成度を誇ります。

先行シングル「Geordie Vision」は、彼らの実験的で妥協のない姿勢を象徴する一曲です。計算された形式主義に抗い、即興が生み出す予測不能な展開と剥き出しのグルーヴが、リスナーをロンドンの地下シーンの深淵へと引き込みます。単なるおまけの音源集という枠を超え、アーティストの純粋な創造性が爆発した瞬間のドキュメントとして、今改めて世に問われる重要な作品です。

アイルランドの静寂から、轟音と叙情が交錯する新境地へ。ポストロックの残響にシューゲイザーの色彩を重ね、newhvn が描き出す広大なインディー・ロックの地平

アイルランドの辺境から登場したnewhvnが、デビューアルバム『Spring Time Blues』からの第1弾シングル「Skin Off the Bone」をリリースしました。ポストロック・バンドの残響から結成された彼らは、その大気的なルーツにシューゲイザーやポストハードコアの要素を融合。これまでにヨーロッパ、イギリス、アジアを巡る広範なツアーを行い、Touché AmoréやTrauma Rayといった実力派バンドとステージを共にする中で、着実にその実力を磨き上げてきました。

今作『Spring Time Blues』は、PinegroveやThe War on Drugsといったアーティストからの影響を独自の広大なサウンドへと昇華させた作品です。スコットランドのルイス島にあるBlack Bay Studiosにて、プロデューサーのTom Peters(Alpha Male Tea Party)と共にレコーディングを実施。全10曲にわたる収録楽曲は、ワイドスクリーンなインディー・ロックの開放感と、彼らの出発点であるポストロック特有の感情的な激しさを絶妙なバランスで共存させています。

アイルランドのアンダーグラウンド・シーンと長年の国際的なツアー経験によって形作られた彼らのサウンドは、カラーヴァイナルとしてもリリースされるこのデビュー作で見事な結実を見せています。静寂と轟音を使い分けるダイナミズムを保ちつつ、よりパーソナルでエモーショナルな物語を紡ぎ出す本作は、ポストロックの枠を超えて新たな地平を切り拓く、newhvnにとって極めて重要なステートメントとなっています。

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