締め切りという「重圧」が導き出した、3日間の純粋な即興記録。Index For Working Musik が放つ、本編を凌駕する熱量を孕んだ「アンチ・フォーマリズム(反形式主義)」のドキュメント

ロンドンを拠点に活動するアンチ・フォーマリスト(反形式主義)集団、Index For Working Musikが、4月3日にTough Loveからリリースされるアルバム『Bunker Intimations II』より、最新シングル「Geordie Vision」を発表しました。本作はセカンドアルバム『Which Direction Goes The Beam』の姉妹盤であり、元々は同作の初回限定アナログ盤にのみ付属していた貴重なカセット音源が、待望の単独リリースとなります。

収録された50分に及ぶ録音は、2025年3月のわずか3日間という、極めて厳しい締め切りの重圧下で制作されました。すべての楽曲はその場で即興演奏され、即座にミックスダウンされており、作為的な加工を排した「その瞬間」の記録となっています。この切迫した状況下で生まれた生々しいエネルギーは、制作陣の一部から「本編のアルバムを凌駕している」と評されるほどの完成度を誇ります。

先行シングル「Geordie Vision」は、彼らの実験的で妥協のない姿勢を象徴する一曲です。計算された形式主義に抗い、即興が生み出す予測不能な展開と剥き出しのグルーヴが、リスナーをロンドンの地下シーンの深淵へと引き込みます。単なるおまけの音源集という枠を超え、アーティストの純粋な創造性が爆発した瞬間のドキュメントとして、今改めて世に問われる重要な作品です。

アイルランドの静寂から、轟音と叙情が交錯する新境地へ。ポストロックの残響にシューゲイザーの色彩を重ね、newhvn が描き出す広大なインディー・ロックの地平

アイルランドの辺境から登場したnewhvnが、デビューアルバム『Spring Time Blues』からの第1弾シングル「Skin Off the Bone」をリリースしました。ポストロック・バンドの残響から結成された彼らは、その大気的なルーツにシューゲイザーやポストハードコアの要素を融合。これまでにヨーロッパ、イギリス、アジアを巡る広範なツアーを行い、Touché AmoréやTrauma Rayといった実力派バンドとステージを共にする中で、着実にその実力を磨き上げてきました。

今作『Spring Time Blues』は、PinegroveやThe War on Drugsといったアーティストからの影響を独自の広大なサウンドへと昇華させた作品です。スコットランドのルイス島にあるBlack Bay Studiosにて、プロデューサーのTom Peters(Alpha Male Tea Party)と共にレコーディングを実施。全10曲にわたる収録楽曲は、ワイドスクリーンなインディー・ロックの開放感と、彼らの出発点であるポストロック特有の感情的な激しさを絶妙なバランスで共存させています。

アイルランドのアンダーグラウンド・シーンと長年の国際的なツアー経験によって形作られた彼らのサウンドは、カラーヴァイナルとしてもリリースされるこのデビュー作で見事な結実を見せています。静寂と轟音を使い分けるダイナミズムを保ちつつ、よりパーソナルでエモーショナルな物語を紡ぎ出す本作は、ポストロックの枠を超えて新たな地平を切り拓く、newhvnにとって極めて重要なステートメントとなっています。

理性と狂気の境界に浮かび上がる、退廃的でセクシーな白昼夢。Douglas Diamond が放つ、セックスと陰謀がインフラとして機能する架空の楽園「Diamondland」への招待状

Douglas Diamondが、ニューEP『Welcome to Diamondland』からの最新シングル「All Night」をリリースしました。Diamondland(ダイヤモンドランド)は、理性的な判断の境界線上に存在する、セクシーで予測不能なアートが許されたファンタジーの世界です。カウボーイハットを被った過去不明のバーテンダーや、誰にも聴かれないヒット曲を歌うクルーナー、そして空に不吉な線を描くケムトレイルなど、倒錯した日常と陰謀が入り混じる奇妙な情景が描き出されています。

本作は、セックスやパラノイア(被害妄想)が社会のインフラとして機能しているような、極めて映画的な世界観を持っています。それはまるで、低予算で制作された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』や、最初の一音が鳴る前から不穏な空気が漂う深夜のロードハウスでのライブのようです。不完全さや危うさをあえて内包することで、聴き手を現実離れした倒錯的な夢幻の世界へと誘う、強烈なステートメントとなっています。

ブラジルの異能 DEAFKIDS が放つ、パンクの狂気とアフロ・ラテンの脈動が激突する音の猛攻。権力の虚構を内臓的に解剖し、精神の浄化を促す「儀式的ダンス・ミュージック」の真骨頂

ブラジルのデュオDEAFKIDSが、5月29日にNeurot Recordingsからニューアルバム『CICATRIZES DO FUTURO (SCARS OF THE FUTURE)』をリリースします。2019年の『Metaprogramação』以来となる単独フルアルバムの本作は、パンクの生々しい精神と複雑な世界的リズム、そして電子音楽の実験性を融合させた、ジャンルの境界を破壊する全9曲の音の猛攻です。

先行シングル「CICATRIZES」では、アフロ・キューバン音楽のグアグアンコ・リズムとパンクのDビートが、重厚な808バスドラムやアシッド・ハウスのベースラインと交錯します。歌詞は崩壊する世界の目撃証言のようであり、集団的な妄想から目覚め、隠蔽されてきた恐ろしい現実に直面する意識の状態を表現。暴力的な世界を反映するだけでなく、音楽を通じた精神の浄化と抵抗の意志が、強烈なダンス・ミュージックとして昇華されています。

アルバムのコンセプトは、権力の虚構に毒された世界の「内臓的な診断」です。心理的・社会的支配のメカニズムが身体や精神に刻んだ消えない「痕跡(スカーズ)」をテーマに据えつつ、肉体的で儀式的なサウンドによって精神の浄化を促します。政治的・道徳的な毒性が蔓延する現代において、盗まれた過去と呪われた未来を見つめ、決して沈黙することのない記憶としての音楽を提示しています。

実験音楽界の巨星二人が、SNSの偶然から奇跡の邂逅。Bill Orcutt の峻烈なギターと Mabe Fratti の優美なチェロが、静寂の中で溶け合うノスタルジックな音響のユートピア

アメリカのギタリストBill Orcuttと、グアテマラ出身のチェリスト兼ヴォーカリストMabe Frattiという、現代のエクスペリメンタル・シーンを牽引する二人の異才がタッグを組んだニューアルバム『Almost Waking』が5月22日にUnheard of Hopeよりリリースされます。きっかけは数年前、Mabe Frattiが好きなアルバムの一つとして彼の名を挙げたことで、それを知ったBill Orcuttが即座にメールを送ったことからこの「オールスター」なコラボレーションが実現しました。

先行公開されたタイトル曲「Almost Waking」は、二人の楽器が穏やかに響き合う温かなインストゥルメンタル・デュエットであり、もう一方の「El inicio es cuestión de suerte」ではMabe Frattiの透明感のある歌声が前面に押し出されています。これまで両者は時に破壊的で激しい音楽を提示してきましたが、本作ではそれとは対照的な、息を呑むほどにソフトで瑞々しいアプローチを見せており、制作過程で生まれたノスタルジックな雰囲気がアルバム全体を包み込んでいます。

制作は、Bill Orcuttが送ったギターのソロ音源に対し、メキシコのスタジオでMabe FrattiがI. la Católicaと共に、ギターの調和的な可能性を解読しながら慎重にメロディを重ねていくというプロセスで進められました。空間を活かすことを重視しつつ、時に大胆なヴォーカル・ハーモニーを試みるなど、偶然の出会いから始まった対話が豊かな音楽的結実を見ています。共に多作な二人が、互いの創造性を尊重し合いながら作り上げた、今年最も注目すべき共作の一つです。

「私の脳内をスキャンしても、これほど完璧な音は作れない」—— ブリストルの異才 Tara Clerkin Trio、集大成となる新作『Somewhere Good』を発表

ブリストルの3人組 Tara Clerkin Trio が、2023年のミニアルバム以来となる待望のニューアルバム『Somewhere Good』を2026年6月5日に World of Echo からリリースすることを発表しました。全8曲収録の本作は、デジタル、CD、LPに加え、ボーナス7インチが付属するデラックス盤も用意されています。発表に合わせて公開されたタイトル曲は、彼らが結成以来培ってきた独自の音楽性がさらに深化していることを物語っています。

本作を「例外なく、私が今最も聴きたい音楽」と絶賛するのは、ライターの Ryan Davis です。彼は、AIが個人の好みを完璧にデータ化したとしても作り得ないような、魔法のような調和がこの3人(Tara Clerkin、Sunny Joe Paradisos、Patrick Benjamin)によって実現されていると語ります。40分を超える本作では、自己敗北や都市の再開発といった沈鬱なテーマを扱いながらも、即興と緻密なアレンジに十分な「呼吸」の空間を与えることで、リスナーの想像力を強く刺激する祝祭的な響きへと昇華させています。

そのサウンドは、90年代のブリストル・サウンド(トリップホップ)の残響を感じさせつつも、アヴァン・ポップ、モダン・クラシカル、クラウト・フォークといった多種多様な要素が混在しています。ハルモニウム、管楽器、アップライト・ベース、そして Tara の繊細なメロディが織りなす催眠的なアンサンブルは、予測不能なダイナミズムと英国的な探求心に満ちています。独自の宇宙を提示し続ける彼らにとって、本作はキャリア史上最も完成された、新たな金字塔となる一作です。

激動する世界と「安静時の心拍数」が交差する場所。Sook-Yin Lee が全編 72BPM の瞑想的ビートで描き出す、崩壊するシステムへの静かなる抵抗と自己解放の記録

カナダを拠点に活動する伝説的なマルチメディア・アーティストであり映画監督のSook-Yin Leeが、ソロ・ニューアルバム『72RHR』を5月29日にHand Drawn Draculaからリリースすることを発表しました。先行シングルとして公開された「Locked Boy」は、彼女自身が作曲、演奏、録音、プロデュースのすべてを手がけた楽曲。思うように自分を表現できない精神的・肉体的な「監禁状態」からの解放をテーマにしており、孤独の中でも自らの存在価値を信じることの大切さを歌っています。

アルバムタイトルの「72RHR」は、安静時の心拍数(Resting Heart Rate)を意味しています。既存のシステムが崩壊し激動する世界の中で、穏やかな均衡を保つことの難しさに直面した彼女は、あえて全編を72BPMという瞑想的なテンポで統一するという概念的な枠組みを採用しました。この一定のリズムに身を委ねることで、現代の混乱と向き合うための独自の音楽的アプローチを試みています。

本作は、不調和と調和の間を揺れ動く感情的な起伏を、音の旅として描き出しています。Lee & Gamble Unitedが監督を務めた「Locked Boy」のミュージックビデオと共に、リスナーを深い内省と共鳴の世界へと誘います。心拍数と同期するような一定のビートの上で展開される、激動の時代に対する彼女なりの回答であり、静かながらも力強い意志が込められた一作です。

結成 25 年を経て辿り着いた、最もピュアで色彩豊かな「自己の肯定」。独創的なベース・コード奏法が紡ぐメロディが、曖昧な過去を鮮やかな未来へと繋ぎ止める 11 枚目の傑作

タルサを拠点に活動するJohnathon Fordのインストゥルメンタル・プロジェクト、Unwed Sailorが、5月8日に通算11枚目となるニューアルバム『High Remembrance』をリリースします。2019年の活動再開以降、驚異的なペースで良作を連発している彼らですが、暗い個人的な感情が投影されていた前作『Heavy Age』に対し、今作はタイトルが示す通り「記憶」や「ノスタルジー」をテーマに据え、かつてないほどの輝きと開放感に満ちたサウンドを展開しています。

先行シングル「West Coast Prism」は、オレゴン州の海岸線や森への深い愛情を反映した、色彩豊かなリフレインが印象的な楽曲です。アルバム全編を通して、70年代後半のAMラジオの粋な雰囲気やニュー・ウェイヴの躍動感、さらにはカントリー・ミュージックへのオマージュなどが織り交ぜられています。長年の協力者であるMatt PutmanやDavid Swatzellと共に、Fordが自宅で温めてきたデモに命を吹き込み、一筋縄ではいかない多層的な音響空間を構築しています。

本作の核となるのは、Fordの代名詞であるコード奏法を駆使したベース・ギターです。過去を振り返り、自分自身を含む「愛するもの」を抱きしめることを学んだ彼の精神性が、温かみのあるメロディとして結実しています。シアトルでのバンドの原点に触れる楽曲から、砂漠の夜のドライブを彷彿とさせる静謐なトラックまで、記憶という曖昧な境界線を旅するような、ワイドスクリーンで壮大なフィナーレへと続く傑作が誕生しました。

ブライトンの結束が生んだ、静謐で壮大なコンセプト・アルバム。Miles Goodall 率いる7人編成アンサンブルが、交通事故から昏睡へと至る「生と死の境界」をワイドスクリーンに描き出す

イギリス・ブライトンのシーンにおいて、コミュニティの結束を象徴するような新星 SoftTop が、デビューアルバム『Gathering Dust』を6月19日に Crafting Room Records からリリースすることを発表しました。中心人物の Miles Goodall は、自らコミュニティ主導のフェスティバルを主催し、他バンドのツアーマネージャーを務めるなど、ブライトンの音楽シーンを支える中心的な存在。本作にはその信頼に応えるべく、地元の精鋭ミュージシャンたちが集結しています。

最新シングル「Paving Stones」は、耳を惹くベースのリフとチェロの優美な音色から始まり、通常のバンド編成にクラリネットを加えた多層的なアレンジが特徴です。Miles Goodall の豊かな歌声と独創的な構成力は、平均的なインディー・ロックの枠を超えた深みを感じさせ、ブライトンの街が育んできた「互いに支え合い、共に高め合う」という精神が、そのまま音楽のクオリティとして結実しています。

シングルやEPを重ねる従来のステップを飛び越え、いきなり全11曲のコンセプトアルバムという大作に挑む背景には、確かなヴィジョンと盤石なバンドアンサンブルへの自信があります。アルバムは最初から最後まで一つの物語を追いかける構成となっており、コミュニティの力を原動力に、ブライトンのシーンからまた一つ、真に独創的な輝きを放つ宝石のような作品が誕生しようとしています。

SOPHIEと実弟への祈り、そして祝祭。PC Musicの遺伝子を継ぐ Hyd が、二つの大きな喪失をアイスランドの冷徹な空気と Hudson Mohawke の重低音で光へと変える最新作

ニューヨークを拠点に活動するマルチ・アーティストであり、かつてPC Musicの象徴的プロジェクト「QT」の共同クリエイターとしても名を馳せたHyd(Hayden Dunham)が、ニューアルバム『Hold Onto Me Infinity』のリリースを発表しました。本作は、2022年のソロデビュー作『CLEARING』に続く待望の新作で、主にアイスランドでのリサーチ中に制作されました。

アルバムの内容は、Hydが近年経験した二つの大きな喪失――2021年に急逝したパートナーのSOPHIEと、2024年にひき逃げ事故で亡くなった実弟――を深く反映した極めてパーソナルなものとなっています。悲しみと向き合いながらも、生と死の境界線を音楽によって繋ぎ止めるような、強固でスピリチュアルな意志が全編に込められています。

先行シングル「Angel」は、Hudson Mohawkeをプロデューサーに迎えた、SOPHIEに捧げる輝かしいダンス・ポップ・ナンバーです。歌詞では自身の父親とSOPHIEが初めて対面した時の記憶や、彼女が今や「守護者(エンジェル)」のような存在になったことが歌われています。テーマは重厚ですが、サウンドは祝祭的な力強いビートに満ちており、喪失を光へと昇華させるような圧巻の仕上がりです。

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