Robber Robber – “Pieces”

バーモント州バーリントンを拠点とするポストパンク・バンド、Robber Robberがニューシングル「Pieces」をリリースしました。本作は、4月3日にFire Talkからリリースされる待望のニューアルバム『Two Wheels Move the Soul』からの先行カット。不協和音を恐れないエッジの効いたギターワークと、複雑に絡み合うリズムセクションが、バンド特有のドライで緊張感に満ちた空気感を作り出しています。

歌詞の面では、自己の一部を切り出し、不確かな関係性や忘却の中に身を投じるような内省的な世界観が描かれています。「触覚を頼りに進む(navigate by touch)」といったフレーズに象徴されるように、視界の効かない暗闇の中で模索を続けるような切実な響きが、ソリッドなサウンドと見事に共鳴しています。アルバムの核心を突く、彼らの音楽的進化を雄弁に物語る一曲です。

Dua Saleh – “I Do, I Do”

Dua Salehのセカンドアルバム『Of Earth & Wires』が5月にリリースされます。新たに公開された先行シングル「I Do, I Do」は、スーダンの口語表現や慣用句をルーツに持ち、独自の言語感覚を「社会の崩壊」や「地球の破壊」という壮大なテーマを描くための器として使用しています。楽曲の中では、文明崩壊後の世界で生存者たちが西部劇のように資源をあさり、生き抜こうとするポスト・アポカリプス的な情景が描き出されています。

サウンド面では、自身のルーツであるスーダンへの敬意を込め、アラブ圏の伝統楽器であるウード(Oud)を取り入れているのが特徴です。伝統的な要素と現代的なエレクトロニック・サウンドを融合させることで、荒廃した未来図の中に深い精神性と歴史の重みを共存させています。言葉と音の両面から、失われゆく世界と生き残る者たちの姿を鮮烈に提示する、極めて野心的な一曲です。

Iceage – “Star”

デンマークのポストパンク・バンドIceageが、前作『Seek Shelter』以来約5年ぶりとなる待望の新曲「Star」をリリースしました。かつてのダークなポストパンク・スタイルから、前作で見せた明るい方向性をさらに推し進めた本作は、ハンドクラップや煌めくような16分音符のギターパルスが躍動する、バンド史上最も「喜びに満ちたラブソング」に仕上がっています。

ボーカルのElias Rønnenfeltは、すべてを消し去る破滅的な終焉としての「星の死」を愛になぞらえ、崩壊の中に宿る白熱した生命力を歌い上げています。結成から18年、5枚のアルバムを通じて「崩壊と再生」の美学を追求してきた彼ららしい、危ういバランスを保ちながらも力強く前進するアンセムであり、彼らの新たな進化を象徴する一曲です。

Pictish Trail – “Life Slime”

スコットランドのアイグ島を拠点に活動するサイケデリック・フォークの奇才、Pictish Trail(Johnny Lynch)が、ニューシングル「Life Slime」をリリースしました。本作は、前作が「時間を止めようとすること」をテーマにしていたのに対し、時間は止まらないという事実への「諦念」を描いています。アナログシンセの湿り気のある音像に乗せて、関係の終わりや自己喪失、そして感情的な惨状の中にいながらも、あまりの疲弊ゆえにただそれを受け入れるしかない「溜息」のような境地を表現しています。

ミュージックビデオでは、演奏中の人物に注がれたスライムの量のギネス世界記録を目指し、170リットル以上ものピンク色のスライムが使用されました。映像の中盤で、炎に包まれながら「This is fine(これでいいんだ)」と繰り返す場面は、周囲が燃え盛る中で冷静にお茶を飲む犬のミームを引用しており、絶望的な状況にありながらも反応する気力さえ失った、虚無的なレジグネーション(諦め)を象徴的に映し出しています。

アルメニアの血脈と失われた声を巡る旅。ブルックリンの才媛 Nara Avakian が、7分の叙事詩「Tucson」と共に描き出すセカンドアルバム『Tearless, thoughtless』の深淵

ブルックリンを拠点とする4人組バンドNara’s Roomが、5月15日にMtn Laurel Recording Coからセカンドアルバム『Tearless, thoughtless』をリリースすることを発表。あわせて、アルバムのエモーショナルな核となる7分間のバラード「Tucson」を公開した。2024年のデビュー作『Glassy star』に続く本作は、全11曲で構成される。

新曲「Tucson」は、中心人物のNara Avakian(they/them)が、自身のルーツであるアルメニアの伝統と個人的な歴史を織り交ぜた楽曲。Linda Ronstadtのドキュメンタリー映画のラストシーン——彼女がトゥーソンの自宅で家族と歌う姿——にインスパイアされており、声を失った彼女の苦しみと自身の葛藤を重ね合わせながら、世代間のトラウマやアルメニア人虐殺、故郷とアイデンティティの喪失といった重層的なテーマに向き合っている。

歌詞には、中東の哀歌やセルゲイ・パラジャーノフの映画『ざくろの詩』へのオマージュなど、多様な文化的背景が引用されている。自身の名前がアルメニア語で「ざくろの深紅」を意味するという個人的な繋がりも、アルバム全体を貫く自己の在り方や継承への探究心と密接に結びついており、極めて内省的かつ壮大なスケールの作品となっている。

Chinese American Bear – “Mama (妈妈)”

北京で幼少期を過ごしたAnna Tongと、ワシントン州の農場で育ち数々のバンドを渡り歩いてきたBryce Barstenによって結成された、シアトル拠点のデュオChinese American Bear。パンデミック中の遊び心から始まった二人のプロジェクトは、Annaが夫の楽曲制作を助け、同時に中国語を教えるプロセスから発展しました。2024年にはロンドンの名門レーベルMoshi Moshi Recordsからアルバム『Wah!!!』をリリースし、B-52’sやFlaming Lips、さらにはBeach Boysまでを彷彿とさせる、無邪気で洗練されたポップ・サウンドを確立しています。

彼らの音楽において、中国語の歌詞は重要なアイデンティティとなっています。かつて公の場で中国語を話すことに抵抗を感じていたというAnnaですが、家庭内で繰り返される「Chi fan le(ご飯だよ)」といった日常のフレーズを歌うことで、多くのファンに自身のルーツへの誇りを与えています。母親に呼ばれたらすぐに食卓へ走らなければならないという、中国系家庭なら誰もが共感する親密な文化を、多世代に響くキャッチーな音楽へと昇華させ、世界的な支持を広げています。

Lip Critic – “Jackpot”

Lip Criticのニューアルバム『Theft World』は、前代未聞の奇妙なバックストーリーから誕生しました。2024年のデビュー作『Hex Dealer』のツアー中、フロントマンのBret Kaserは、彼らの音楽に「宝探し」のヒントが隠されていると信じ込む『Five Nights At Freddy’s』のパーカーを着た若いファンにID(身元情報)を盗まれてしまいます。バンドはこの少年を突き止めてその歪んだ理論を録音し、当時制作中だったアルバムを破棄。詐欺師が妄想した架空の伝承をベースに、全く新しいアルバムを作り上げました。

本日公開された第2弾シングル「Jackpot」は、不快なほど刺激的なパーカッションや不協和音のシンセ、そしてラップにも近いBretの攻撃的なボーカルが炸裂する、狂気的なエレクトロニック・ロックです。現代社会に蔓延するギャンブル依存をテーマにしており、ビデオではカジノの中で徐々に正気を失っていくBretの姿が描かれています。前作「Legs In A Snare」同様、唯一無二の「ボンカーズ(イカれた)」なサウンドは、この奇妙な制作背景を経てさらなる過激さを増しています。

Rise Carmine – “The Otherside”

Rise Carmine(William Brazel Colbert)が放つ「The Otherside」は、「人は必ず死に、今日という日の営みも明日には忘れ去られる」という冷徹な真理を根底に置いています。心拍と共に始まり、音楽が止まり照明が灯る瞬間に幕を閉じる人生という名のステージ。Colbertは本作を通じて、そんな儚い生の中で、現実と非現実の「中間(in-between)」に共に迷い込もうと呼びかけます。Calvin HartwickやEric Vanierといった精鋭スタッフと作り上げた音像は、雑音を遮断し、聴き手を濃密な静寂の奥へと引き込みます。

歌詞に込められたメッセージは、単なる虚無感ではなく、「消えゆく運命にあるからこそ、今この瞬間に寄り添う」という切実な願いです。湖畔の散策や石を投げる日常の風景から、次第に「時間の刻み」や「リミナルな空間(境界)」へと意識が移り変わる中、サビの「What’s on the otherside(向こう側に何があるのか)」という叫びが響き渡ります。Lebni Avitiaが監督し、Tavia Christinaらが肉体で表現した映像美は、形のない虚無を崩し、嵐の前の静けさの中で二人が一つに溶け合うような、一瞬の永遠を鮮やかに描き出しています。

Koyo – “What I’m Worth”

ロングアイランド出身のハードコア・バンド、Koyoが、今春にニューアルバム『Barely Here』をリリースすることを発表しました。エネルギッシュでキャッチーなエモ・サウンドを武器とする彼らの新作には、DrainのSammy CiaramitaroやFleshwaterのMarisa Shirarといった豪華ゲストが参加。すでに公開されている陽気なリードシングル「Irreversible」に続き、期待が高まる中で新たな展開を見せています。

今回新たに公開された楽曲「What I’m Worth」は、高揚感のあるメロディックなパンチが効いている一方で、歌詞の内容は憤りと幻滅に満ちたものとなっています。フロントマンのJoey Chiaramonteは、フルタイムのミュージシャンとして活動する中で直面する業界の不条理や、「誰も勝者がいないゲーム」に身を投じる苦悩を綴っています。Eric Richterが監督を務めた、夕暮れ時の情緒的な美しさが際立つミュージックビデオも必見です。

Arlo Parks – “Get Go”

Arlo Parksが、ニューアルバム『Ambiguous Desire』からの最新シングル「Get Go」を公開しました。彼女はこの曲について、アルバムの核心にある「メランコリックな多幸感」を完璧に凝縮した作品だと表現しています。ダンスフロアを単なる娯楽の場ではなく、自己を理解し、愛との関係性を再発見するための「癒やしの手段」として描いた一曲です。

サウンド面でも、内省的なリリックと高揚感のあるリズムが混ざり合い、彼女特有の繊細なエモーションが際立っています。失意の中でも踊り続けることで前を向こうとする、切なくも美しい力強さに満ちており、新作アルバムへの期待をさらに高める仕上がりとなっています。

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