UMO加入を経て深化。住居喪失の危機と日常の断片を、90年代グランジの衝動と宅録の親密さで射抜くDari Bayの到達点

バーモント州バーリントンを拠点とする Robber Robber のメンバー、Zack James によるソロプロジェクト Dari Bay が、セカンドアルバム『Surprise Wish』を Double Double Whammy からリリースすることを発表しました。2023年のデビュー作に続く本作は、彼が Unknown Mortal Orchestra への加入や他アーティストのサポートなど多忙を極める中で、自身の人生やプロジェクトの在り方を模索しながら時間をかけて制作されました。過去の実験的なスタイルから一転し、90年代オルタナティブロックやグランジの要素をブレンドした、よりダイレクトで衝動的なロックサウンドへと進化を遂げています。

アルバムからの第2弾シングル「We’re Gonna Be Okay」は、住居の喪失や健康問題といった困難に直面した時期に書かれた楽曲であり、すべてを失いかねない状況の中で、身近なコミュニティやパートナーの存在、そして未来への希望に感謝する切実な想いが込められています。重なり合う歪んだギターレイヤーは、家を焼き尽くしかけた火災の激しさと、危うい瞬間の後に訪れる日の出のような静けさの両面を表現しています。James は「美学よりも根源的な感情を重視した」と語り、宅録ならではの生々しい質感が、親密で飾らない歌詞の説得力を高めています。

本作を通じて James は、インターネットに翻弄される日常や孤立、そして理想と現実のギャップに戸惑う「若年成人期(ヤング・アダルト)」の不安定な境界線をスナップショットのように描き出しています。常に賢くあることを求められる社会への抵抗を込めつつ、朦朧としたベッドルーム・ポップの旋律とパンチの効いたアレンジを交錯させることで、迷いの中に差し込む小さな発見を鮮やかに表現。常に変化し続ける自分自身をありのままに捉えたこのアルバムは、リスナーに対して、霧のような不安を切り裂き、今という瞬間に向き合うことを促すポートレートのような作品となっています。


Viji – “I’ll Make It Easier”

Vijiのシングル『I’ll Make It Easier』は、90年代のオルタナティヴ・ロックへのオマージュを感じさせる、気だるくも中毒性の高いインディー・ポップです。ザラついたギターのリフと、Viji(本名:ヴィッキー・サウスゲート)の透明感がありつつもどこか投げやりなヴォーカルが絶妙に絡み合い、日常の倦怠感や複雑な感情を軽快なメロディの中に落とし込んでいます。

公式ミュージックビデオでは、彼女の独特な美的センスが反映されたDIY的なヴィジュアルが展開され、楽曲が持つレトロで親しみやすい空気感をより際立たせています。シンプルながらも耳に残るフックと、飾らない等身大の歌詞が特徴で、現代のベッドルーム・ポップ・シーンにおいても彼女の個性が光る一曲となっています。


深夜のテープ録音が紡ぐ白昼夢:Oli LiptonのソロプロジェクトTasteがデビュー作で見せる、私的で幻想的なロックの深淵

Now や Cindy のメンバーとして知られる Oli Lipton によるソロプロジェクト Taste が、デビューアルバム『1/2 Fantasy』を 2026年5月29日に Tough Love からリリースします。本作に先駆け、Jordan Pantalone が監督を務めたミュージックビデオも公開されました。エレクトリック・ギターの弦と磁気テープに刻まれた「個人的な執着」をテーマに、アンダーグラウンドの精神を保ちながらも、月を越えるような幻想的な世界観を提示しています。

本作『1/2 Fantasy』は、Oli Lipton が自身のホームスタジオで深夜に及ぶ制作活動を通じて蓄積してきた膨大な録音物から生まれた作品です。過去にセルフリリースされた2本のカセットテープ音源を1枚のLPに集約した構成となっており、実質的なデビュー・フルアルバムと言える内容です。夏のワインや星影を想起させるその響きは、数分間の出来事のようでもあり、あるいは数年も続く夜のようでもある不思議な時間感覚をリスナーに与えます。

アルバムの根底には、日々の習慣や愛情、金銭、そして週末の移ろいといった日常的なトピックが、Les Paul の音色と鋭い筆致、そして皮肉の効いたユーモアと共に綴られています。その佇まいは、清潔感がありながらもどこか不穏な空気を纏っており、職人気質なこだわりを感じさせる Nikki Sudden のようなロックンロールの精神を現代に体現しています。プライベートな空間で練り上げられた、極めて親密で独創的な作品に仕上がっています。


末期資本主義の不条理を射抜くグラスゴーの新星:Gichardが放つDIYな「宇宙的パンク」とデビュー作の全貌

スコットランドのグラスゴーを拠点とする新鋭デュオ Gichard が、デビューアルバム『Chins For Lefty』から先行シングル「Your Private Hell」をリリースしました。本作は末期資本主義の不条理や形骸化した社会的儀式を独自の視点で記録した作品で、ホームスタジオでのテープ録音によるローファイな質感が特徴です。DIY kosmische punk、ドラムマシン、シンセサイザーが織りなすラフで美しいメロディに乗せて、ヴォーカルの Lisa Jones が現代社会の不安を鋭く、時に不条理に描き出しています。

メンバーの Chas Lalli はグラスゴーのアンダーグラウンドで20年以上のキャリアを持つベテランであり、一方の Lisa Jones は詩やスポークン・ワードの世界で活動してきました。前身バンド Dragged Up での共演を経て結成された Gichard では、彼女の歌詞が中心に据えられ、Chas Lalli の多層的なサウンドと融合することで、一つの完結した世界観を構築しています。アルバム全体が一編の小説のように構成されており、現実の経験に根ざしながらも誇張されたキャラクターや設定を通じて、人間関係の亀裂や社会の異様さを浮き彫りにしています。

収録曲には、前夜の出来事を分析するボイスメモのような「Cholesterol Test」や、技術的特異点を皮肉る「Posthumous Hologram」、さらには Dry Cleaning を彷彿とさせる知的なポスト・パンク「Human Resources」など、多彩な楽曲が並びます。Rowland S. Howard のような気だるい音楽性から、スコットランド西部特有のドライなユーモアを交えたデート儀式の解剖まで、彼らが世界にかざす「歪んだ鏡」は、シリアスな考察と同時に抗いがたい滑稽さを放っています。


モントリオールの冬が生んだ実存的なスラッカー・グランジ——内省と爆音のダイナミズムが交差する、knittingの新たな最高傑作

カナダのDIYシーンで活動してきた Mischa Dempsey 率いるバンド knitting が、2026年6月26日にMint Recordsよりセカンドアルバム『Souvenir』をリリースします。2024年のデビュー作『Some Kind of Heaven』で確立した、スラッカー・グランジとベッドルーム・サウンドを融合させたスタイルを継承しつつ、本作ではモントリオールの冬の憂鬱の中で書き上げられた、より内省的で実存的な世界観を展開。メンバーの Sarah Harris がエンジニアリングを指揮し、シンセサイザーや緻密なギターリードを加えることで、これまで以上に洗練された唯一無二のサウンドへと進化を遂げています。

アルバムからの先行シングル「I Want To Remember Everything」は、「すべてを覚えていたい」というタイトル通り、子供時代の自分自身へのラブレターとして書かれました。フロントパーソンの Dempsey は、周囲に馴染むために隠してしまった「風変わりな子供だった自分」の断片と再び繋がろうとする試みを歌っています。かつて家庭のPCで繰り返し見たLinkin Parkのファン制作動画や、1996年の映画『ハリエットのスパイ』といった当時の個人的な原体験が楽曲のインスピレーション源となっており、ノスタルジックながらもエッジの効いた質感を作り出しています。

バンドはこれまでにSXSWへの出演や北米・欧州ツアー、さらには伝説的なポストパンクバンド Preoccupations のサポートを務めるなど、世界各地で着実に支持を広げてきました。Dempsey、Andy Mulcair、Sarah Harris の3名を中心とする現在の体制は、10年にわたるアンダーグラウンドでの活動に裏打ちされた高い成熟度を誇ります。モントリオールの活気あるDIYシーンへの目配せを含んだ本作『Souvenir』は、変わりゆく季節やツアーの合間に紡がれた思索の記録であり、バンドの美学をより強固に提示する重要な一作となるでしょう。


Sulka – “All Bets Off”

スコットランドのグラスゴーを拠点に活動するソングライター兼プロデューサー、Sulkaが新曲「All Bets Off」をリリースしました。7月にリリース予定のニューアルバム『Bute』からのシングルとなる本作は、彼のルーツであるDIYなベッドルーム・ポップやローファイなインディー・フォークの精神を継承した一曲となっています。

この楽曲は、ドラマ『The Sopranos』のエピソードから着想を得た「競走馬」をテーマにした作品です。Sulka自身、「なぜ馬についての曲を書き続けてしまうのか自分でも分からない」と綴りつつも、前作に収録された「Wild Horse」の続編(あるいは前日譚)とも言える内容になっており、グラスゴーのオルタナティブ・シーンらしい独特の作家性が光る仕上がりです。


搾取される日常への静かな抵抗と、沈黙の奥底に眠る調和——some fearが『Word Eater』で到達した、ハイファイな内省のスローコア

オクラホマシティを拠点に活動するスローコア・バンド、some fearが、昨年高い評価を得たセルフタイトルのデビュー作に続くセカンドアルバム『Word Eater』を来月リリースすることを発表しました。バンドの活動初期を象徴したローファイな質感から一歩踏み出し、より緻密で洗練されたハイファイなプロダクションへと進化を遂げた本作は、音の密度を増しながらも彼ららしい内省的な世界観を深化させています。

アルバム発表に合わせて公開された新曲「I Don’t Want To Spend My Money」は、そのタイトル通り現代社会の切実な実感を歌ったダウンビートなナンバーです。フロントマンのBranden “Bran” Palesanoは、この曲について「自分たちの血を吸うヴァンパイアのように肥え太る億万長者や大企業と、給料日を待ちわびて必死に生きる我々との格差」をテーマにしたと語っています。富が偏在する不条理な社会構造への怒りと、「一銭も使わずに家に閉じこもりたい」という切実な心理が、不穏ながらも心地よいサウンドに乗り、聴く者の共感を誘います。

本作『Word Eater』は、内なる独白の掘り起こしを試みており、特に「言葉にできなかったこと」がもたらす肉体的・感情的な代償を丹念に描き出しています。アルバム全体を通じて、大人になる過程で直面する混沌や重苦しい瞬間の中にも、信頼と調和を見出そうとする真摯な姿勢が貫かれています。不条理な社会への冷徹な視線と、個人的な内面への深い洞察が交錯する、彼らにとって極めて重要なステップとなる一作です。


30年の時を越えて鳴り響く、不屈の『ラヴ・ロック』精神——オリンピアの先駆者Some Velvet Sidewalkが、DIYの聖地K Recordsから放つ奇跡の再始動

ワシントン州オリンピアのDIYシーンを牽引し、Beat Happeningと共に「ラヴ・ロック(Love-rock)」ムーブメントを築いたSome Velvet Sidewalkが、約30年ぶりとなる復活を果たしました。中心人物のAl Larsenと長年のドラマーDon Blairが再集結し、数人のベーシストの助けを借りて制作された29年ぶりのニューアルバム『Critters Encore』は、6月26日に名門K Recordsよりリリースされます。かつてカート・コバーンもファンを公言し、Tobi Vail(Bikini Kill)も在籍した彼らの帰還は、インディー・シーンにとって記念碑的な出来事です。

先行シングル「Don’t Fuck With Your Luck」は、彼らの代名詞であるルーズで粗削りなDIY精神が今なお健在であることを証明しています。「容赦なき素朴さを備えたポップ・マシン」と評される彼らのサウンドは、ローファイ、ノイズ・ポップ、パンクが混ざり合い、忘却の淵で震えるギターと一度聴いたら耳を離れない幽玄な歌声が特徴です。新作はオリンピアとバーモントを跨ぐ再結成ツアーの合間にレコーディングされ、10曲入りの33回転レコードとして、当時の情熱と現代の感性が交錯する音像を提示しています。

本作のテーマは、郊外に息づくウサギやカラス、リスといった生き物たちとの「種を超えたつながり」にあります。マーシャル・マクルーハンの思想がロイ・オービソンのバイクに相乗りしたような知性と情熱が同居し、焦燥感に満ちたカタルシスの中にも、しっかりと地に足のついた感覚を失っていません。長年シーンに多大な影響を与えてきた彼らが、現代の複雑な社会において再び「ラヴ・ロック」革命を掲げ、ミニマリズムの美学をもって新たな物語を綴り始めました。


K Records傘下から放たれる、アニメーション的色彩と極上ジャングル・ポップの融合——Madeline BBがSlippersで描き出す、現代のポップ・マスターピース

Yucky DusterやBeverly、Le Painといったバンドでドラマーとして活躍してきたMadeline Babuka Blackが、ソロプロジェクトSlippersとして待望のニューアルバム『Slippers 08』をperennialdeath/K Recordsから6月5日にリリースすることを発表しました。本作は彼女がすべての楽器を自ら演奏し、Fred Thomas(Saturday Looks Good to Me)がミックスとマスタリングを担当。Mike Krollが手がけたアートワークとともに、彼女のマルチな才能が凝縮された一枚となっています。

先行シングル「Wants For Everyone」は、ジャジーなコード進行と「ウーーー」という心地よいコーラスが印象的な、初期カーディガンズを彷彿とさせる極上のポップ・ソングです。16mmフィルムで撮影されたミュージックビデオからも伝わるそのサウンドは、「ビートルズをスプレー缶とロウ石で描き出したような」粗削りながらも温かみのある質感を持っています。カレン・カーペンターの再来とも評される彼女の歌声は、一度聴けば口ずさんでしまうほどの中毒性に満ちており、純粋なポップ・ミュージックの力強さを体現しています。

ロサンゼルスを拠点とするMadelineの音楽的感性は、もう一つの情熱である「アニメーション」と深く結びついています。アトランタで育った幼少期からアニメと音楽を愛し、名門カリフォルニア芸術大学(CalArts)の大学院でアニメーションを学んでいた時期にSlippersの活動を本格化させました。ドラマーとしての確かなリズム感と、アニメーターとしての視覚的な想像力が融合した本作は、33回転のレコードに刻まれた11曲の鮮やかな物語として、聴く者の日常を彩ることでしょう。

Veps – “If I Was A Mother”

オスロを拠点に活動するインディー・ロック・グループ Vepsが、名門レーベル PNKSLM からニューアルバムをリリースすることを発表しました。現時点ではアルバムの詳細こそ伏せられているものの、その先駆けとして非常にキャッチーな新曲が公開されています。

2021年のデビュー以来、北欧らしい瑞々しい感性と 90年代オルタナの影響を感じさせるサウンドで注目を集めてきた彼女たち。今回シェアされたシングルは、来るべき新作への期待を大いに高める仕上がりとなっており、バンドの更なる進化を予感させるものとなっています。

1 2 3 118