The Red Krayolaを率いる鬼才Mayo Thompson、実に56年ぶりのソロアルバム『Quiet Days in Cliché』をDrag Cityからリリース、スマートフォンで録音した初の完全ソロギター作から新曲「K-Pook」を公開

The Red Krayolaのリーダーであり、アヴァンギャルド/サイケデリック・ロックの巨匠 Mayo Thompsonが、新曲「K-Pook」の解禁とともに、実に56年ぶりとなるソロアルバム『Quiet Days in Cliché』を12月4日にDrag Cityよりリリースすることを発表しました。スマートフォンで録音されたという本作は、彼にとって初となる完全なソロギター・アルバムであり、空間に糸を紡ぎながら新たな可能性を探るようなアコースティック・即興演奏のコレクションとなっています。本人いわく「自分へのメモ書きや爪弾き」に過ぎないとのことですが、レーベルの粘り強い説得によってついに日の目を見ることとなった期待の新作です。

Mayo Thompsonは1966年にヒューストンで結成されたThe Red Krayolaの創設者として知られ、Roky Ericksonが参加した1967年の名盤『The Parable of Arable Land』や、時代を先取りしすぎたあまり当時は発売拒否された『Coconut Hotel』など、ラディカルで自由な表現で後世の音楽シーンに大きな影響を与えてきました。1960年代末のバンド解散後はイギリスへ渡り、The Red Krayolaの名義を復活させるとともに、Rough TradeのGeoff Travisらと協働し、The FallやThe Raincoats、Stiff Little Fingersなどの名作プロデュースを手掛けるなど、ポストパンク期にも多大な功績を残しています。

1970年にリリースされた伝説的な初ソロ作『Corky’s Debt to His Father』から半世紀以上の時を経て届いた先行シングル「K-Pook」は、まさにその「自分への覚書」の第一弾となる楽曲です。長年のキャリアを経て削ぎ落とされた知性と奇想、そして気負いのないアコースティック・ギターの響きが交錯し、伝説のプロデューサー/ミュージシャンによる極めてプライベートで味わい深い音世界を提示しています。


Ryley Walker – “Carrier”

ギタリスト/シンガーソングライターのRyley Walkerが、新レーベルAD 93への移籍第1弾となるソロシングル「Carrier」をリリースしました。エレクトロニック・バンドGift Horseへの参加発表に続いて解禁された本作は、スマホに残されていた失敗作のギターデモのループをピッチダウンし、Max/MSPやPPOOLLといったソフトでデジタルディストーションを施して「リビルト(再構築)」した実験的なトラックです。ニューヨークでのサービス業のシフトを終え、極度の疲労のなか自室で煙草を吸いながら生み出されたというサウンドは、ノイズや歪みが渦巻く重厚で荒々しい音像に仕上がっています。

本人は制作の背景として、故郷イリノイ州ロックフォードの刺激的な風景や、Loren Connors、Kevin Drumm、Caspar Brötzmannといった前衛ギタリスト/ノイズ・ミュージシャンたちの名を挙げています。狂暴でソリッドな音像でありながらも、彼にとっては非常に素直で心地よい楽曲制作のプロセスであったと語られています。Kendra Calhounが監督を務めたミュージックビデオも公開されており、彼のキャリアにおける新たなアプローチと深い実験性を提示する作品となっています。


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ガザ虐殺への抗議 encampment から生まれた連帯と哀悼のシンフォニー——Bilal Nasserがクラシック・ギターとポストロックを融合させ問いかける芸術の真価

パレスチナ系カナダ人のギタリストであり活動家でもあるBilal Nasserが、モントリオールを拠点とする名門レーベルConstellationからのデビュー・アルバム『Every Martyr Is A Universe』を発表しました。ガザでのジェノサイドに対する学生抗議運動の最中に構想された本作は、過酷な情勢下における芸術の意義と価値を問う切実なメッセージを内包しています。主にオンタリオ州ウィンザーのDIYスペース「Uma Loft」で録音され、9名のミュージシャンを迎えたアンサンブル編成によって、クラシック・ギターの背景とパンク、ポストロック、現代音楽の要素を融合させた、連帯と哀悼のダイナミックなオーケストレーションが構築されています。

アルバムのSide Bに収録されたシングル「Who We Used To Be」は、Nasserのこれまでのソロ活動における繊細なアプローチとソングライティング能力が遺憾なく発揮された楽曲です。Nasserの見事なまでに美しく繊細な歌声とフィンガーピッキング・ギターを軸に、ストリングス、ホーン、ピアノ、エレクトロニクスが波のように寄せては返す、オーガニックで細やかな質感に満ちたアレンジメントが施されています。不吉なドローンと著名なパレスチナ人作家Ghassan Kanafaniの音声アーカイブを対比させた前曲から一転し、感情の深みへと誘う美しさが際立っています。

アルバム『Every Martyr Is A Universe』全体は、ポストロックとポストクラシカルが交錯する大曲を配した前半から、Nasserの歌声と緻密な室内楽的アプローチが光る後半へとドラマチックに展開します。Thee Silver Mt. ZionやDo Make Say Think、EsmerineといったConstellationの美学や政治的ステートメントを継承しつつ、パンク由来の主張の強さと前衛的な作曲アプローチ、そして剥き出しの情緒が見事に結実した至高の一作となっています。

Cole Berliner – “Window Leans Left”

Drag City より2026年5月29日にリリースされた Cole Berliner のアルバム『The Black Door』から、収録曲「Window Leans Left」のミュージックビデオが公開されました。本映像は Cole Berliner 自身が映像制作を手掛けたセルフプロデュース作品となっており、アルバムが持つ独特の空気感と世界観が視覚的にも色濃く反映された仕上がりです。

楽曲が持つ繊細で実験的なアコースティック/インストゥルメンタル・サウンドと見事に共鳴する映像は、楽曲の静けさと内省的な雰囲気をより際立たせています。アーティスト自らの手によって生み出された映像表現だからこそ、アルバム『The Black Door』の持つ深遠でパーソナルな魅力とストーリー性をストレートに堪能できる作品となっています。

2本のギターが紡ぐ水流のような音の対話――Meg Duffy と Gregory Uhlmann が詩人 Adrienne Rich の思想を結実させた2ndアルバム『Hot Creek』をリリース、先行曲「Public Life」も公開

Meg Duffy(Hand Habits としてソロでも活動)と Gregory Uhlmann によるロサンゼルス拠点のギターデュオ Duffy x Uhlmann が、8月14日に Orindal Records より2ndアルバム『Hot Creek』をリリースすることを発表しました。先行シングル「Public Life」の公開にあわせて、Christina Huang が監督を務めたビジュアライザーも披露されています。

新曲「Public Life」は、「見る・見られる」ことの関係性をテーマにした、緩やかでメランコリックな楽曲です。静かな表面の下に流れるアンダーカレント(伏流水)の存在を漂わせる繊細なトーンが特徴で、作品が持つ静かな深みと密やかな感情を美しく映し出しています。

2023年のデビュー作『Doubles』に続く本作『Hot Creek』は、詩人 Adrienne Rich の「共通言語の夢」という概念に着想を得ています。前作の無骨で都市的なサウンドスケープから一転し、カリフォルニア州モノ郡の地熱温泉「ホット・クリーク」にちなんで命名された本作では、2本のギターによる即興演奏を通して水流のような変幻自在のメロディを構築し、自然界の広がりと無常観を描き出しています。

ニューヨークのアンダーグラウンドを何十年も巡り、あえて表舞台を避けてきた音楽の旅人Lynn Wrightが、激動のキャリアの果てに辿り着いた待望のソロデビュー作

ギタリストであり音楽の探求者でもあるLynn Wrightのソロデビューアルバム『Before The Sinking Plains』、そしてそこに収録されているシングル「El Cabanyal」は、彼が長年ニューヨークなどのアンダーグラウンド・シーンの周辺で培ってきたキャリアの集大成です。長らく自身の固定された芸術的アイデンティティを持たず、コラボレーションや裏方としての活動を好んできたライトですが、近年の大病をきっかけに自身のソロ作品と向き合うことになりました。アルバムのミックスは、ベルリン移住後に親交を深めた作曲家のサイモン・ゴフ(Simon Goff)が手掛けており、ライトが持つ深い音楽的背景が惜しみなく注ぎ込まれています。

このアルバム、そしてシングル「El Cabanyal」の原点は、ライトが神経系の長い闘病生活を送っていた時期にあります。彼が毎朝アパートで作り、背景で静かに流していたギターのループがすべての始まりでした。その中から気に入ったものを録音し、加工したギター、シンセサイザー、そして言葉を持たないヴォーカル(ハミングやスキャットのような歌声)を幾重にもレイヤーとして重ね合わせることで、徐々に明確な楽曲としての構造が形作られていきました。かつて彼が関わってきた激しいバンドや即興プロジェクトのような攻撃性は影を潜め、心地よくもどこか影のあるダークな色彩が美しく残されています。

ライト自身が「曲の形をしたアンビエント、あるいはアンビエントに変装した曲」と評するように、シングル「El Cabanyal」を含む本作は、内省的で壮大な音響世界を描き出しています。色あせたドリーム・ポップや重厚なドローン、静けさを纏ったノワール・フォーク、そしてミニマルなヴォーカル・コンポジションといった要素が緻密に溶け合い、まるで「空と広大な荒野が混ざり合っていく景色」を眺めているかのような、圧倒的な美しさと没入感をもたらす至高の作品となっています。


「アメリカン・プリミティブ」の枠を超えて——Sir Richard Bishopが即興の6弦で描き出す、テネシーの血脈と異教的叙事詩

Sir Richard BishopがDrag Cityより新作『Hillbilly Erotica』をリリースします。本作は前作『Hillbilly Ragas』の続編とも言える位置付けで、全8曲のうち7曲が完全即興のアコースティック・ギター1本による演奏です。John Faheyの「アメリカン・プリミティブ」というレッテルに対する彼なりの回答を、さらに一歩進めた内容となっています。

先行シングル「Finger, Tennessee」は、Bishopの父親の故郷に近い実在の地名から名付けられました。楽曲はアンセムのような清廉さと、指板を縦横無尽に駆け巡る奔放さを併せ持っており、自ら撮影した風景映像とともに、精神の変革を促すような音楽体験を提示しています。

前作の攻撃性を継承しつつも、Bishopは今作を「夜明けが近づき、遠くに丘や谷が見えるような少し異なる音の風景」と表現しています。束の間の安堵感はありつつも、常に闇が隣り合わせにあるような緊張感が漂っており、甘美さと危うさが同居する独創的な世界観が展開されています。


運命的な出会いから、わずか48時間で完成。Jared Mattson(TM2)とRuban Nielson(UMO)がパームスプリングスの熱気の中で「発掘」した、必然の音楽。

The Mattson 2のJared MattsonとUnknown Mortal OrchestraのRuban Nielsonが、初の共同アルバム『FEAR』のリリースを発表し、先行シングル「AMERICAN EAGLE」を公開しました。長年互いの音楽性を敬愛していた二人は、2024年6月にパームスプリングスで初めて対面。最初の即興セッションを録音したところ、わずか2日間でアルバムを構成する全7曲が完成するという、驚異的なスピードで本作は形作られました。

制作過程は、作為的な作曲というよりも、そこに隠されていた音楽を「発掘」するような必然性に満ちていたといいます。シングル「AMERICAN EAGLE」のタイトルは、夕暮れの湖畔のイメージから連想され、ホットドッグやコーラといった「アメリカン・ドリーム」の記号に対するユーモアと、反論の余地のない明快さを持って名付けられました。二人はプールの傍らで絶え間なく対話を続け、その豊かで軽やかな流れをそのままテープに刻み込みました。

本作が描き出すのは、古いモーテルの点滅するサインや、夕暮れの放棄されたガソリンスタンド、ナトリウムランプに照らされた広大な駐車場といった「中間の場所」の風景です。快適さではなく移動のために作られた、孤独で匿名的な空間に寄り添う音楽を目指したとMattsonは語ります。静寂の中にかすかな危険の予兆を孕みつつ、寂しさを癒そうとするのではなく、ただその孤独の隣に佇むような、穏やかでいて研ぎ澄まされた美しさが漂う一作です。

「これと同じ響きのものを、もっと作ろう」という直感に従い、たった2日で駆け抜けた創造の熱量が、パームスプリングスの乾いた空気感とともに伝わってくるエピソードですね。

名門 Drag City が見出した異才、Cole Berliner——Bert Jansch や Jim O’Rourke の系譜を継ぐソロデビュー作『The Black Door』が切り拓く、2026年型アメリカン・プリミティブの新地平

Kamikaze Palm TreeやSharpie Smileでの活動で知られるCole Berlinerが、名門 Drag City と契約し、ソロデビューアルバム『The Black Door』を2026年5月29日にリリースします。あわせて公開されたタイトル曲「The Black Door」は、Fred Josephが手掛けたミュージックビデオと共に、記憶の甘美さと暗さを歴史的な文脈で描いた、パーソナルかつ普遍的なインストゥルメンタル・フォークに仕上がっています。

当初はソロのアコースティック・ギター曲として構想された本作ですが、制作過程でフルアンサンブルのダイナミクスを求めるようになり、多彩なゲスト陣が参加する重層的なアレンジへと進化しました。Laena Myers(ヴァイオリン)や Dylan Hadley(ドラム)らと共に、カントリー、ブルース、アンビエント、そしてフォークを融合。ピアノ、ホーン、シンセサイザーまでを飲み込み、豊かな粒子感を持つ「2026年型のモダンな西海岸フォーク」を形作っています。

Cole Berliner自身が「アメリカ(およびプロト・アメリカ!)のフォークやスウィングの神秘的な響き」と語る本作は、Bert JanschやJim O’Rourkeといった先人たちの系譜を継ぐ、挑戦的で優雅なアコースティック・パズルです。共同プロデューサーに Cesar Maria を迎え、スピーカーの中で有機的に成長していくようなインストゥルメンタル・パーラー・ミュージックの新たな地平を切り拓いています。


Wendy Eisenberg – “Vanity Paradox”

マルチな才能を発揮する音楽家Wendy Eisenbergが、シンガーソングライターとしての側面を打ち出したセルフタイトルアルバムをリリースします。EditrixやBill Orcutt Guitar Quartetでの先鋭的な活動とは一線を画し、新作からのシングル「Vanity Paradox」では、独創的で遊び心あふれるメロディと、インディーギターに突き刺さるようなバイオリンの音色が融合した魅力的なサウンドを展開しています。本人はこの曲について、友人から「良い人だと思われたい」という欲求や、トラウマからの回復過程で自分自身を客観視できなくなる「不安の感覚」を解読しようとしたものだと語っています。

楽曲の世界観を補完するミュージックビデオはRuby Marsが監督を務め、アトランティックシティの伝説的建造物「ルーシー・ザ・エレファント(象の形をした巨大な家)」で撮影されました。エッフェル塔や自由の女神よりも長い歴史を持ち、数々の嵐を耐え抜いてきたこの象の巨像は、背後で Wendyを見守る守護者のようでもあり、同時に独特の威圧感を放つ異質な存在としても描かれています。自己への好奇心が皮肉にも自分を不明瞭にしてしまうという「虚栄のパラドックス」を、映像と音楽の両面から鮮烈に映し出した作品です。

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