伝説のフォーク巨匠 Michael Chapmanを指針に。Finkが最新作で体現する、年齢を重ねても枯れない『終わらぬ放浪癖』

イギリスのフォーク・トリオ Fink が、通算9枚目となるニューアルバム『The City Is Coming to Erase It All』の詳細を発表し、リードシングル「Memorise Your Senses」を公開しました。2024年の前作『Beauty In Your Wake』に続く本作は、フロントマンの Fin Greenall が拠点とするコーンウォールの風景から深い着想を得ています。7分間に及ぶ先行曲「Memorise Your Senses」は、都会の喧騒へ戻る前に心象風景を焼き付ける瞬間や、社会生活で被る「仮面」、そしてキャリアという果てなき欲望への葛藤を内省的に描いています。

本作は、1970年の Michael Chapman によるカルト的名盤『Fully Qualified Survivor』を指針に制作されました。アルバムの幕開けを飾る「Wishing For Blue Sky」は、ブリストルの郊外で世界へ飛び出す日を待ちわびていた若き日の渇望から生まれた楽曲です。かつてバックパッカーや路上演奏でヨーロッパを渡り歩いたメンバーたちの実体験が、オープンチューニングのアコースティックギターが奏でる瑞々しいサウンドの基盤となっています。

アルバム全体を通じて表現されているのは、単なるノスタルジーではなく、成熟した大人となった今も消えない「終わることのない放浪癖(ワンダーラスト)」です。彼らは、1974年当時の名盤のような「一つの物語としてのアルバム形式」を追求しており、冒頭の挨拶からインストゥルメンタルの終幕まで、好奇心を持ち続けるリスナーを旅へと誘います。家庭という安らぎの中にありながら、なお未知の世界を再発見しようとする、止まない情熱と飢えが凝縮された一作です。