生活の中に咲く愛と、失われることを恐れない変化の記録——Widowspeakが16年の歳月を経て辿り着いた、最もロマンチックで最もリアルな第7作

ニューヨークを拠点に活動するWidowspeakが、2022年の『The Jacket』以来となる通算7枚目のアルバム『Roses』を6月にリリースすることを発表しました。先行シングル「If You Change」では、何かが壊れることを恐れて「新品同様の状態(ミント・コンディション)」のまま維持しようとする心理と、実際に使われ愛されることで初めて「本物」になるという対照的な概念が描かれています。本作は冬のギリシャ・イドラ島にある古いカーペット工場で、長年のツアーメンバーと共にレコーディングされました。

16年にわたるキャリアを経て、中心人物のMolly HamiltonとRobert Earl Thomasは現在、夫婦として生活を共にしています。彼らは音楽活動の傍ら、ウェイトレスや大工としての日常を営んでおり、その「働く人々」としての視点が本作に深いリアリズムを与えています。アルバムでは、接客の合間の小さな観察や繰り返される日々の営みが、ロマンチックな愛の情景と交錯するように描かれています。劇的な展開よりも、日常の細部にある美しさや痛みに光を当てることで、Widowspeak特有のノアールで豊潤な世界観が表現されています。

サウンド面では、ドリーム・ポップや気だるいバラードに、The Rolling StonesやNeil Youngを彷彿とさせる普遍的なロックの影響が溶け込んでいます。Mollyの質感豊かな歌声とRobertの本能的なギタープレイの相互作用は、プロデューサーも務めるRobertの手によって、スタジオでの儚い魔法をそのまま封じ込めたような生々しさを保っています。強く握りしめれば溶けてしまうキャンディのように、壊れやすく一時的なものだからこそ価値がある——そんな「愛」そのもののようなリアリティが、この11作目の完成度を象徴しています。