「ASC F9」は、M.J.H. ThompsonがVolksorkestと共に作り上げた、素朴で温かみのあるローファイ・インディフォークな一曲です。洗練されたスタジオ録音というよりも、宅録(ホームレコーディング)特有の質感や、カセットテープを介したようなノイズ混じりの音像が特徴的です。アコースティックギターの柔らかな音色に、ささやくようなボーカルが重なり、聴き手に対して個人的な手紙を読み上げているような、親密で内省的な空間を作り出しています。
この楽曲の魅力は、完璧に整えられていない「不完全な美しさ」にあります。フォークソングの伝統的な構成を守りつつも、背後で鳴る微かな環境音や、意図的な音の歪みが楽曲に独特の奥行きを与えています。派手な装飾を削ぎ落としたミニマルな編成は、Volksorkestが持つ職人的なアレンジメントの賜物であり、日常のふとした静寂に寄り添うような、心地よい哀愁を感じさせるシングルに仕上がっています。
