緻密な設計図を微風にさらし、偶然性の色彩で塗り替える——Kreidlerが『Schemes』で到達した、執着を手放した先の多幸感

緻密な設計図を微風にさらし、偶然性の色彩で塗り替える——Kreidlerが『Schemes』で到達した、執着を手放した先の多幸感

ベルリンとデュッセルドルフを拠点に長年活動を続けるトリオKreidlerが、Bureau Bからの9作目となるニューアルバム『Schemes』を5月にリリースします。本作では彼らの代名詞であるリズミカルなグルーヴを維持しつつ、より軽やかで推進力を抑えたアンビエントな音響空間へとシフト。先行シングル「Marble Upset」の抽象的で脈打つようなサウンドが示す通り、緻密な設計図(スキーム)をあえて解きほぐし、偶然性や遊び心に満ちた実験的なアプローチが全編を貫いています。

今作の大きな特徴は、自然音や屋外でのフィールドレコーディングを大胆に取り入れている点です。ベルリンのandereBaustelleで行われた録音セッションでは、スタジオ内にあった巨大なスチール製のオイルタンクを楽器として使用するなど、その場の衝動を形にする即興性が重視されました。ゲストにブエノスアイレスの旧友Leo Garciaを迎えた楽曲でも、都市の喧騒の中で録音されたフィールドレコーディングを基盤に多幸感溢れるメロディが構築されており、精緻なエレクトロニクスと予測不能な現実の音が鮮やかに融合しています。

全編を通して、楽曲はまるで一本の糸に吊るされたビーズのように、それぞれが独立した世界を持ちながらも緩やかに繋がっています。ファンキーなシンセが躍る「Beads」から、夏の雪片のようにメロディが重なる「Snowflakes」、そしてセミの鳴き声が夜の静寂を彩る終盤の「Tar」まで、音楽は常に多方向へと揺れ動いています。構造の「折り畳みと展開」の中に喜びを見出した本作は、ストイックな静止を拒み、知的なユーモアと寛容さを備えた現代のアンビエント・ポップとして結実しました。