El Ten Eleven、結成23年目の深化。加速する時代の不安を射抜く新作『Nowhere Faster』を発表。新曲「Uncanny Valley Girl」で描くAI時代のパラノイア。

El Ten Eleven、結成23年目の深化。加速する時代の不安を射抜く新作『Nowhere Faster』を発表。新曲「Uncanny Valley Girl」で描くAI時代のパラノイア。

LA発のポストロック・デュオEl Ten Elevenが、通算16枚目のアルバム『Nowhere Faster』をリリースします。23年のキャリアで最も長い活動休止期間(実際には制作に没頭していた期間)を経て生まれた本作は、目的地不明のまま加速し続ける現代の「速度」への違和感や、人生の不条理な集積をテーマに据えています。今回初めて本物のストリングスやピアノを導入し、これまで以上に重層的で深みのあるサウンドパレットを展開しています。

先行シングル「Uncanny Valley Girl」は、AI時代のパラノイアを冷徹に見つめた楽曲です。長年封印していたディレイ・ペダルを復活させ、濃密なベースの壁を築き上げる一方で、Tim FogartyのタイトなドラムがSF的な不安感に確かな輪郭を与えています。また、アルバムの前半(サイドA)をエレキベース、後半(サイドB)をペダル加工したアコースティックベースで構成するなど、楽器の質感を通じて感情の重みを変化させる実験的な試みもなされています。

アルバムの終盤では、カート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5』から着想を得た「So It Goes」などが収録され、加齢や喪失、有限な人生への向き合い方が描かれています。フレットレス・ベースにカポタストを巻くといった奇妙な音響実験を経て辿り着いたアメリカーナ風の哀歌は、加速を止めた瞬間に訪れる内省の時間を象徴しています。足元の地面が揺らぎ始めたとき、何を聴き、何に合わせて踊るのかを問いかける、彼らの集大成とも言える一作です。