Top 50 Albums of 2025

Top 50 Albums of 2025

情報の奔流が加速し、効率や最適化ばかりが語られる時代。その片隅で、あるいはその中心で、自らの脆さを抱えたまま「本当の響き」を鳴らし続けようとする者たちがいた。

2025年、私たちの耳に届いたのは、単なる消費のための娯楽ではない。それは、個人的な喪失から立ち上がる静かな祈りであり、社会の歪みを鮮やかに射抜く鋭い宣言であり、あるいは、肉体と機械が溶け合う地点で見つけた未知の喜びの記録だ。

沈黙と轟音のあいだを行き来し、不完全さを抱えたまま未来を切り拓こうとする表現。それらは時に孤独に寄り添い、時に祝祭のような高揚をもたらし、停滞した日常の景色を幾度となく塗り替えてくれた。

ここに記す50の作品は、混迷を極める現代を生き抜くための、切実で美しい精神の軌跡である。一つの物語が終わる場所で、また新しい響きが息づき始める。2025年という時間を確かに震わせた、進化と深化のアーカイブがここに。


50. Roomer – Leaving It All To Chance

4つの個性がゆるやかに交差し、ノイズと旋律が寄り添うようにせめぎ合うギター・ミュージック。DIY精神と身体的な生々しさを土台に、即興からアンビエントまでを自由に行き来する感性が、鮮やかな形で響き合う。内省的な独白は丁寧に組み立てられた音響の中で静かに形を結び、ミニマルな反復や轟音の高まりが、揺れ動く感情に穏やかな刺激を与えた。静寂とざわめきのあわいで、偶然のような瞬間が必然へと変わり、新しい表現の地平がやわらかく開く。脆さと強さが同居する、その自然な結実が心に深く残った。


49. fib – Heavy Lifting

偶然が連なって生まれる音の流れが、ふだんの意識に入り込み、世界の見え方を静かに塗り替える。不規則なノイズやざらついた叙情は、予測できないリズムと寄り添いながら、聴く人の感覚にやわらかな揺さぶりを与えた。火花のように交わる楽器のやりとりと、静かに漂う旋律が危うい均衡を保ち、轟音と郷愁の対比が深い没入感を生み出す。緻密に編まれた混沌は、壊れてはまた形を変えて立ち上がり、名前のつかない感情の輪郭を浮かび上がらせた。不確かな記憶をたどるような、濃密で一度触れたら戻れないような音の体験が静かに広がる。。


48.Runnner – A Welcome Kind of Weakness

身体と生活が同時に揺らぐ極限の状況から生まれた本作は、逃れられない痛みと静かに向き合うことで形づくられた。これまでの親密な宅録スタイルから一歩踏み出し、より鮮明で力強いスタジオ音響へと進化を遂げる。歌詞は曖昧さを手放し、感情の細部を丁寧に刻みながら、無力さの受容から生まれる決意をやわらかく響かせる。制御しきれない現実と自己の意志の間で揺れ動きつつ、弱さを認めることで見えてくる静かな強さと、新たな表現の地平を穏やかに提示した。


47. The Beths – Straight Line Was A Lie

現代のギター・ポップを支える4人組が、新たな章へと静かに歩みを進める。緻密に紡がれた旋律と、明るさと切なさが寄り添うアンサンブルは、すでに確固たる評価を築き上げたものだ。大きなステージを巡る中で磨かれた表現力は、本作でさらなる深みと熱を帯び、自然な輝きを放つ。親しみやすさと音楽的な鋭さをやわらかく両立させ、歩みを止めることなく進化を続けるその音は、今まさに注目すべき存在として静かに存在感を広げた。


46. Florry – Sounds Like…

共同体の絆とDIY精神を土台に、伝統的なロックの躍動感を現代的な感性でゆるやかに更新する。洗練されたスタジオでの短い録音期間には、仲間としての身体性やその場で生まれる熱量が鮮やかに刻み込まれた。緻密さと少しの過剰さが寄り添うように混ざり合う独白は、不安定な日常の中で解放を求める人々の心に静かに響く。崩れそうで崩れない危うさを抱えながら走り抜けるその音は、懐かしさに寄りかかることなく、今という瞬間に宿る喜びと自由をやわらかく照らし出した。


45. quickly, quickly – I Heard That Noise

甘美な旋律と少しざらついたノイズが寄り添い、記憶や感情を揺らす独自の音の風景が広がる。フォークの素朴さと丁寧に組み立てられた音響が交わり、静かな空間にふいに差し込む不協和音が、聴く人の意識にやわらかな揺らぎをもたらした。日常の細やかな気配や幼い頃の記憶を中心に据えながら、伝統的な楽曲の形をゆるやかにほどき、自由な実験精神で再構築する。親密さと広がり、安らぎと小さな衝撃。その対照が重なり合うことで、言葉にしづらい感情の輪郭が静かに浮かび上がった。


44. TOPS – Bury the Key

洗練された旋律と静かな洞察が寄り添い、ポップスという枠組みをやさしく広げる。親しみやすい響きの奥には、ささやかな快楽や自己との葛藤、どこか遠い終末の気配が潜み、甘さと鋭さが自然に同居する独自の音の世界を構築した。長い年月をともに歩む中で生まれた強い結びつきは、実験的なリズムや内省的な音の表現へと穏やかに進化し、音楽に深い呼吸を与える。光と影、喜びと痛みが交わる中で、成熟したまなざしが現代を生きる複雑な感情の輪郭をやわらかく描き出し、聴く人の心に静かに染み渡った。


43. james K – Friend

霧がゆっくりと漂うような曖昧な現実の中で、ほのかな憂いと静かな喜びが重なり合い、傷ついた心に寄り添う穏やかな時間が紡がれる。天上の響きを思わせる歌声は、日々の混乱をやわらかく包み込み、痛みや喪失を互いを癒やす力へと変えた。微細なノイズや逆再生の残響が、触れられそうな質感や淡い色彩をまとった幻想的な音の景色を形づくる。静かな対話のように進むその世界の中で、不確かな記憶のあわいに小さな愛や生の手がかりが見つかり、深い場所に光が差し込むような濃密な体験が広がった。


42. Gelli Haha – Switcheroo

狂乱のダンスフロアと未知の領域がふと重なり合う場所で、その表現者は宇宙のような広がりと、どこか愛おしい日常の滑稽さを同時にまとった。既存の枠組みにとらわれない自由な感性は、純粋でのびやかな創造の混沌を呼び寄せる。緻密さをあえて手放し、不完全で少し奇妙な質感をそのまま受け入れる音の実験場。遊び心に満ちた衝動は、無邪気な光と地下室のようなざらつき、そして歓喜と小さな恐れのあいだをゆるやかに行き来した。洗練だけを目指さない姿勢の先に立ち上がるのは、圧倒的でありながらどこか親しみのある、やわらかな混沌のスペクタクルだ。


41. No Joy – Bugland

二人の表現者が人里離れた場所で静かに響き合い、境界のない創造性をのびやかに解き放った成果。その音は、どこか懐かしい時代の色合いと、自然の息づかいを記録したような感触が同居する体験となって広がる。互いの感性を自由に委ね合い、決まった枠にとらわれることなく形づくられた音の連なりは、果てしなく続く道を歩きながらの思索を映し出し、洗練された静けさと小さな混沌のあいだをゆるやかに行き来した。馴染みある質感に触れつつも、既存の分類に収まらないその響きは、緻密な美学と少し未来的な感性が自然に溶け合った、静かな進化の証のように感じられる。


40. Just Mustard – WE WERE JUST HERE

沈んだ影の世界から抜け出し、光と多幸感へ向かって開けるような変化が描かれる。歪んだ弦の響きや深く沈む低音といった独自の核はそのままに、騒がしさはこれまでにない温かさとやわらかな旋律をまとって再び形づくられた。身体的な喜びと瞬間のきらめきを追い求める音の中で、歌声は葛藤を抱えながらも軽やかに舞い上がる。緻密で少し不思議な質感は変わらず息づきつつ、感情の色合いはより鮮やかに塗り替えられた。即興的でありながらどこか夢のようで、そしてどこか弾むような喜びに満ちた、色彩豊かな世界が静かに立ち上がる。


39. Cate Le Bon – Michelangelo Dying

純粋な感情の流れに導かれ、当初の枠を越えて形づくられた記録。痛みを抱えた心の傷を、閉じてしまう前にすくい上げようとする行為は、どこか静かな儀式のような趣を帯びる。機械的な響きの中に宿る鼓動はやわらかく広がり、加工された楽器の音色が淡い光沢をまとって重なり合う。断片が連なり、ゆっくりと姿を変える鏡のような構成は、秩序や結論を求めるものではなく、揺れ続ける混沌と、抗わずに生を受け入れる感覚を映し出した。孤独と愛のあわいをさまよいながら、最後には静かに自分自身と向き合うための、深く内省的な対話の場が広がる。

38. Teethe – Magic Of The Sale

緩やかなつながりの中から育まれた創造的な共同体が、時間をかけて洗練と深まりを重ね、静かな地平へとたどり着く。自宅録音ならではの親密さを中心に据えつつ、重なり合う音響や合唱がゆるやかに溶け合い、揺らぐ世界の中で自分がどう在るのかを問いかけた。夕暮れの荒野を思わせる孤独と美しさが寄り添い、ゆっくりと刻まれるリズムが、胸の奥に沈む憂いをやさしく包み込む。依存と自立、絶望と希望のあわいを漂うその響きは、不確かな未来への不安を抱えながらも、誰かと共に歩もうとする静かな意志を秘めた。


37. Fust – Big Ugly

太古から続く物語の流れが、風景や人々の美しさと悩みを映し出す。ほどけたバラッドのかけらと、夢見心地の幻想が重なり、身近な日常と不思議な気配がゆるやかに混ざり合った。記憶の断片や見慣れた街並みは静かな神秘を帯び、停滞した共同体の中でも、人々は寄り添うように支え合う。土着的な響きと夢のような言葉が織り上げるその世界は、喪失と再生の静かな記録でもある。未来がかすむ場所で、不確かな希望と小さな諦めを抱えながら、土地とともに生きる魂の声がやわらかく刻まれた。


36. Hannah Frances – Nested in Tangles

複雑に重なり合う記憶と、静かに芽生える変化への意志が寄り添うように流れる物語。家族とのすれ違いや心に残った傷を、丁寧でしなやかな旋律と独自の奏法がそ照らし出す。自然のイメージをまとって語られる世界は、親密なささやきと広がりのある響きのあいだをやわらかく行き来する。赦しの先にある小さな自由を見つけ、痛みをゆっくりと新しい息づかいへと変えていこうとする試みでもある。断片的でありながら不思議な調和を保つその音は、重さと光のあわいを歩みながら、自分を大切にするための静かな対話として深く沁み込んでくる。


35. Joanne Robertson – Blurrr

絵画制作と育児のあわいで静かに紡がれた、原初的で親密な独白。かすかな囁きが残響の中をたゆたう歌声は、時に身を隠し、時に心の奥をそのまま差し出す。素朴な弦の響きが小さな孤独をやわらかく縁取り、そこに重なる深い低音が、閉じた世界にゆっくりと温度を灯した。飾り気のない美しさと日々の断片が溶け合う音の景色は、過度な装飾を必要としない静かな強さを帯びる。生活と地続きの表現が、穏やかな混沌をまといながら、聴く人の内側へ静かに染み渡った。


34. Bleary Eyed – Easy

境界がゆっくりと溶ける中、音は未知の領域へと静かに漂い出す。泡立つ電子音やデジタルの残響は、肌に触れる雨粒のように降り注ぎ、浮遊する歌声は機械的な質感とやわらかく調和を遂げた。重なり合うアンビエントの層は、穏やかな広がりをもった宇宙の景色を描き出す。歪んだ弦の土着的な響きは、自由奔放な電子音の色合いと出会い、万華鏡のように揺らめく不思議な美しさを生んだ。繊細な旋律とゆるやかな混沌のあいだを行き来しながら、不完全さを抱えたまま響き続けるその音は、果てしない探索の記録として静かに息づく。


33. Die Spitz – Something to Consume

狂気と情熱が一気にあふれ出すような、生々しく力強い表現。その音は既存のスタイルを自由に行き来しながら、社会のひずみや日常の閉塞感を、軽やかでありつつもしっかりとした衝撃で揺さぶる。あらゆるものを飲み込もうとする消費社会や、抜け出しにくい愛情の渦に抗おうとする意志が、しなやかに息づいた。役割に縛られず、変化と即興の衝動を繰り返しながら、危うい世界の縁に立つ人々のための小さな居場所が形づくられる。奔放な遊び心と鋭さをあわせ持つその響きは、静かに、しかし確かに、後戻りできない変化の気配をまとった。


32. Sprints – All That Is Over

加速し続ける情熱が迷いを振り払い、新しい生の可能性へと静かに道を開く。内側に刻まれた痛みや、そこから立ち上がる回復の軌跡を糧に、音はより豊かで力強い表情へと自然に育った。それは、疎外された人々を縛る言葉をやわらかく拒み、混迷する現代に向けた静かな決意の響きでもある。幻滅や疲れが渦巻く世界の端に立ちながらも、愛と表現への希望は消えることなく灯り続ける。荒々しさとほのかな美しさが同居する質感の中で、絶望と憧れのあわいに身を置き、何度でも再び立ち上がろうとする生命力が穏やかに脈打つ。


31. Lambrini Girls – Who Let The Dogs Out

現代社会の歪みを瓶に閉じ込め、それを揺らすことで生まれる衝撃が、鮮やかな気づきとして広がる。政治的な憤りにユーモアの火花が加わり、不条理な世界への違和感が、どこか危うくも高揚感のある祝祭へと姿を変えた。歪んだ低音やせわしない鼓動は、既存の調和に小さなひびを入れ、新しい景色をのぞかせる。自己を解き放つことをまっすぐ肯定するその響きは、時に大きな波のように聴き手を包み込み、時に軽やかな衝動として心を揺らす。恐れを知らない自由さと遊び心が混ざり合い、混沌とした時代の中をしなやかに突き抜ける。


30. OHYUNG – You Are Always On My Mind

過去の自分と今の自分が、静かに時を越えて語り合うような自己探求の記録。実験的な背景を抱えながらも、銀色にきらめく幻想的なポップサウンドへと自然に姿を変え、身近な素材を丁寧に組み替えることで、優雅さとほのかな緊張が心地よく共存する音の空間が生まれた。闇が解放の場となり、変わりゆくことへの喜びや、心の奥に潜む不安や揺らぎがやわらかく浮かび上がる。光と影が重なり合うその世界では、深い安らぎにも似た至福と、自分を解き放とうとする静かな叫びが寄り添いながら響き合う。


29. John Glacier – Like A Ribbon

現代の生を象徴する、終わりのない関係や責任のつながりを一本のリボンに見立てた物語。日常の静けさと、ふいに訪れる非日常の高まりのあいだで揺れる生の断片が、異世界をのぞき込むような視点を通してやわらかく描かれた。内省的な思索を背景に、丁寧に編まれた音のタペストリーが、その独自の精神世界をしなやかに支える。日常の小さなできごとや複雑な感情を、日記のような親密さで描きながらも、既存の枠組みを軽やかに越えた。土地に宿る記憶と、そこから遠く離れた抽象的な領域を自由に行き来し、現代を生きる個人の深い部分に静かな光を当てる。


28. crushed – no scope

二人の表現者が、距離を越えて信頼と直感を磨き上げた到達点。過去の音楽的な蓄積を自分たちの血流に変えながら、未来への揺らぎを抱えつつも、ポップな衝動にまっすぐ従って放たれた音のきらめきが広がる。細かく分解されたリズムの迷路を、開放的でまっすぐな旋律が軽やかに駆け抜ける。感傷に沈むことなく、今という瞬間を鮮明に捉える解像度と反応の速さが息づく。失敗の影が寄り添う日々の中で、自分の殻を破り、新しい次元へ踏み出そうとする意志が静かに刻まれている。


27. Momma – Welcome to My Blue Sky

魅惑的でめまぐるしい夏、その変化のただ中に生まれた「並行する混沌」の瞬間を捉えた記録。ロックのむき出しの衝動とポップの洗練された旋律が自然に溶け合い、感情をまっすぐ届ける形を追い求める。飾り気を排した誠実な曲作りが、聴く人の心に静かに染み込んでいく。共有された記憶や感情の旅路を描く楽曲には、鋭い自己認識と繊細な感性が息づく。妥協を許さない姿勢の積み重ねとして、独自の感性がやわらかな輝きをもって響き渡る。


26. Pile – Sunshine and Balance Beams

労働や生きることにまとわりつく徒労感を、終わりの見えない旅の寓話として描き出した記録。苦難に終わりがなく、悟りにも届かないという重い認識から始まりながら、不確かな希望へと続く影の森を歩き続ける。静寂と轟音、混沌と秩序のあいだで揺れ動く実存的な矛盾が、音として立ち上がる。丁寧に編まれた弦の響きと熱を帯びた旋律が、劇的な展開とともに物語に色を添える。洗練された構築美と生々しい衝動が寄り添い、死や労働といった重い主題を、これまでにないほど鮮やかで広がりのある音の風景へと昇華させた。


25. Turnstile – NEVER ENOUGH

激しい衝動と夢のような静けさが交差する、意欲的な実験作。これまでの荒々しい核を活かしつつ、洗練された旋律や異なるジャンルの要素を大胆に取り入れ、独自の地平をさらなる高みへと広げた。壮大な音響と映画的な展開が鮮やかに際立ち、多彩な音の重なりが豊潤な世界観を形づくる。洗練への憧れと本能的な熱量が共鳴し、まだ見ぬ新しい可能性に満ちた響きが随所に溢れ出した。高揚と静寂が美しく同居する、次なるステージへの進化を克明に映し出した記録だ。


24. Black Country, New Road – Forever Howlong

排他的な美学に身を置いていた表現者が、繊細で優美な音の世界に触れることで固定観念を揺さぶられる過程を描く。中心人物の離脱という大きな喪失を経て、残されたメンバーがそれぞれの声を重ね、新しい息吹を与えようとする歩みを静かに紡いだ。伝説的な過去の影を抱えながらも、集団としての対話を深め、かつての熱量を別の形で育て直す。それは単なる継続ではなく、痛みを受け入れながら変わりゆく道を選び、未知の調和へ向かう誠実な再生の記録でもある。期待と不安が入り混じる中で、物語は新たな章へとゆっくり進み始めた。


23. Squid – Cowards

善悪のあいだで揺れ動く、邪悪さや無関心をめぐる九つの物語。カルトやカリスマといった主題を通して、登場人物たちが道徳的な闇へ引き寄せられる姿を描き出す。表現のスケールを広げながらも、同時に原点へと向き直るような大胆な試みが息づく。丁寧な制作過程を経て形づくられた音像は、初期の即興的な精神を受け継ぎつつ、これまでにないほど深い思索の領域へ踏み込む。既存の枠組みを越え、静かな熱と鋭い洞察を携えて、人間性の奥底に広がる暗がりを鮮やかに照らし出す。


22. Smerz – Big city life

巨大な都市の拍動に身を重ねながら、日常と非日常のあいだを漂うように進む音楽的オペラ。加速する夜の喧騒や、途切れた記憶の空白が、硬質なリズムと幻想的な旋律によって鮮やかに描かれた。虚無を帯びた言葉遊びと、むき出しの孤独が交互に姿を見せ、華やかな高揚のあとに訪れる静かな脱力感が印象的に浮かび上がる。空虚な都市生活に対する順応と抵抗が交差し、デジタルな響きの連なりが、夢と汚れた現実を同じ地平で結びつけた。寄る辺のない魂が今どこに立つのか、その輪郭がやわらかい光を帯びて描き出される。


21. Jennifer Walton – Daughters

華やかな成功の陰で進んでいた、避けがたい喪失と悲嘆の記録。旅の喧騒や見知らぬ街の人工的な風景、そして医療機器の冷たい響きが、肉親の死という厳しい現実と鋭く交差する。断片的な日記や旅の情景が、親しい仲間たちとの協働によって重なり合い、深みのある音のタペストリーへと形を変える。極限の状況で刻まれた記憶は、機械的な虚無感とどこか崇高さを帯びた感覚のあいだを揺れ動きながら、癒えない傷を音楽へと昇華させる。個人的な痛みが普遍的な美しさへと姿を変え、静かな鎮魂の響きとして広がる。


20. UNIVERSITY – McCartney, It’ll Be OK

デジタル時代の完璧主義に背を向けるような、不器用でありながらまっすぐな情熱。洗練という飾りを脱ぎ捨て、衝動的な騒音と緻密な変拍子が入り混じる世界が広がる。悲劇的な感情と軽やかな遊び心が対照を成し、混沌とした音像の奥にある人間らしさが鮮やかに浮かび上がる。ジャンルの境界を軽やかに越えながらも、揺るがない結束と自信が響きの芯を支える。不条理なほど自由奔放なエネルギーが、絶望さえも色彩豊かな祝祭へと変えてしまう。何にも縛られない精神が、聴き手の内側に眠る野性を静かに呼び覚ます。


19. The Armed – THE FUTURE IS HERE AND EVERYTHING NEEDS TO BE DESTROYED

あらかじめ決められた概念や規則を手放し、衝動と切迫感だけを頼りに放たれた新しい宣言。理想と厳しい現実の隔たりに揺さぶられる痛みが、濾過されない怒りとしてまっすぐ響き、洗練された“反逆”の型を拒む姿勢が、情報の奔流に翻弄される現代人の歪んだ精神を映し出す。ジャンルの境界を押し広げる激しい響きは、不条理な日常と向き合う行為そのものでもある。飾りを脱ぎ捨て、破壊の先にある本当の生を探ろうとする、攻撃的でありながら純度の高い表現が力強く立ち上がった。


18. Sudan Archives – THE BPM

肉体的な解放と技術的な進化が交わる地点から放たれる、未来へのマニフェスト。伝統的なルーツを出発点にしながら、電子的な拍動と優美な弦の響きが溶け合い、肉体と機械が向き合う新しい自己像を描き出した。祝祭のような高揚感と知的な構築が重なり、消費されるだけの娯楽を越えて、社会的な規範や自分自身の境界を揺らす力を帯びる。後半では実験的な迷宮へ踏み込み、多様な様式を吸収しながら、都市の奥底に潜む孤独や欲望が静かに姿を現した。構成がやや膨らむ課題を抱えつつも、既存の枠組みを拒む大胆な才気が、夜の闇を鮮やかな色彩で塗り替える。


17. billy woods – GOLLIWOG

恐怖やユーモア、超現実的な感覚が複雑に絡み合う、映画のように濃密で不穏な物語。かつての軽やかな記録とは異なり、死の舞踏を思わせる重く深い世界観が広がる。歴史的な絶望や寓話的な非現実が交差する中、多彩な協力者たちの響きが、その深い闇をより立体的に描き出した。泥濘の中に突然現れた祝祭のように、空虚な喧騒と静かな余白が同時に息づく重層的な構成。幾千もの記憶やイメージが重なり合い、逃れられない運命や社会の暗がりを鋭く照らす。知的な刺激と冷静な洞察が響き合い、圧倒的な密度をもった表現として結実した。


16. keiyaA – hooke’s law

長い時間をかけた自己対話と葛藤の末に生まれた、生きようとする意志の記録。安易な自己肯定や決まりきった救いを求めず、歪みや矛盾を抱えたままの自分を丁寧に組み直す。多層的なアイデンティティが調和と摩擦を繰り返し、過去から未来までの自分が入り混じるような独特の空間が広がった。螺旋を描くように続く自己愛の旅は、一本の物語や教訓に収まらず、混沌とした循環そのものを肯定する。緻密な音の断片が編み上げられ、既存の枠組みをほどきながら、解放への願いがより強い実験精神とともに響き出した。


15. Big Thief – Double Infinity

凍てつく街を抜けて集まった表現者たちが、即興的な対話を重ねながら生命の神秘を紡ぐ記録。共同体としての調和の中で、九時間にわたる演奏が偶然の発見を積み重ね、生きた美しさが確かな形として息づく。加齢や時間の流れを恐れず、自然の摂理に身をゆだねることで得られた静かな確信。未知の未来への畏れを抱えながらも、今という場所を受け入れる潔さが、温かみのある音像とともに広がった。理解を超えた生の営みをそのまま愛し、一瞬ごとの再生を祝福する、深く誠実な探求の結晶だ。


14. caroline – caroline 2

前作で追い求めた空間や反復の探究をさらに押し広げ、より大胆で広大な音響世界へ踏み出した続編。有機的な響きと電子的な処理、剥き出しの衝動と洗練された技巧といった対照的な要素を自由に行き来し、鮮やかなコントラストを描き出した。重なり合う楽器の演奏と変わりゆく歌声が交差し、高揚と哀しみが寄り添うような深い没入感を生む。意図的な静寂と、豊かに積み重ねられた音の層を巧みに切り替えながら、既存の形式に縛られない新しい対話を試みた。恐れを知らない実験精神が息づき、現代的な響きの地平をさらに広げる、進化と深化の記録だ。


13. Ethel Cain – Willoughby Tucker, I’ll Always Love You

未熟さゆえの過ちや、かつての歪んだ自己を受け入れながら、変わり続ける生の軌跡を肯定する物語。昔の愚かな言動を抱えたまま、それでも痛みを伴う成長を経て新しい地点へたどり着くまでの歩みが描かれている。世代を越えて共有される思春期の葛藤や、受け継がれるトラウマが、静けさの中に潜む鋭い響きとともに表現される。過去の影に揺られながらも、そこから抜け出し再生を試みる真摯な探求。残酷な現実の記憶を芸術へと変え、不確かな未来へ向かって歩み続ける、一人の表現者の覚悟が静かに刻まれている。


12. Anna Von Hausswolff – ICONOCLASTS

前衛的な音響の流れと古典的な奏法を背景に、長い構成や実験的な響きにもためらわず挑む孤高の表現。これまで身を沈めてきた深い静寂や重い闇から距離を置き、光の差す方向へと歩みを向けている。神話的な比喩を手がかりに、宿命と選択のあいだで揺れる人間の脆さと、そこから抜け出そうとする意志が豊かな音像の中で描かれる。重なり合う音の層を抜けて響く歌声は、束縛から離れる瞬間や決断に伴う痛みを鮮やかに伝える。深い闇から光へ向かう、その劇的な変化と目覚めの過程が静かに息づく。


11. Nourished By Time – The Passionate Ones

資本主義の片隅で息をつく魂が、瓦礫の中から自分だけの聖域を築こうとする儀式のような記録。単調な労働や腐敗した社会に削られた精神を救い出すために、個人的な情熱と鋭い観察が独自の音像へと姿を変える。多様な音楽적背景が溶け合い、愛や労働、実存的な不安をめぐる現代の物語が鮮やかに立ち上がる。夢と幻滅のあいだで、自らの脆さを抱えながら希望をつなぎとめようとする切実な祈り。既存の枠組みを越え、混沌とした日常の中に小さな意味を見つけ出そうとする、野心的で誠実な自己解放の試みが静かに響く。


10. Perfume Genius – Glory

洗練された表面の奥で、荒々しさとやわらかな感情が入り混じる、とても人間的な記録。孤独を好む内向的な衝動と、外の世界や他者との関わりのあいだで揺れる葛藤が、力強い演奏陣とのやり取りを通して音として形づくられる。独自の視点で切り取られた日常の断片や、疎外感、欲望といった湿り気のある主題が、光のもとへ引き出され、のびやかに解き放たれた。集団のエネルギーを受け入れたことで、脆さを見せる危うさと同時に、これまでにないほど豊かな表現力を手にした。抽象的な風景の中に潜む、生々しい痛みを大切に抱きとめ、肯定へと変える、誠実で生命力あふれる探求の到達点だ。


9. Wednesday – Bleeds

自己の内面をコラージュのようにつなぎ合わせ、他者の物語へ身を寄せることで真実を浮かび上がらせようとする、叙事詩的な試み。文学的な情感や土の匂いを残す野性味、そして鋭い轟音が丁寧に組み合わされ、独自の音楽性が形づくられた。好奇心と告白が地続きに扱われ、日常に潜む恐怖や可笑しさが、独特の視点でやわらかく切り取られる。徹底した自己研鑽と対話の積み重ねの先で、集団としてのアイデンティティが育まれた。断片的な記憶や風景が重なり合い、豊かな音像へと昇華されることで、個人の脆さが普遍的な力へと変わる。きわめて主観的でありながら、他者への深い共感を呼び起こす、誠実な探求がひとつの形として息づいた。


8. Goon – Dream 3

夢と現実の境界がゆるやかに溶け合い、白昼夢のような情景が音として立ち上がるサイケデリックな探求。気だるい旋律とざらついた質感が重なり、優美さと歪みが寄り添う独特の雰囲気を生み出した。静けさと混沌を行き来するその響きは、意識の奥へ沈み込むような深い没入感をもたらし、聴き手を予測できない内面の旅へと導く。過度な装飾に頼らず、純粋な音の重なりだけで日常を別の姿へと変える試み。足を踏み入れた瞬間から引き寄せられる、美しくもどこか不穏な迷宮のような音の風景が広がった。


7. They Are Gutting A Body Of Water – LOTTO

実験的な鋭さをまといながら、伝統的な枠組みを軽やかに越えて進化する現代的な響き。威圧的な旋律と情熱的な歪みが交差し、地下でうごめくような不穏なエネルギーが音として立ち上がる。自動化や均質化が進む時代にあって、不完全さや摩擦を抱えたままの、人間らしい身体的な対話を音像へと刻みつけようとする試みだ。機械的な最適化を拒み、生身の奏者が同じ空間で響きを交わす瞬間の手触りを大切にする姿勢。混沌の中にある確かなものを探り当てようとする、純粋で野心的な衝動が静かに形を成す。


6. Water From Your Eyes – It’s A Beautiful Place

巨大な都市や宇宙の広がりを見渡しながら、そこに生きる個人の小ささを静かに浮かび上がらせる作品。多様な様式を自由に組み替え、これまでの音楽体験を新しい地平へと編み直した。宇宙的な視点から見れば取るに足らないはずの表現が、なぜこれほど切実な重みを持つのかという根源的な問いが、柔らかな余韻とともに響く。畏れや感傷、そして未来への好奇心が溶け合う壮大な音像。日常の小さな断片が銀河のような広がりへと姿を変え、儚い存在としての人間が宇宙の美しさに触れる瞬間を祝福した。緻密さと自由さが寄り添いながら進む、知的で豊かな冒険の記録だ。


5. Model/Actriz – Pirouette

肉体的な儀式へと観客を誘う、苛烈で生々しい躍動。過酷な旅路を経て辿り着いたのは、虚飾を剥ぎ取り、より重厚かつ明快に自己を誇示する覚悟の境地だ。大衆的な記号を独自の感性で再解釈し、高揚感溢れるリズムと扇情的な舞台精神を融合させた。混沌としたフロアに解放をもたらし、生身の衝動を直接的に突きつける。進化と刷新を同時に成し遂げ、表現者としての支配力を研ぎ澄ませた、強靭な意思の結実。


4. YHWH Nailgun – 45 Pounds

肉体的な衝撃と理知的な解体が交わり、実験的表現の最前線を切り開く作品。既存の楽器を思い切って変形させ、新しい姿へと生まれ変わらせることで、従来のアンサンブルの枠組みを大きく揺さぶった。激しい咆哮と緻密な電子音が複雑に絡み合い、現代社会にあふれる過剰な情報の流れを鮮やかな音像として描き出す。純粋さを求める姿勢を保ちながらも、その響きは破壊的で予測のつかない表情を見せた。混沌とした時代の空気を鋭くすくい取り、秩序と狂気のあいだに広がる未知の聴覚体験を生み出す、野心に満ちた挑戦の記録だ。


3. Agriculture – The Spiritual Sound

消費されるだけの背景音楽や、最適化された娯楽への強い拒絶から生まれた表現。極限まで研ぎ澄まされた浄化と、献身的な静けさが重なり合い、神性への憧れと生き抜こうとする意志がひとつの響きとして結びついた。個人のエゴを手放し、共同体としての葛藤や信頼を通して再び形づくられた音像は、抽象的な救いではなく、過酷な現実に向き合う確かな「存在感」を放つ。飾り気のない日常の手触りに根ざしながらも、崇高さを求め続ける真摯な探求。意味が失われたように見える世界の中で、苦難さえも再生の力へと変える強い精神が、静かな余白と激しい轟音のあいだに息づく。


2. Samia – Bloodless

不可解な欠落や空虚さという静かな違和感から始まり、自己をほどきながら再び形づくる過程をたどる物語。穏やかな独唱がやがて大きな響きへと広がる音の流れの中で、他者の期待や理想に応えようとするあまり、自分を「空洞」にしてしまった時間を見つめ直した。作り上げてきた役割を手放し、その奥に眠る不完全な本当の姿に触れようとする試みでもある。痛みを伴う省察を経て、これまで自分を縛ったこだわりから少しずつ解き放たれ、ありのままの自分を受け入れる道のりが静かに描かれた。


1. Geese – Getting Killed

短期間の密室的な制作から生まれた、混沌とした喜劇のような記録。緻密な構想を抱えながらも、あえて形を崩したような自由な演奏が、抑えきれない熱量を放つ。伝統的な様式へのこだわりを手放し、音楽そのものへの違和感を力へと変えることで、これまでにない実験精神が鮮やかに立ち上がった。静かな子守唄のような瞬間と、激情に満ちた実験が交差し、相反する感情が軽やかにぶつかり合う。異なる素材を思い切ってぶつけ合い、調和を求めないその響きには、不器用な優しさと研ぎ澄まされた怒りが同時に息づく。破壊のあとに芽生える、歪でありながら鮮やかな表現の到達点だ。