Grace Cummings – “I’m Not Crazy”

メルボルン出身のシンガーソングライター Grace Cummings がリリースしたニューシングル「I’m Not Crazy」は、2026年8月14日に ATO Records からリリースされるニューアルバム『Bloodhorse!』からの最新先行カットです。Jonathan Wilson がプロデュースを手掛けた本作は、彼の得意とする温かみのあるアナログな質感のサウンドが特徴。サイケデリックでドリーミーな音響世界を展開しながらも、その美しさの裏には「感情的な暴力」という重いテーマが隠されており、彼女の極めて精密で凄みのあるソングライティングがリスナーの胸を深く抉ります。

楽曲の持つドリーミーな雰囲気は、恐怖から自分を小さく可愛らしく見せようとする「乖離(解離)」の状態を表現しており、彼女はあえて普段とは異なる無垢で脆弱な歌声を用いてこの曲を歌い上げています。「あなたを傷つけない、私は狂っていない」という一見なだめるような言葉が、次第に歪んだ警告へと変貌していくプロセスの緊迫感が、楽曲の進行とともに圧倒的な破壊力をもって迫ってきます。恐ろしさと美しさが奇妙に同居する、強烈な存在感を放つ一曲です。


Rachel Bochner – “Happier You’re Gone (SASE)”

Rachel Bochnerのシングル「Happier You’re Gone (SASE)」は、彼女の持ち味である「率直で恐れを知らない作詞センス」と「脆さの中にある芯の強さ(grit)」が鮮烈に表現された楽曲です。歌詞では、過去の恋人への未練をきっぱりと否定しつつも、かつて共有した激しい感情や決別の複雑な余韻がリアルに描かれています。「綺麗さっぱり別れるなんて簡単ではない(A clean break is never really cut and dry)」という葛藤を認めながら、ダークさと遊び心を絶妙に融合させた独自の音楽的アプローチによって、聴き手の心に深く残る世界観を構築しています。

本作の核心は、「あなたと出会えてよかった(I’m happy you happened)」という過去への肯定と、「でも、あなたがいなくなって本当によかった(But I’m happier you’re gone)」という現在の解放感が共存している点にあります。未練を断ち切り、未熟だった関係性や相手の身勝手さを「許されたこと」として過去に置き去ることで、傷つきながらも前を向く主人公の精神的な成長が描かれています。誰しもが目を背けたくなるような失恋直後のリアルな本音を、ポップでありながらもエッジの効いたメロディに乗せて見事に昇華した一曲です。


Hunx and His Punx – “The Punkettes”

カリフォルニア出身のガレージパンク・バンド、Hunx and His Punxがリリースしたシングル『The Punkettes』は、レーベルGet Better Recordsから7インチのダブルシングルとして発表された作品です。本作には復讐劇をクラシカルに描いた先行シングル「Dead To Me」と、男性が歓迎されない街への賛歌である「Strange Town Where Men Aren’t Wanted」の2曲が収録されています。バンドの初期のバッキンググループ名でもあった「The Punkettes」の名を冠したこの作品は、限定のチェリーレッドやピンクのカラーヴァイナルでも展開され、ファンを楽しませています。

音楽性としては、彼らが2025年に発表したアルバム『Walk Out On This World』のセッションから派生したものでありながら、サウンド自体は2011年の名盤『Too Young To Be in Love』の系譜を継ぐものとなっています。1950年代〜60年代のガールズグループ(The Shangri-LasやThe Ronettesなど)へのオマージュに、彼ららしいクィアな感性とバブルガム・パンクの要素を融合させた、キャッチーかつ毒気のある仕上がりです。フロントマンのSeth Bogartによるノンバイナリーとしての視点など、現代的なメッセージ性もユーモラスに内包された1枚となっています。


Mondo Love & Betrayal – “Beyond The Rainy City”

世界中のDJやジャーナリストから熱狂的な賛辞を浴びた「Correspondence」「Your Latest」に続き、Mondo Love & Betrayalが2026年9月発売予定のセルフタイトル・デビューアルバムから、新たな先行シングル「Beyond The Rainy City」をリリースしました。伝説的ユニットBentのメンバーであるNeil ‘Nail’ Tollidayと、Torn Sailなどで活動するHenry Claude Scottによるこのプロジェクト。ノスタルジックなシンセ・ポップ、鮮やかな音の色彩、そしてフロアへの繊細なアプローチを高次元で融合させた彼らは、今作でもその評価に甘んじることなく、独自のタイムレスなポップ・ミュージックをさらに深化させています。

スコットが現在拠点とするマンチェスター(雨の街)にちなんで名付けられた本作は、Paul McCartneyやJarvis Cockerらのように他者の人生に没入するアプローチで書かれました。「賞賛を渇望しながらも、自らそれを脱線させてしまうキャラクター」からインスパイアされた「僕は誰でもない、でもそれが気に入っている」という象徴的な歌詞のフックが、人間のアンバビレントな欲望を浮き彫りにします。トリデイが紡ぎ出す、シャッフルするマシンドラムや温かみのあるエレクトリック・ピアノ、物憂げなコードワークがスコットのエモーショナルな歌声と完璧に調和し、デュオの真骨頂である「ハッピー・サッド(哀愁と高揚)」なダイナミズムを美しく体現する万華鏡のような名曲に仕上がっています。


Neal Francis – “Hide”

この楽曲は、死を間近に控えた富豪が、物質的な追求に明け暮れた人生の虚無感と滑稽さに気づく瞬間を描いています。死という万人に平等に訪れる運命からは、いかなる富をもってしても逃れることはできず、その悟りは進むべき道を変えるにはあまりに遅すぎたという悲劇性が込められています。この物語を通じて、自身の欲望を自覚し、愛や優しさといった他者との意味のある繋がりに目を向けることの大切さを訴えかけています。

音楽的には、Sly & The Family Stoneの『暴動』期のサウンドや、Stevie Wonder、Allen Toussaintから影響を受けています。シカゴの教会で制作が始まり、数年後にロサンゼルスのKillion SoundにてSergio RiosとCollin O’Brienを迎えた『Return To Zero』セッションで完成を迎えました。豊かな音楽的背景と、シカゴからロサンゼルスへと渡る長い制作過程を経て、深い内省を伴う重層的な一曲に仕上がっています。


仏教の「モンキー・マインド」を冠した新章。Pearl & The OystersがJonathan Radoと紡ぐ、不安を多幸感へ変える最新作

フランス系アメリカ人デュオ、Pearl & The Oystersが、ニューアルバムからの先行シングル「Doom Mood」をリリースしました。本作『Monkey Mind』は、Weyes BloodやFoxygenらを手掛けたJonathan Radoをプロデューサーに迎え、ロサンゼルスのミュージシャン仲間たちと共にテープへの一発録りを中心に制作。緻密に作り込まれた従来の宅録スタイルから一転、オーバーダブを最小限に抑えた、これまで以上にルーズでライブ感のあるサウンドに仕上がっています。

アルバムのタイトルは、絶え間なく落ち着きなく動き続ける意識を指す仏教の概念「モンキー・マインド」に由来しています。表面上は陽気で晴れやかなサウンドですが、その内側には2025年のロサンゼルス大火災やトランプ大統領の二度目の就任といった社会的背景が影を落としています。二人は自身の中にある不安を処理するための手段として音楽に向き合い、わずか数週間で本作を書き上げました。

Jonathan Radoとの共同作業により、今この瞬間に根ざした生々しさを獲得した本作は、不安を抱えながらも前を向くための癒やしのプロセスを提示しています。重苦しい時代背景とは対照的な多幸感溢れるメロディと、現在進行形の空気を閉じ込めたアンサンブルが、デュオにとっての新たな章の始まりを告げています。


蚤の市のオルガンから生まれた独創的グルーヴ:マルチ奏者 Michele Ducci が放つ、遊び心溢れる最新インディー・カット

イタリア人コンポーザーでありマルチ奏者のMichele Ducciが、新作「Woman Like You」をリリースしました。この楽曲は、蚤の市で見つけた古いオルガンのペダルボードを改造し、ベース、コード、リズムを同時に鳴らすというユニークな手法で構築されています。そこにShane Kennedyによるエッジの効いたギターと、Simon Milner(4 am Studios)のプロデュースが加わり、親密さと躍動感が同居する独創的なインディー・カットに仕上がっています。

本作は、年内公開予定の長編アニメーションを伴うプロジェクト『Snail in the Clouds』の先行シングルでもあります。このプロジェクトは、ハイブリッドな生物たちが住む架空の惑星を舞台に、音楽を生命力とする哲学的な寓話を描くものです。セルフディレクションによるミュージックビデオでは、音楽を動力源とする船を巡る物語の断片が、抽象的なイメージとともにシュールに映し出されています。

楽曲の核心にあるのは、愛をストレートに表現したパーソナルなメッセージです。壮大な世界観や哲学的なコンセプトを背景に持ちながらも、音楽としての焦点がブレることなく、Ducciの表現力豊かなボーカルとLetizia Mandolesiの柔らかなハーモニーが、聴き手を惹きつけます。ソングライティング、映像、ワールドビルディングが交差する、彼の次なる展開への期待を抱かせる一曲です。


Alex Cameron – “Statue Down”

オーストラリア出身のシンガーソングライター、Alex Cameronがニューシングル「Statue Down」をリリースしました。独特の観察眼で現代社会の機微や人間模様を描き出す彼らしく、今作でも持ち前のユーモアと哀愁が入り混じった独自のストーリーテリングが遺憾なく発揮されています。

サウンド面では、彼のトレードマークとも言える80年代風のシンセ・ポップやニュー・ウェーヴの質感を継承しつつ、洗練されたグルーヴとキャッチーなメロディが際立つ仕上がりとなっています。力強くもどこか繊細なボーカルが、皮肉めいた歌詞の世界観を鮮やかに彩り、リスナーを中毒性のあるポップ・サウンドへと誘います。


Cat Merkle – “The Same For Us”

シカゴを拠点に活動するシンガーソングライター Cat Merkle が、レーベル Internet & Weed よりニューシングル「The Same For Us」をリリースしました。Amy Winehouse や Lizzy McAlpine に影響を受けた彼女のスタイルは、ドラマチックな昂揚感と親密な情緒を併せ持っています。2024年秋からシカゴの Martyrs’ や Cubby Bear といった名門会場で精力的にライブ活動を展開しており、本作でもそのライブ感のある力強い表現力が存分に発揮されています。

新曲「The Same For Us」は、報われない愛とそれに対する自己決定をテーマにした、痛切でエモーショナルな楽曲です。歌詞では、相手を想いながら書き溜めた「100曲もの未完成の歌」をモチーフに、関係の崩壊を無視し続けようとした葛藤や、相手の不誠実さへの気づきが綴られています。夏の終わりと共に過去を振り切ろうとする決意が込められた本作は、彼女のソウルフルな歌声と相まって、失恋の痛みを超えて前へ進もうとするリスナーの心に深く響く一曲に仕上がっています。


Aino Salto – “Poppies Forever”

スイスを拠点に活動するアーティスト Aino Salto が、ニューシングル「Poppies Forever」をリリースしました。彼女は Phoebe Bridgers や Mitski といったシンガーソングライターの叙情性と、Björk が描き出す広大な世界観から影響を受けており、独自の音楽宇宙を構築しています。緻密に構成されたトリック・トラック・ビートと詩的なリリックが融合し、一見混沌としていながらも筋の通った、彼女ならではの表現スタイルを提示しています。

本作においても、内省的な独白と実験的なエレクトロニクスの幸福な調和が大きな魅力となっています。Aino Salto が紡ぐ言葉は、狂気の中に秩序を感じさせるような独特の説得力を持ち、リスナーを彼女のパーソナルな物語へと引き込みます。スイスの静謐な空気感と、現代的なオルタナティブ・ポップの鋭さが同居した、次世代の才気を感じさせる仕上がりです。

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