末期資本主義の不条理を射抜くグラスゴーの新星:Gichardが放つDIYな「宇宙的パンク」とデビュー作の全貌

スコットランドのグラスゴーを拠点とする新鋭デュオ Gichard が、デビューアルバム『Chins For Lefty』から先行シングル「Your Private Hell」をリリースしました。本作は末期資本主義の不条理や形骸化した社会的儀式を独自の視点で記録した作品で、ホームスタジオでのテープ録音によるローファイな質感が特徴です。DIY kosmische punk、ドラムマシン、シンセサイザーが織りなすラフで美しいメロディに乗せて、ヴォーカルの Lisa Jones が現代社会の不安を鋭く、時に不条理に描き出しています。

メンバーの Chas Lalli はグラスゴーのアンダーグラウンドで20年以上のキャリアを持つベテランであり、一方の Lisa Jones は詩やスポークン・ワードの世界で活動してきました。前身バンド Dragged Up での共演を経て結成された Gichard では、彼女の歌詞が中心に据えられ、Chas Lalli の多層的なサウンドと融合することで、一つの完結した世界観を構築しています。アルバム全体が一編の小説のように構成されており、現実の経験に根ざしながらも誇張されたキャラクターや設定を通じて、人間関係の亀裂や社会の異様さを浮き彫りにしています。

収録曲には、前夜の出来事を分析するボイスメモのような「Cholesterol Test」や、技術的特異点を皮肉る「Posthumous Hologram」、さらには Dry Cleaning を彷彿とさせる知的なポスト・パンク「Human Resources」など、多彩な楽曲が並びます。Rowland S. Howard のような気だるい音楽性から、スコットランド西部特有のドライなユーモアを交えたデート儀式の解剖まで、彼らが世界にかざす「歪んだ鏡」は、シリアスな考察と同時に抗いがたい滑稽さを放っています。