Top 15 Movies of 2022

Top 15 Movies of 2022

2022年に日本で公開されたものから選びました。


15. セイント・フランシス – Saint Frances

うだつがあがらない日々に憂鬱感を抱えながら、レストランの給仕として働くブリジット(ケリー・オサリヴァン)、34歳、独身。親友は結婚をして今では子どもの話に夢中。それに対して大学も1年で中退し、レストランの給仕として働くブリジットは夏のナニー(子守り)の短期仕事を得るのに必死だ。自分では一生懸命生きているつもりだが、ことあるごとに周囲からは歳相応の生活ができていない自分に向けられる同情的な視線が刺さる..オフィシャルより

女性が抱える悩みや苦悩を、出会った純粋無垢な少女が身近な問題、そしてライトな感覚にしている。予告編で流れるHaley Heynderickxの曲は、本編では使われてないようで、Quinn Tsanが担当。


14. MEN 同じ顔の男たち – Men

夫の死を目の前で目撃してしまったハーパー(ジェシー・バックリー)は心の傷を癒すため、イギリスの田舎街を訪れる。そこで待っていたのは豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリー(ロリー・キニア)。ハーパーが街へ出かけると少年、牧師、そして警察官など出会う男たちが管理人のジェフリーと全く同じ顔であることに気づく。街に住む同じ顔の男たち、廃トンネルからついてくる謎の影、木から大量に落ちるりんご、そしてフラッシュバックする夫の死。不穏な出来事が連鎖し、“得体の知れない恐怖”が徐々に正体を現し始めるー..オフィシャルより

同じ顔=同じ人なのだろう。女性の声にトンネルの向こうで呼応したのは赤ちゃんであって、男たちはそこからの成長分裂と考える。結局のところ、男っていう生き物は愛されたいだけってこと。音楽は、Portishead, BEAK>のGeoff Barrow。


13. LAMB ラム – LAMB

羊から産まれたのは、羊ではない“何か”。山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてくる。子供を亡くしていた二人は、”アダ”と名付けその存在を育てることにする。奇跡がもたらした”アダ”との家族生活は大きな幸せをもたらすのだが、やがて彼らを破滅へと導いていく。その存在はなぜ産まれてしまったのか?前代未聞の衝撃展開が—..オフィシャルより

登場する動物と人間を含めて、背景には宗教的な意味合いがあるだろうが、そもそも動物と人間の関係には歪なものがあって、無理やり結び、繋ぐと異形なものになるということだろうか。音楽はアイスランドのメタル出身で故Jóhann Jóhannssonとも関わるÞórarinn Guðnason。


12. TITANE チタン – Titane

幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた── オフィシャルより

常に痛みを伴い、そして破壊的な美しさ。想像の領域を遥かに超えるイカつさに、とにかくぶち抜かれるが、その先にあるものは問題を奥底で抱える人々の切なさであった。音楽は、「RAW 少女のめざめ」も手がけたJim WIlliamsだが、Future Islandsの “Light House” が印象的なシーンで登場。


11. ベルイマン島にて – Bergman Island

映画監督カップルのクリスとトニーは、アメリカからスウェーデンのフォーレ島へとやって来た。創作活動にも互いの関係にも停滞感を抱いていた二人は、敬愛するベルイマンが数々の傑作を撮ったこの島でひと夏暮らし、インスピレーションを得ようと考えたのだ。やがて島の魔力がクリスに作用し、彼女は自身の“1度目の出会いは早すぎて2度目は遅すぎた”ために実らなかった初恋を投影した脚本を書き始めるのだが──オフィシャルより

半分を過ぎたころから、大きく歪みだす。それまでは美しい風景と敬愛する人物への愛を静かに伝えていたはずだが、ぐらぐらと揺さぶられ一気に映画へと変貌する。The Go-Betweensの “You Won’t Find It Again” や、Lee Hazlewoodなどを使用。


10. アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ – Bad Luck Banging or Loony Porn

ルーマニア、ブカレスト。有名校の教師であるエミは、コロナ禍の街をさまよい歩いていた。夫とのプライベートセックスビデオが、意図せずパソコンよりネットに流出。生徒や保護者の目に触れることとなり、保護者会のための事情説明に校長宅へ向かっているのだ。そしてコロナ禍のブカレストの街を漂流するかのように歩くエミの姿が淡々と映し出されていく──オフィシャルより

3部構成のひとつは、ほぼブカレストの街並みを映すのみで、インタールードとして機能させ一息入れる。その代わり前後の濃密で、私見の応酬とバカバカしさによって、2021を鋭くえぐっている。


9. ニューオーダー – New Order

夢に見た結婚パーティー。マリアンにとって、その日は人生最良の一日になるはずだった。裕福な家庭に生まれ育った彼女を祝うため豪邸に集うのは、着飾った政財界の名士たち。一方、マリアン宅からほど近い通りでは、広がり続ける貧富の格差に対する抗議運動が、今まさに暴動と化していた。その勢いは爆発的に広がり、遂にはマリアンの家にも暴徒が押し寄せてくる。華やかな宴は一転、殺戮と略奪の地獄絵図が繰り広げられる──オフィシャルより

ねたみ、そねみ、ひがみ。とことん性格が悪いのか、よくもまあ、ここまで人手無しなものを作ったものだ。しかし、権力を持ったものが現実に同じことをしてるのだから、浮世離れした話でもないのだ。


8. 秘密の森の、その向こう – Petite maman

8歳のネリーは両親と共に、森の中にぽつんと佇む祖母の家を訪れる。大好きなおばあちゃんが亡くなったので、母が少女時代を過ごしたこの家を、片付けることになったのだ。だが、何を見ても思い出に胸をしめつけられる母は、何も言わずに一人でどこかへ出て行ってしまう。残されたネリーは、かつて母が遊んだ森を探索するうちに、自分と同じ年の少女と出会う。母の名前「マリオン」を名乗る彼女の家に招かれると、そこは“おばあちゃんの家”だった──オフィシャルより

タイムリープものだが、リープ感をあまり感じさせず、終始ふわふわとした世界に入り込む。幼い頃の田舎や森を思い出して自身に置き換えるが、こんなふうに両親とは友人になれるだろうか。原題のままがいい。音楽は意外やPra OneことJean-Baptiste de Laubierが担当。


7. アフター・ヤン – After Yang

“テクノ”と呼ばれる人型ロボットが、一般家庭にまで普及した未来世界。茶葉の販売店を営むジェイク、妻のカイラ、中国系の幼い養女ミカは、慎ましくも幸せな日々を送っていた。しかしロボットのヤンが突然の故障で動かなくなり、ヤンを本当の兄のように慕っていたミカはふさぎ込んでしまう。修理の手段を模索するジェイクは、ヤンの体内に一日ごとに数秒間の動画を撮影できる特殊なパーツが組み込まれていることを発見。そのメモリバンクに保存された映像には、ジェイクの家族に向けられたヤンの温かなまなざし、そしてヤンがめぐり合った素性不明の若い女性の姿が記録されていた──オフィシャルより

中古のアンドロイドということは、新品時代があり、その辺りがそわそわとする。保存された映像が断片的に映し出されるが、保存されていない部分ってなんだろう。音楽は言うまでもなく坂本龍一、Aska Matsumiya、そしてMitskiによる「リリイ・シュシュのすべて」の「グライド」新解釈版。


6. グレート・インディアン・キッチン – The Great Indian Kitchen

ある一組の夫婦の姿を通して、インドの中流階級に根強く残る家父長制やミソジミー(女性嫌悪、女性蔑視)を鋭く描き、インド本国でも女性観客の支持を得て、口コミで話題と評判が広がった一作。インド、ケーララ州北部のカリカットの町で、高位カーストの男女がお見合いで結婚する。夫は由緒ある家柄の出身で、伝統的な邸宅に暮らしている。一方、中東育ちで教育もあり、モダンな生活様式になじんだ妻は、結婚して夫とその両親とが同居する家で暮らしはじめるが、台所と寝室で男たちに奉仕するだけの生活に疑問を持ち始める──オフィシャルより

インドほどではないだろうが、普段の生活に似たようなことはあるし、自身を省みる。救われるのは映像を通して登場する色彩豊かな料理の数々。しかし、劇場公開されたのが日本のみというところに闇の深さを感じる。


5. ニトラム NITRAM – Nitram

1996年4月28日日曜日。タスマニア島、ポート・アーサーで無差別銃乱射事件が発生。死者35人、負傷者15人。当時28歳の単独犯の動機が不明瞭であることも拍車をかけ、新時代のテロリズムの恐怖に全世界が騒然となった。国内では未だ議論の絶えないこの事件を初映画化したのは、「現代オーストラリア最高の映画作家」と称される俊英ジャスティン・カーゼル。事件の〈真実〉に迫るため、映画は犯人の複雑なパーソナリティだけでなく、彼を取り巻く社会──家族、ローカルコミュニティ、医療、福祉、法制度、慣習──を多角的・重層的アングルからひとつずつ剥き出しにする。出来事に至るプロセスを緻密かつ繊細極まりない叙述で積み重ねてゆく──オフィシャルより

今年ミュージシャンとしてアルバムもリリースしたケイレブ・ランドリー・ジョーンズもさることながら、登場する俳優陣の存在感もあって高速で引き込まれる。モデルの人物像に迫るというよりは、もはや俳優陣が実在の人物のような錯覚に陥る。チャラ男役がとてもいい。


4. ふたつの部屋、ふたりの暮らし – Deux

南仏モンペリエを見渡すアパルトマン最上階、向かい合う互いの部屋を行き来して暮らす隣人同士のニナとマドレーヌは、実は長年密かに愛し合ってきた恋人同士。マドレーヌは不幸な結婚の末に夫が先立ち、子供たちもいまは独立し、家族との思い出の品や美しいインテリアに囲まれながら心地よく静かな引退生活を送っている。2人の望みはアパルトマンを売ったお金で共にローマに移住すること。だが子供たちに真実を伝えられないまま、時間だけが過ぎていく。そして突如マドレーヌに訪れた悲劇により、2人はやがて家族や周囲を巻き込んで、究極の選択を迫られることになる。最愛の人と築き上げた平和な日常が突如崩れ去った時、自らの手で人生を取り戻すべく抗う彼女たちが選んだ答えとは──オフィシャルより

何が正しいのかは、突然訪れた悲劇によって大きく変わってしまう。少々乱暴なことであっても、愛する人を想う気持ちがそうさせてしまう、切なくも純粋。年齢は関係ないのだ。サブリミナル的に登場する幼少時の決まった池のある公園は、誰にもひとつはある大切な場所。


3. X エックス – X

1979年、テキサス。女優のマキシーンとそのマネージャーで敏腕プロデューサーのウェイン、ブロンド女優のボビー・リンとベトナム帰還兵で俳優のジャクソン、そして自主映画監督の学生RJと、その彼女で録音担当の学生ロレインの3組のカップルは、映画撮影のために借りた田舎の農場へ向かう。彼らが撮影する映画のタイトルは「農場の娘たち」。この映画でドル箱を狙う――。6人の野心はむきだしだ。
そんな彼らを農場で待ち受けたのは、みすぼらしい老人のハワードだった。彼らを宿泊場所として提供した納屋へ案内する。一方、マキシーンは、母屋の窓ガラスからこちらを見つめるハワードの妻である老婆パールと目があってしまう……。そう、3組のカップルが踏み入れたのは、史上最高齢の殺人夫婦が棲む家だった――オフィシャルより

ホラーというよりはコメディ。老夫婦に殺される若者たち。一番恐怖を感じていたのは老夫婦自身なのであった。まだトリロジーそのひとつ。私たちの秘密はなに。いっぱいの音楽、Blue Oyster Cultの “The Reaper (Don’t fear)” をバックに殺されるシーンが好き。


2. ファイブ・デビルズ – The Five Devils (Les cinq diables)

嗅覚に不思議な力をもつ少女はこっそり母の香りを集めている。そんな彼女の前に突然、謎の叔母が現れたことをきっかけに彼女のさらなる香りの能力が目覚め、自分が生まれる前の、母と叔母の封じられた記憶にタイムリープしていく。やがてそれは、家族の運命を変える予期せぬ結末へと向かっていくーオフィシャルより

冒頭から最後の最後まで、考察ポイントの連続で脳の活性酸素が足りなくなりそう。何度か観て謎解きしなさいということか。いっぱい言いたいことあるけどひとつ、タイムリープできる子供は他にもいたんじゃないか。それとは別に、なんとなく爺さんは全てを知っているような。。


1. ハッチング 孵化 – Hatching (Pahanhautoja)

北欧フィンランド。12歳の少女ティンヤは、完璧で幸せな自身の家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすために全てを我慢し自分を抑え、新体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。家族に秘密にしながら、その卵を自分のベッドで温めるティンヤ。やがて卵は大きくなりはじめ、遂には孵化する。卵から生まれた‘それ’は、幸福な家族の仮面を剥ぎ取っていくーオフィシャルより

本当に辛いよね。やりたくないよね。自分も似たような経験あるし。家族であるための振る舞いって一番苦手だったな。しんどい気持ちが生み出したモンスター。だけどそのモンスターすらも母親は受け入れてしまおうとするのだろうか、震えあがった。