焼き鳥屋からじいさんが千鳥足で出てきた。気分が大きくなっていたのだろう、それまでたまっていた屁を人目をはばからず路上でこきやがった。しかもものすげえでかくてキレのある、ビッって音のやつを。ふらふらとした足取りのくせして、屁だけは立派である。じじいになっても失わない生きる証っていうか、それこそソウルを感じさせてもらった瞬間だったよ。ただなあ、2度もしなくて良かったんだけどな。Autre Ne Veut を初めて聴いたのは、Olde English Spelling Bee から2010年に出たセルフ・タイトルのアルバム。この頃、OESBレーベルがそれまでのドローンやフリフォークな路線から急速にエレクトロ、80s志向にどんどん向っていた時で、地下感を保ちながらのスタンスだったから、このひとの情報もそんなに多くなく、なんか冗談半分な感じでやってるのかなと思っていたけど、3年の間で(Hippos In Tanks からEPはあったけど)ここまで煮詰めてくるとは思わなかった。前作の頃と比べると単純に表面的な音のクオリティが上がっているし、少々派手な感じはあるけど構成が分厚い。それと魂を入れた唄いっぷりを全面に出し切っていて、ヴォーカルが完全に目立つようになりましたね。前作のペラペラ感が好きだった人には、もう全く違うとも言えるし少々仰々しく思うかもしれないからどうでしょうね。でも、今回のこの豪腕感満点のなかからから沸き上ってくるソウルにはがっつり持っていかれるし、最近の流行りなベース・ミュージックやビート系のリズム・パターンを若干取り入れてはいるけど、前作からのエレポップっていうか、80s系のリズムセンスやフュージョン風な部分を継続していて、独自性も感じる。それでも結構エディット感がある曲もあって、Jamie Lidell の新作とダブるような雰囲気もあるけど、こちらはどこかダサかっこよさみたいなのを意識してくれてるので、隙があっていい。とはいえ、わりとギリっちゃそうなんで、ここらへんまででね。
8.0/10