S. van der Toorn – vervlogenheden i​-​xi

ARTIST : S. van der Toorn
TITLE : vervlogenheden i​-​xi
LABEL : Aural Canyon
RELEASE : 7/15/2022
GENRE : ambient, experimental
LOCATION : The Hague, Netherlands

TRACKLISTING :
1.vervlogenheid i
2.vervlogenheid ii
3.vervlogenheid iii
4.vervlogenheid iv
5.vervlogenheid v
6.vervlogenheid vi
7.vervlogenheid vii
8.vervlogenheid viii
9.vervlogenheid ix
10.vervlogenheid x
11.vervlogenheid xi

‘vervlogenheden’ という単語はオランダ語の辞書には載っていませんが、最初の部分は載っています。’Vervlogen’ は、英語では ‘vervliegen – bygone’ の過去形です。だから、このレコードの英語のタイトルは ‘bygones’ だったかもしれない。

‘vervliegen’ の意味は「蒸発する」であり、これはある温度での物質の分子状態と結びつけることができる。この現象は、非物理的な事柄にも適用できる。時間は一瞬で「蒸発」し、思考、感情、行動、記憶、行為の保存にも限界がある。それらは記憶へと溶解し、やがて記憶は粒子となり、その現在形であったもののパッチとなる。”bygones” という言葉は、その傾向がある。それはどこか悲しげで、ほろ苦く、色あせた色のリバーシブルなコートを着ている。物事は戻ってこない、それを知っている、そんな明確な性格を持っている。それは過去形のメランコリーである。

のこの11枚の録音は、消えゆくもののサウンドトラックかもしれない。回想のための音楽、一緒にいた時間、あるいは一人の時間、私たちがそうであったように聞こえる音。あるいは、消えゆく思考がこのように聞こえるのかもしれない。人生が過去へと超越する音、isがwasに、nowがthenに変わる音。カリブ海でウミガメとシュノーケリングしたときのこと、50年前の冬休みのこと、叔父と叔母のハイファイセットのこと、スポーツのこと、父親の川のこと……。いずれにせよ、’vervlogenheden i – xi’ は、あなたに未来ではなく、過去を旅させ、取り返しのつかないはかなさを感じさせることでしょう。