Top 50 Albums of 2019

今年もやりました、年間ベストです。
今年はレビュー・コーナーを一切投稿しなかったので、その代わりにコメントはちょい長めに書いたつもりです。なのでもうちょっと早く仕上げるつもりでしたが、遅くなってしまいました。まぁ、本日は冬至ですし夜が一番長いっとことは、じっくり、しっぽり音楽を楽むにはちょうどいいでしょう。

ではどうぞ!


50. Pom Poko – Birthday
バンド名や例のアーティスト絡み、そしてこの音楽性だと日本でウケないはずは無いと思ったけど、それほどでもないような、どうなんだろう。そんなことは抜きにしても純粋にデビュー作でこの技量の音楽を完成させたことがなかなかのものです。誰もがこの音楽を聴いて思い出すバンドがあるとは思うけど、それ以上とか以下ではなくて、彼らの世界観がちゃんと感じられることろがナイス。ややこしいようでキャッチーに聴かせてくれる巧さがあるんだよね。このぶっ壊れ感とポップさがどう深化していくかが見もので、変に落ち着いて欲しくない。

49. Barrie – Happy To Be Here

デビュー曲が出た頃から好きで、実際出るまでそんなに時間は掛かってないけど、待ち遠しかったアルバム。表向きヴォーカルの女性率いるバンド感があるけれど、後方を固める多国籍なメンバーがあって適度なトロピカルが出ているとのじゃないかな。でもその適度な部分がポイントで、あまりオリエンタルになってしまうと違うジャンルに成りかねないが、デビュー作とうこともあり、適度にインディ感が出ていていて良い意味で薄っぺらさがあるのが、逆に入る込める余地があり心地い良い。正直まだまだだけど、洗練される前に今が好きってことで甘めのランクイン。

48. Nilüfer Yanya – Miss Universe

このアーティストもデビュー時期の曲で期待していたけど、もっとアコースティックな路線だったのでアルバムアナウンス後に出てくる曲々に新鮮さを覚えて、出来上がった作品を聴いた時にはすっかり初期の頃の感じは忘れてしまっていた。まんまとやられてしまい自動アウト状態でしたが、冷静になるとこちらも完璧さがないことに気付くのです。言葉は悪いですがこの中途半端加減がポイントですが、この人の場合は基本ソロでなので根っからの部分をただ吐き出したしただけなのかな。でもライブ映像とか見る限りバンドメンバーをもうちょっと強化して欲しいかな。

47. Girlpool – What Chaos Is Imaginary

事前の情報で知ってはいたけど、来日ライブはノット・バンド編成の2人のみ。空調の音が聞こえるくらいの静寂とパッションによる時間は貴重な体験ではあったが、ビデオで観た他メンバーの演奏が無いことが残念ではないと言えばウソになる。もちろん主催者の苦労は十分に理解できるし、来日公演を実現させてもらえたことは感謝しかないでしょう。でもライブ後に改めて思うのは、2人のキャラクターを殺さずに生々しさを残しながらバンドの音に進化したことが、この作品の一番の魅力だったと思う。関係ないけど彼女達に限らず、ソロシンガー系バンドのいい人風ギタリストのテクってエグいよね。

46. SASAMI – SASAMI

バンド在籍も一瞬だったけど、ソロ活動開始後はギターと共にiPodのプラグインGarageBandとMoog 15で作った曲が評価されて今回のレーベルと契約してアルバム・リリースと、あっという間の出来事でした。しかし彼女の取り巻く状況はイケイケでありながら、肝心の音楽が暗いことで反比例的に調度よく収まった印象。僅かな時間ではありましたが、在籍バンドでの経験が影響されているのかなと思うところはありますが、自分らしさを作る上でこの暗さが必要だったのかな。でもこの人もライブ・バンドとの演奏だとアグレッシヴで曲の印象が違うんだよなあ。

45. Faye Webster – Atlanta Millionaires Club

フォトグラファーってこともあり、ホームページやインスタの写真がいちいちクオリティーが高くて、普段適当な写真しか撮らない自分でも惹かれるものがある。アルバムのアートワークも写真家の面が出ているのでしょうね。彼女の作品は今作初めて聴いたけど、前作は地元のヒップホップ中心レーベルで、これが既に3作目という事実にレーベルの存在意義を改めて感じのでした。それにしても過去の地下作品をさっと聴ける時代になったのは本当に便利だけど、デビュー作なんてカントリーだし、ヒップホップレーベル時代の同僚が参加していたのね、と随分経ってから気付くのでした。

44. Men I Trust – Oncle Jazz

パスポート盗難によるまさかの来日延期。でも結果的に例の台風と重なってたし、むしろよかったのかな。代替公演も来年決まったので、それまでにさらに聴き込み最中です。しかし、この作品はアルバムとしてカウントすべきなのか、なんだか曲が多すぎないか、コレクション作ではないのか、いやそもそもこのバンドのっていつもコレクション作品みたいなもんだよなと思い、最後の最後まで迷ってチャートインに決めました。そんな戸惑いを解消させて欲しいので、次はアルバムという単位を意識した、もう少し凝縮、色濃い作品を期待しているので、ちゃんとしたレーベルと契約して欲しいなあ。

43. Penelope Isles – Until The Tide Creeps In

アートワークは男性一人しか写ってないからソロ・バンドかと勘違いされそうですが、男女2対2のバンドであります。女性が2人もいるのに男性がメイン・ヴォーカルという編成がレアな存在ですが、女性がメインで歌う曲もちらほらとあり、アートワークの印象とさらにズレを感じる。そんなところで音楽の方となると堅実なインディロックでありまして、ギターやベースの音色とかはインディロックのそれでしかないですが、派手には盛り上げずに、じんわりとした展開で余韻と余裕を感じさせる音作りなのが巧いけど地味な存在になっているのかな。

42. Cherry Glazerr – Stuffed & Ready

毎年悩みながらも最終的に選外にしてきたので、今年は過去の作品分も含めてという意味でのチャートインです。これで4作目ですか、彼女以外のメンバーは毎度変わっていますし、もはやソロ・バンドのような見方もできるでしょう。しかし毎度メンバーが変わることで作品ごとの特色があるのも事実で、今回に関しては脇を固める男性コンビの技量が高いのか、プロフェッショナルな仕上がり。だがしかし、リリースからしばらくして観た生演奏や新曲ではゲストミュージシャンを入れて、違う雰囲気を演っていたので、メンバーを含めてまた変化がありそう。個人的にはPsychic Templeとのコラボ作での彼女の立ち位置が凄く好きだった。

41. Marika Hackman – Any Human Friend

彼女の作品をまともに聴いたのは前作が最初でしたが、そのアルバムではインディロック・バンドがそのままバック・メンバーを務めるという珍しいスタイルで、音楽性もインディロックでありましたが、今作は人気プロデューサーと共に制作されて、アートワーク通り包み隠さないオープンな作品になりました。前作のギザギザした感じからはずいぶんと丸くなってフレンドリーな関係が築けて親しみやすいのです。今作のテーマはセクシーとか何とからしいですが、このフランクさに罠があるのかと思いながら、セクシーって何なのかを再度勉強しなければならないと思っております。

40. Jesca Hoop – STONECHILD

作品を重ねるごとに、ギタリストかつシンガーソングライターとしてのアプローチが薄まり、爪弾く音色のみで歌うことが特徴ではなくなってきていたタイミングで、著名なプロデューサーとの仕事でほぼフォークシンガーではないことが決定的になった。ミニマルかアート整えて、ギターは残されつつも一部として組み込まれていてる。けれどもシンプルな構造であることには変わることなく、唄の部分が効果的に表現されていて深々とこの音楽に没頭してしまう。彼女の才能に疑う余地はないが、プロデューサーの偉大さを改めて感じさせる作品です。

39. Trash Kit – Horizon

普段情報を集める過程で厄介なレーベルが幾つかあり、リリースに気付けないことがあるのですが、その中のひとつがこのレーベル。面白い作品を出してくるので聴き逃しは厳禁ですが、ギリギリ間に合いました。結成から10年程経っていますが、メンバーそれぞれが別バンドでの活動の方が目立ってきてることもあり久々の作品。全体像自体に変化はないですが、その課外活動を活かして技術を向上させ難易度は上昇してる面もあるのですが、わちゃわちゃした雑なところが無くなったので、テンションを上げてから聴く必要がなくなったのでリピート率はおのずと上がります。

38. Snapped Ankles – Stunning Luxury

雪男というかムック的な身なりでのパフォーマンスをしていて、ライブ中は熱くないのかなと思うんですが、見た目の奇抜さが音楽にも影響しているとするならば、そのまま頑張って頂きたい。だって抜群に変な音楽作るんだもん。前作は森林で今回は都会や郊外がテーマだそうですが、ヤニっぽい音をエレクトロニクスと混ぜ合わせたことで都会派を気取ってるようですが、そもそもが間違ってるので都会でも完全に地下または裏通りでしか存在できてません。一見さんではなかなか扉を押すことはできないであろう怪しいお店。でも一度踏み入れると抜け出す事が出来ない魔物が潜んでいます。

37. Modern Nature – How To Live

互いに別バンドでの実績を経て活動を共にしたデュオは順調に作品を重ねてきましたが、残念ながら昨年解散となります。しかし間髪入れずに新たなメンバーを揃えてこのバンド活動をスタート。今回もバンド歴のある面々が揃ってますが、出身バンドの名前からどの様な音楽になるのかと期待より興味の方が先にありましたが、人数が多い割には手数は少なくミニマルな路線に収まったので少し意外だった。でも作品を聴きながら紐解いていくと、それぞれのバンドの音が実は隠れていると気付くのです。近しい感覚を持った人達が集まったとは思うけど、人数分以下の音に落とし込んでしまう統制の取れた仕上がりは、とても初顔合わせとは思えない。

36. Ruth Garbus – Kleinmeister

彼女が在籍してきたバンドのメンバーを改めて見ると、その後のソロ活動とか作品とか、好きなのが多いよなあと思い、いいバンドだったと再評価をひとりでしているところです。バンド在籍の合間にソロ作も出していましたが、ここ10年はソロ活動だけでたまにEPっぽいのが出てました。そして久々のフル作となった本作ですが、ただただギターと歌うスタイルに変化はないですが、過去の究極にローファイな音楽と録音から比べたらこれでもかなりクリアーになってるのです。一番の変化はアコギからエレキに変化、またはエフェクトを加えた点だと思いますが、全体の音質が上がったけどギターはぼんやりとしたのが燗酒を飲んでる様で気持ちいい。

35. Chastity Belt – Chastity Belt

今年初めにメンバーのソロ作が出たのは、引越しで離れ離れになったからとの理由で、その他のメンバーもソロ活動に向かうなどと、もうバンドとしての活動は無いのかと思い込んでいました。実際に一時期は活動休止状態にあったようですが、誰という事なく再び集まりこの作品が生まれるのでした。そんな背景を知りながら聴くのもあるけど、とてつもなく感傷的な曲ばかりで胸がしめつけられるけど、これこそがメンバー全員で共有出来る音楽だったのかも。元々は違うバンド名で始まったけど、今回のセルフタイトル作で初めてChastity Beltになれたのかな。

34. DIIV – Deceiver

デビュー作でのほぼ歌わないスタイルは、続く作品から参加したメンバーにより徐々に変わって行く。しかし、前作後に一時活動の休止を余儀されなくなってしまい、さらにはメンバーの脱退もあり再び4人組になっての復活作。デビュー作のような走りまくるスタイルはほぼ無くなり、今回はほとんどが遅い曲で構成されるようになった。その代わりに歌う面積が広がって、瞬発力は無くなったけどジリジリと1曲を楽しませてくれる。なんとなくだけどいい意味で一旦リセットされたようで良かったんじゃないかな。現在のラインナップで今後も頑張って欲しいね。

33. Great Grandpa – Four of Arrows

シアトルといえばグランジ。ブームから既に何年経つのだろうと考えると、自分のおっさんさに恐ろしくもなってくる。過去に自分で書いたものを見返すと、このバンドのデビュー作時には出身地を意識してグランジと形容していたようですが、どちらかと言うとフィラデルフィアのバンドじゃないのかと思える。時代時代に音楽聖地っていうもんは移り変わってきたけど、もうそういうのは考えなくていいのかな。要するに過去を含めた現在のインディロック要素が凝縮されているど真ん中な作品なんだと思う。

32. Stella Donnelly – Beware of the Dogs

今さっきライブを観てきたところです。本作の構成がひとり歌うものとバンド編成ものがあったのでどうするのかなと思っていましたが、前半ほぼひとり、途中からバンド登場、一旦ひとりに戻って最後にバンド登場という分かりやすい構成でした。ギターのチューニング時にプロフェッショナルと自慢気でしたが、それよりも改めて歌がうまいよ。今年色々な歌うまい系シンガーのライブは観てきたけど、共通して作品との再現性が高く、普通にそのまんま歌えちゃうんだけど、彼女はその中でものパワフルな歌いっぷりでギターのみでも十分楽しめました。

31. Charly Bliss – Young Enough

正直なところリードシングルが出た頃は大胆な変化に戸惑いがあったが、2曲目が出た頃にはすっかり新作のモードになってる自分がいる。そして全てが明らかになった頃には自然と受け入れ、前作と新作の曲を織り交ぜながら行う映像を観ても何の違和感も感じなくなっていた。初めは大きな変化と思えたの不思議だが、バンドの音として丸め込まれているとは思う。今思えばデビュー作の方向性と同じくしてそれ以上の作品を作るのは難しいかったのではないだろうか。あれはあれで既に完成されていたのだなと、本作を聴いて再確認しました。

30. Jenny Hval – The Practice of Love

手を替え品を替え、作品の度にアプローチを変えながらですのでリリース頻度よりは飽きはないですけど、さすがにリリース多くないかなと思って来た頃に出た本作では、そもそも得意とするエレクトロニック路線ということで、あっさり無抵抗のまま受け入れてしまった。はっきり言って、ここ最近の作品の中では最も手抜きで簡単レシピのような内容なのですが、ビートがハッキリした規則性の高い音楽と彼女のヴォーカルは、辛子明太子と白飯級な抜群の相性の良さで、するすると耳が進んでしまうまさに無限状態であります。

29. Chelsea Wolfe – Birth Of Violence

ウィッチハウスから始まりポストメタルなどを通過し、今作ではゴシックなオルタナ・フォークに到達。最近ではゲストシンガー枠での活動も目立ち人気者ですが、本作は自宅に籠って制作した彼女のフォーク・ルーツへ回帰したものだそう。ルーツの時代は全然知らないけどウィッチやゴスなど、何かと黒い世界が付きまとうキャラクターではありますが、シンガーソングライターとしての領域に入ってきた分岐点的な作品になる可能性があります。彼女にはこのまま危険な香りがするシンガーソングライターとして今後も期待したいです。

28. Brutus – Nest

映像を観てからハマってしまう典型的な例で、女性がヴォーカル兼ドラムというシチュエーションが反則ですよ。でも脇の男性陣の謙虚な姿もいいんだよね。でも映像を観る前にこの音楽に惹かれていたからこそ、演奏シーンを観る機会に遭遇したんですよね。ブラメタの一歩前で、ややメタル寄りという微妙な音楽性ですが、ヴォーカルがメタルのそれではなくてインディロックの様な未完成感があるのがいいんだよね。アルバム出た頃に欲しいと思ったら売り切れていたTシャツがさっき見たら再入荷していて、今年中に買えてスッキリしたー。

27. Oh Sees – Face Stabber

もういい加減いいでしょ。って思えばそれまでの時期にはとっくに来ているわけですが、なかなか諦めさせてくれません。今回もツインドラムは継続してるようですが、また人は変わっていますね。今までJohn Dwyer以外何人の人が在籍してたのか、もう良く分かりませんが今回のメンバーは自分のレーベル所属バンドから引っ張ってきているのでファミリー色は強いのかも。2019年版Oh Seesの特徴はタテノリなプログレ、サイケロック、曲長い、そしてややラフってところで、2017年、2018年ビンテージを踏襲しつつ粗さを残した感じかな。さて2020年はどんな出来栄えになるでしょうね。

26. Wand – Laughing Matter

2年前にトップにしたのは、ちょっとやりすぎたかなと思うところはありましたが、出てきた頃からそこまでの過程とかに思うこともあっての結果でした。今回はアルバムの間にEPが挟まっていたし、前作よりは冷静に聴ける上限が揃っていたので、だからってことではないですがこんな位置にしてみました。冷静に聞けてしまった理由にそのEPの存在が大きくて、EPは前アルバムからまた一歩進んだ感があった内容だったのに対し、今作はそこからの変化は少なくEPを拡大させたような内容なのだったのが影響してるのか、驚きの面は少なかったかも。でも後半のヘヴィークラウトな感じは無かったか。

25. The Hecks – My Star

正直前作の記憶は全く無くて完全なノーマークだったので、どんな感じの作品だったのだろうかと後追いして聴いたところ全然違っていてポスト-パンク-ガレージなカサカサした乾きまくりな音だった。そんな路線だったのに、えせディスコの様な雰囲気に変わったのは、前作からの間にシンセ担当が加わったようで、それが大きく影響したと思われます。でもそれだけじゃなくて、シンセ要素以外にプログレ-産業ロック-AORと、ポストパンクなのに80年代を強く感じさせるようにった根本の音作りも全然違ってるし、聴き比べてバンド自体が生まれ変わったような印象でした。

24. Olden Yolk – Living Theatre

別プロジェクト・バンドとしての臨時的な活動と思いましたが、昨年に続き新作を出してきました。前作の時点でも結構好きだったのですが、なんでまた直ぐに出してくるのかなと思いましたが、このバンドとして一段上のレベルに到達したので、もうひとつ早く出しておきたかったのかなと思うのです。このスピードラーニング並みの成熟の速さは、よっぽど相性が良いからなのか、才能なのか分かりませんが、ガス抜き的な活動であったのにメインバンドとして生まれ変わってしまうのではないかと思い、心配してしているところです。だって元々在籍バンドとしての新作も聴きたいのですから。

23. Hand Habits – placeholder

順調にレーベル移籍を果たしての2作目ですが、草刈り場となっている元レーベルが心配な昨今であります。さてこのシンガーでありますが、年末になって今作の曲を有名シンガー達がカバーをするという、ちょっとした事件的作品が出たところからも、アーティスト側からも評価が高いということで更なるビッグディール移籍もあるかもしれません。決して歌上手い系シンガーじゃないけど、それ以外の部分で惹きつけられる部分があるのはリスナーの自分でもなんか分かる気がする。でも良い部分を表現する適当な言葉がなかなか見つからなくて、なんかのいい、何回もいい、それだけなんです。

22. Julia Jacklin – Crushing

本作の前にバンドを結成してリリースした作品があったので勘違いしそうになりましたが、元々ソロ・バンドがスタートでこれが2作目でしたね。前作からバックバンドのメンバーが総入れ替えとなってるようですが、同じフォーク、同じインディポップでも前作は等身大感があってそれはそれで良かったけど、安定した音作りになったことで、ソングライターの面が浮き彫りになった。次から次へと魅力的な女性シンガーが登場する現在のなか、彼女のどの部分に惹かれるかというと、行き過ぎず地味すぎない、可愛すぎず怖すぎない、など実に丁度良さが去るとこだと思う。

21. Helado Negro – This Is How You Smile

レーベルがここだったので、普段とは違う実験系の作品なのかなと思ったら、この名義路線での今までと変わらずだったので、前レーベルからは出してもらえなくなってしまったのかなと推測していたら、ちょっぴり切ない気分にもなりましたが、彼は今回の様な無理しないでエレクトロニック主体の方がしっくりくるよ。あと無理にラテン色を出さなくても十分濃いから、あっさりしてるくらいで丁度いい。ビート系名義での活動はすっかり過去のものとなっていますが、この名義で今まで一番好き。でもこのアートワークは好きじゃないなあ。

20. Possible Humans – Everybody Split

もともと兄弟でやっていた活動に、他のバンドが合体したような感じで結成されたバンドようですが、以前の活動時代の音楽がどのようなものか確認してませんが、これがデビュー作というのにベテラン風。オージーのDIY系バンドによくあることですが、デビュー時の若々さってがあんまり無いよね。特にこのバンドはヴォーカルがオジサン臭いのでより一層オールド・バンドっぽい。実にオージーっていう縦ノリの展開に乏しいスタイルですが、ほんの少しのひねりで嬉しくなったり、哀しく聴こえたりするから利点はあるのです。

19. The Stroppies – Whoosh

こちらのオージーもファースト作でもベテランっぽさがやっぱりありますが、それはそのはず、メンバーはひとつ前のバンドに在籍するメンバーを始め、有名どころのバンドに在籍する人達が集まって結成されている実績組なのですから。でも女性ヴォーカルも入るからから、こちらの方がヤング感はやや上。どこからどこまでもがオージー感で敷き詰められており抜群の安定感と、ふっくり、ふんわり、やわやわな質感でノー・ストレスで聴けるのがとにかく心地良い。芋焼酎の湯割りと共にホカホカになって自宅で聴いてるのがかなりの極楽です。

18. B Boy – Dudu

ポストパンク全盛期で似たようなバンドがどんどん登場するので、そういった音楽が好きなだけにちゃんと聴き分けれるように特に注意して聴いているなか、今年ではこれが一番よかったかな。王道中の王道と言えるシャカシャカとした音色に縦軸と横ばいな構造が基本形ですが、そこに意表を突く仕掛けを時折混ぜてくるので、早送りをしないで聴いていて良かったとクジに当たったような気分になれます。そうは言っても全15曲で37分ですから我慢して、ちゃんとフルで聴いて下さいね。

17. Fontaines D.C. – Dogrel

D.C.がまだ付いていない頃のシングル曲が出ていた時点で既に完成度が高く、注目もされていたので今回がデビュー作であってもこれくらいに仕上がることは予想出来ていたので驚きはあまりない。しかし近年このような音が増えていて、更には広く評価されていることの方がちょっと驚く。時代の音といえばそうかもしれないが、多様化した音楽のなかでも彼らのような存在は少し特異に思えるのです。もちろんその実力に疑う余地はありませんが、一過性ではなく、ずっと評価されることを願っています。

16. Fly Pan Am – C’est ça

この作品のリリースを知った時の素直な感想は、まだやっていたんだでしたが、作品を聴いた瞬間、え、こんな音だったっけ?にすぐ変わりました。なにせ15年も音沙汰が無かったので単純に記憶が薄れている、年齢による影響があるとは思いますが、ここまで明らかにシューゲイズでは無かった事ぐらいはさすがに分かります。前作までの実験性や狂気と反復する様式は継続されていますが、その合間にシューゲイズまたはブラックメタルと呼べるようなものを掻き混ぜた異境な世界観への変化に驚いた。加えて15年間分のサウンドワークの進化面にも注目。

15. Moon Duo – Stars Are The Light

しかし随分思い切ってきたなと。途中に出ていたソロ作がいい意味で影響したかもしれませんが、ここまでエレクトロニックでシンセ、更にはディスコと、こんなに可愛らしい音になるとはね。活動歴約10年で7作目。これまで全ての作品を聴いてきたつもりですが、今までで一番の変化です。一通りもふもふとした音で瞑想系ではなくて極楽な癒し系。たぶん今回も途中参加のドラマーは存在するようですが、表向きはこの2人によるプロジェクトなんだけど、今作で初めてデュオと呼べるような作品になった気がする。

14. Vanishing Twin – The Age Of Immunology

これで2作目なのにこんなに奥深い世界、当然若手バンドの音ではありません。メンバーの経歴を再確認すると、そういえば最近名前を聞かなくなったバンド出身の人達が集まってますが、みんな濃いバンドにいた人達ばかりだなあ。表向きはSteleolab, High Llamasの系譜にあるサイケポップなのですが、そんなに甘いものではなくて比重が低く、闇のあるところがこのバンドの真の姿かもしれません。罠ではないけど、このような必然だけではない作品こそがアルバムとしての意義があると思うし、みんなも大いにだまされて欲しい。

13. Ty Segall – First Taste

毎年恒例で、ほんとしつこいと思われるかもしれないけど、だってしょうがないじゃん。こちらとしてもそろそろそんなに変わってないでしょって思って聴いたらそうでもないんですから。前作の時にヒップホップが如何の斯うの言ってたんで、そんな感じへの気構えは出来ていたのですが、蓋を開けたらヒップホップというよりはソウルかブルースだった。少しずついい歳の取り方をしている音楽だと思う。話はずれるけど、彼とはコラボ作品とか初期の頃からの盟友のアーティストが今年同じく新作を出したけど、全然良くなくてガッカリだった。そう点も含めのてコイツは違うぜって感じるのでした。

12. Sharon Van Etten – Remind Me Tomorrow

このシンガーソングライターと言えば、2012年のアルバムの印象が強くて、エレクトロニックな先行曲を聴いた時にはどういう事だと戸惑いましたが、案外流されやすいのですんなり受け入れていました。逆にアルバムを聴いたら昔っぽさも残っていて、むしろそんなのは無くても良かったのじゃないかと思うほどの心境の変化でありました。アートな方向でも似合っちゃうんだなと器の大きさを感じましたけど、前作から5年も待たされれ、女優業に専念しちゃうのかなあと心配だったので、この作品が出たことだけで十分嬉しいのだろう。

11. Jay Som – Anak Ko

前作で見せていた片鱗を更に開花させたような作品です。個人名と勘違いされがちですが、一応バンドの形態であることが確かなものになってきた。シンガーソングライターとしての部分は実は半分ぐらいで、楽曲やインスト部分などの方が注目すべき点でで、歌のない部分が結構多いし、歌唱力で勝負するアーティストではないから総合力で勝負しているいえます。でもそれは決してマイナス面ではなく、無限の可能性を秘めているということであり、その部分での進歩がないと生き残りはできないのかも。でも今の所は順調、なんの問題ありません。

10. (Sandy) Alex G – House of Sugar

初期の頃、つまりまだ名前が短くても良かった時代の作品がすごく好きで、現レーベルに移ってからもそれなりに好きではあったけど、前作までは着地点にグラつきがあって落とし所が見えていない部分があったと思う。しかし本作では大体は繋がり、アルバム全体での統一感が感じられ自分が好きだった頃のベッドルームな音ではないけど新たな次元に到達した。人脈による影響はあるでしょうが色々な要素があって音楽は進化するし、彼にはこれから先もある種の音楽をリードする役目があると思う。名前が長くなった分の価値にやっと到達したかな。

9. American Football – American Football (LP3)

17年ぶり作となった前作は再会的な意味合いであったように思えるのは、今作の内容が影響しています。正直なところ時代の音ではないし、昔を懐かしむにも別バンドの活動は継続して色々あったからブランク感は実際のほどは長く感じず、聞き慣れている音ではあった。だけどこの作品は新しい音ではなくてもなんか聴きたくなるのは、過去の2作と比べて高い質にあるからだと思う。つまりAmerican Footballであろうがなかろうが、この音楽自体が素晴らしく美しくて何度も聴きたくなる。でもこの作品はこのバンドでしか生まれなかったのも事実。

8. Better Oblivion Community Center – Better Oblivion Community Center

最近よくある突然リリース系のアルバムでしたが、通常はある程度準備をしておいてからアルバムに入るのが定石なので、リリース側の作戦ではあっても一旦構えてしまうところはあるんですよね。そしてそのまま聴かずに放置して忘れてしまう、なんてことも少なくないです。こちらも暫く放置していたけど、ちょろっと聞くタイミングがあってからは、あっさり白旗でした。一般的なコラボ作よりも互いの良さを活かし、本当に丁度良く収まっているのが、よくある付け焼き刃的なコラボ作ではなくて意味あるものに仕上がっているが降伏の理由です。

7. Cate Le Bon – Reward

最近のコラボレイターとの活動辺りから徐々に壊れだして、前作では地下系、珍妙な領域に入ってきたなと思っていたのですが、あっさりレーベル鞍替えで少し表舞台に帰って来た感じです。とはいっても過去への巻き戻しではなく珍妙さは残しておりまして、ここ最近の彼女らしさは保たれている。フォークなアプローチに始まった音楽活動ですが、ソロプレイよりも誰かが居ると面白い効果が出るんじゃないかな。今回はピアノの演奏を中心に作られていますが、脇を固めるミュージシャンは結構一流がそろっていて、ソロ作であるけどバンド演奏の部分を注意して聴くと面白い。

6. Steve Gunn – The Unseen In Between

在籍していた濃いサイケフォークなバンドやその頃のソロ作、コラボ作などを聴いてきたものとしては、現在のような路線に到達するとは想像もしなかった。前作でソングライターとしての片鱗を見せ出しましたが、まだシンガーよりもギタリストとしての存在が上回っていたと思います。しかし、今回は歌が前面に現れ、ギタープレイはフォーク系シンガーの領域に抑えている。更にアメリカーナなフォーク過ぎずに、オルタナフォークと呼べるようなモダーンな構造をしていて、アートワークのイメージよりはバンド的なのが際立って良かった。

5. Angel Olsen – All Mirrors

前作での到達でほぼ満足してしまっていたので、本作が出た頃はそんなにピンとはきていなかった。しかし時間の経過と共に聴く回数が増えていき、すっかりお気に入りになった頃には前作の曲が思い出せないくらいの状況にまでハマっていた。でもこの人の音楽っていつもそんな繰り返しで、初っ端からガツンと持っていかれることは少なくて、徐々に徐々にはめてくる魔力のようなものがありますよね。今回も2枚のアルバムをミックスして聴いているかのような構成ではありますが、最終的にはひとつの作品として成立するところにこのアーティストの才能を感じます。

4. Luke Temple – Both​-​And

相変わらずいいよね。ソロ活動としてもそれなりのリリースになってきましたが、今回レーベル変わっちゃたのね。でもこのレーベルは面白いと思うし別に悪くないと思います。音職人的な部分は作品を重ねるごとに緻密なものになっていて、なるほど、そういうやり方あるのねみたいな、感心してしまう場面が多々あります。しかも抑えの効いた音世界でのこのクオリティーは、そうそう出来るものではないよね。普段生活していて音楽の価値観が全く合わない場面なんてよくあると思うけど、この音楽なんてそんな奴らには一番解らないと思う。だからこそこの音楽を知っている人は誇りに思うべき。

3. Weyes Blood – Titanic Rising

一時在籍していたちょいアヴァンなサイケバンド出身のイメージが先行してしまって、実はこんな音楽もやるんだなとギャップ面を楽しんでいたところがありましたが、今回の徹底的なノスタルジア・ワールドは痛快でしかなかった。でもただレトロに終始するのではなくて、ループシンセなどのマニア泣かせな音作りを継続しているので、古い音楽を聴いているような感覚になることは回避している。それでも、ただいい音楽になってしまいそうなギリギリなところはあるので、適度なアヴァン精神は今後も保ち続けて欲しいですね。

2. Big Thief – U.F.O.F.

前年に出たソロ作と本作の何が違うのか、なぜ一旦ソロ作をリリースする必要があったのかを考えるも、明確な答えに辿り着けないが言えることはただ一つ、バンドの素晴らしさ、重要性を再確認したのではないだろうか。彼女の存在に集中してしまいがちですが、明らかにソロ作とは違うバンドの作品になっている。特にバンド編成によるソロ作からの曲がそれを分かり易く表しているし、レコーディングによる音作りを施した完成度がある。このバンドは曲やサウンドがそもそもが生々しいので、ある程度プロデュースされると高いレベルでまとまるのでしょう。

2. Big Thief – Two Hands

一応2部作ということで聴くことはしていましたが、第1章で満足していた自分がいたので、そんなに入ってこなかったけど、じわじわとやってきて結局好きなっている。こちらは彼らの最大の武器である生々しさをそのまま表現したものですが、フォークな曲よりも骨太なバンド音で構成された曲を聴いた時に、ほぼ一発録りでこの仕上がりとは改めてこのバンドは巧いなあと思った。生録りなので若干まとまりにはかけるのですが、実際より短く感じるようにサクサクと聴けるのはこちらの方でした。ということで変則的ですが同順位とさせて頂きます。

1. Aldous Harding – Designer

先に断っておきますがライブを観たからこの順位ではありません。確かに今年観た中では一番だったし、もう感動しかなかったけど、このアルバムが出た頃に今年はこれかなあって思ってました。前作で一気に注目を浴びるようになったけど、そこからまた一歩前に進んだ作曲の独創さに磨きがかかっている。独創的なのはキャラクターの方が話題になるとは思うけど、そんなの関係なしに特別な存在だし、こんなアーティストはなかなか居ないでしょう。ライブの最後にやった新曲を聴いた感じでは、次作はまた違った感じになりそうなので今から楽しみですね。

昨年から更にストリーム、サブスク・サービスが浸透したと思いますが、全部が全部、ひとつのサービスで聴けないのが選択に悩むところですよね。でもCDやレコード買わなきゃ聴けな時代からしたら、全部に入っても安いもんですよ。あとは使い易さとか音質とかそういうところになるかもしれないけど、結構違うよね。なので最近は機能的にはSpotify、聴くのはDeezerであります。

ではまた来年!