シカゴのポストロック界の重鎮たちが集結して1990年代後半に結成されたアコースティック・スーパーグループ Pullman が、約25年ぶりにニューアルバム『III』をリリースします。Tortoise の Ken “Bundy K.” Brown と Doug McCombs を中心に、Come の Chris Brokaw、Rex の Curtis Harvey が集まり、後に Tim Barnes(ドラム)が加入して核となるラインナップを形成しました。彼らは1998年のデビュー作『Turnstiles & Junkpiles』で、John Fahey や Gastr del Sol に例えられる静謐なギターの絡み合いを披露。2001年の『Viewfinder』では、パーカッションやエレクトリックな要素を加えつつも、フォークの精神とポストロックの手法を融合させた、独自の素朴で映画的なインストゥルメンタル音楽を確立しました。
Pullman の活動は長らく休止状態にありましたが、新作『III』は友情と不屈の精神によって制作されました。アルバムの制作は、ドラマーの Tim Barnes が2021年に若年性アルツハイマー病と診断された直後にスタート。病状が進行する中でも、Barnes と Brown は、Barnes の音楽的な仲間たちを巻き込みながら、2021年から2023年にかけて共同作業を続けました。当初はコンピレーションのための1曲から始まったこのプロジェクトは、やがてフルアルバムへと発展し、Brown が編集とミックスを担当しました。先行シングル「Weightless」は、そのタイトル通り浮遊感のある7分間の楽曲で、循環するアコースティックギターでフォークを土台としたポストロックの構築物を作り上げています。
『III』は、Pullman のトレードマークである親密さと空間性を受け継ぎながらも、彼らの仕事を常に定義してきたコミュニティの精神を体現しています。このアルバムは、単に彼らのユニークな美学の継続であるだけでなく、音楽が持つ持続力と、困難に立ち向かう人々の記憶、粘り強さ、そして優雅さの静かな重みを伴って響きます。Barnes の闘病をきっかけに、過去のコラボレーターたちを巻き込みながら制作された本作は、メンバー間の深い絆を示すとともに、彼らが確立したアコースティック・インストゥルメンタルというジャンルにおける、新たな金字塔となることが期待されます。

