Lilacs & Champagne – Fantasy World

前作『Midnight Features Vol.2: Made Flesh』から約10年。奇妙な脱力感、感傷的なテレビ音楽、そして子供たちの合唱が、バンドがこれまでに作り出した中で最も黒い恐怖に満ちた音楽を煽り立てる『Fantasy World』は、超越的でありトラウマ的でもあります。

Grailsの創設メンバー2人（マルチ・インストゥルメンタリストのEmil AmosとAlex Hall）を共有しているにもかかわらず、『Fantasy World』は彼らのコア・グループと周辺的にしか似ていません。「Dr.Why」や「Last Frontier」のような最も地味なトラックは、グレイルズの人気シリーズ「Black Tar Prophecies」の病的な孤独に近い。しかしLilacs & Champagneは、初期のレコードの意味合いを誇張し、生楽器とサンプルを同量の敬意と軽視をもって巧みに取り入れることで、音楽史のメルヘンチックなアレンジを加速させています。

これまでは主にインストゥルメンタル・ヒップホップ（J Dilla、Clams Casino、Madlib）に隣接する領域に存在していたLilacs & Champagneの『Fantasy World』は、伝説的なサウンド風刺主義者であるNegativlandやSevered Headsの流れを汲む、遊び心溢れるテープコラージュ・カルチャー・ジャマーとしての深い系譜を露呈。子供がドル・ストアに入ったときのような感覚。目新しい玩具、食器、パーティーの飾り、洗面用具がありえないほど高く積まれた無限の通路を発見した瞬間の幸福感は、やがて自分たちが実は色とりどりのゴミの山の中の危険な観光客に過ぎないという圧倒的な認識へと変わっていく。そんな山々の中から、好奇心と混乱のモニュメントを型どったのがLilacs & Champagne。