JOBS – Soft Sounds

ARTIST :
TITLE : Soft Sounds
LABEL :
RELEASE : 9/29/2023
GENRE : ,
LOCATION :

TRACKLISTING :
1.List the Creator Twice Part 1
2.Ask New York
3.Nite
4.Some Kind of Fog
5.Soft Sounds
6.There is Differing
7.You Are the Object
8.Weuhl Umennh Zeuhl
9.List the Creator Twice Part 2
10.Allure

観客に奇妙なものへの入り口と、普通からの出口を与える。このエートスは、ポップ志向のエクスペリメンタリスト、を導いており、彼らの最新フルアルバム’Soft Sounds’の至るところで聴くことができる。このアルバムは、カルテットにとって創造的な飛躍を象徴するもので、有機的でユニークな人間的ジェスチャーと正確な反復を融合させ、フォークソング、IDM、1970年代のジャズ・フュージョンの遠い響きを持つ全体的なサウンドを作り出している。しかし、これらの前例やアルバム・タイトルから連想されるような控えめで心地よい意味合いとは裏腹に、’Soft Sounds’は大音量で演奏するのに最適なフル・スペクトラムのサウンド体験であり、明瞭で切迫感のある楽曲が満載だ。

ドラマー、Max Jaffeがブルックリンのカルチャー・センター、パイオニア・ワークスでレコーディング・レジデンスを行った際に録音されたこのセッションは、カルテットにとって、創造的なパートナーシップを支え、最も重要な作品の原動力となっている、直接会っての相互作用への歓喜に満ちた復帰となった。このセッションは、ジャッフェがグループのレコーディングとミックス・エンジニアとして指揮を執る初めての機会でもあり、同時に彼のハイブリッドなエレクトロ・アコースティック・ドラムキットを、’Soft Sounds’を支える多くのシンセサイザー、サンプラー、エフェクトの司令塔として使用した。バンドは、ギタリストのDave Scanlonのメロディ、ベーシストのRo Lundbergのハーモニック・ストラクチャー、そしてヴィオラ奏者のJessica Pavoneの歌詞のラインだけを持って、これらのセッションに臨んだ。比較的ささやかなアイデアしかなかったにもかかわらず、レジデンスによって与えられた完全な自主性の感覚によって、彼らは作曲、オーケストレーション、レコーディング、編集、ミックスを半同時流の状態で行うことができた。

セッション以外では、’Soft Sounds’の制作は、JOBSのメンバーそれぞれの人生の大きな変化と重なった。何人かはアメリカ中に引っ越した。家族構成は大きくなったり小さくなったり変化した。4人のメンバー全員が、音楽的にもそれ以外でも、それぞれのキャリアを前進させた。Lundbergにとって、この音楽は自分たちのジェンダーに対する見方の広がりとともに発展し、それがこのアルバムへの貢献にも影響を与えた。”There is Differing”の歌詞は、性別や自己と他者との隔たりをめぐる、時に硬直した英語の二元論と戯れ、それを押し進める。一方、”Allure”や “You Are The Object”のような曲は、ハイパーポップの輝ける光SOPHIEのように、微妙なヴォーカルのピッチシフトや加工を使い、自分の音のアイデンティティを広げている。

描写というアイデアは、’Soft Sounds’全体を通して貫かれている。リリックでは、説明とデータが “List The Creator Twice”のパート1と2のような曲を支配している。Alvin Lucier(アルヴィン・ルシエ)を彷彿とさせる温かみのある冷静さで、Scanlonはこう歌う。”おそらく、私たちが構築しているのは記述だけなのだろう。””作り上げられた住居の中で可能な行為について、真摯な気持ちで実際の記述をする”。アルバムの冒頭を飾るパート1では、浄化された明るいレコーディングによって、そしてパート2では、アルバムの最後の3分の1を形成するスタジオ・ジャムの延長の成果物として。”手をつないでいる間、私たちは他の人の手を感じ、また自分の手が握られているのを感じる。その感覚は、ひとつのタイプの体験である。2人が手をつないでいる写真は、その感覚を描写している。「その描写は、ある経験へのジェスチャーかもしれないが、描写の解釈は、ユニークな出来事なのだ」。

‘Soft Sounds’全体を通して、音のパレットは各曲が適するように拡大したり縮小したりする。JOBSの音楽では、マーク・ホリス・タイプの抽象性が、ジャッフェのマラウイ滞在にインスパイアされたグルーヴと心地よく同居している。その没入感のある音空間は、池田亮司のスピーカー・テスト・ワークを彷彿とさせ、”ブロステップ “の無性的な再構築を思わせるソフト・シンセの揺らぎによって相殺されている。JOBSの流動的なアプローチは、このように馴染みのあるものと異質なものを並べ替えることで、遊び心に満ちた驚きと深みのある感覚を明らかにしている。’Soft Sounds’は、JOBSの成熟と自己実現という新たな境地を象徴している。