Alex Zhang Hungtai が Shelter Press への移籍を発表し、4月10日にニューアルバム『Dras』をリリースします。かつて Dirty Beaches 名義でローファイなロカビリーやノワールなサウンドを世に送り出し、カリスマ的な支持を集めた彼ですが、本作ではその過去のイメージを完全に脱ぎ捨てた、静寂と可能性に満ちた新境地を提示しています。
2019年にモントリオールの聖ジョセフ礼拝堂で録音された今作は、パンデミックの数年間、彼の手元で眠り続けていました。単なるサックスのソロ作品という枠を越え、タイトル曲「Dras」では引き裂かれたメロディが重厚なドローンへと変貌し、金属的な光沢を放つ不協和音が精神の深部をなぞります。Dirty Beaches 時代の衝動的なエネルギーは、ここでは自身の内面風景と対峙するような、触覚的で容赦のない音の探求へと昇華されています。
教会の残響を活かしながらも施されたデジタル処理は、サックスの息づかいという人間的な要素を損なうことなく、未知の空間美へと変換しています。終曲の「Mazil」に見られる低く唸るような共鳴は、深い引力の中で言葉のない呪文のように響き渡ります。鋭くエレガントな刃で魂を切り裂くようなこの孤独な記録は、私たちが今いる場所とこれから行くべき場所の境界線を照らし出す、普遍的な「精神の地図」となっています。

