Shabazz Palacesによるリードシングル「Ahh World (I Won The Alpha Bet)」は、重厚なビートが重密に打たれるメディテーションのようなトラックです。中心人物であるIshmael Butlerが全知の語り手となり、ファンタジーを交えた三人称視点から自身の人生と卓越した存在への昇華を語り、成功した人生のための規範となるルールを提示していきます。彼が提示する成功の基準は一人の人間の品格や誇り、高貴さといった内在的な価値に結びついており、卓越したスタイルと同時にブレない品格と誠実さを感じさせる象徴的なオープニング・トラックとなっています。
本楽曲が収録されるニューアルバム『It’s a Style Sport』は、Sub Pop Recordsからリリースされる作品であり、アヴァン・ヒップホップとフリーフォームなポエトリーを展開してきた彼らの実験精神を踏襲しながらも、これまで以上に内省的で開かれたアプローチを見せています。現代のSNSを中心とした音楽ビジネスにおける表面的なブランディングに対し、かつてのラップ・ゲームが持っていたタフでフレンドリーな競技性や真のショーマンシップへのオマージュを捧げており、過去のキャリアから得た知恵と現在、そして未来への視線が重なり合う「アフロ・フラクタル」な世界観を構築しています。
アルバムの制作にあたっては、シアトルのHall of Justice Studiosに長年の協力者や友人であるミュージシャンたちを集め、8日間にわたる共同セッションの中で楽曲が形作られました。Erik Bloodをはじめ、Evan Flory-Barnes、Thaddeus Turner、Kassa Overall、Gerald Turner、Marquetta Miller、Carlos OverallといったShabazz PalacesやDigable Planetsのツアーバンドを支えてきたメンバーが参加しており、彼らの親密で濃密な関係性から生まれた生き生きとした演奏と実験性が、作品全体の圧倒的な表現力と重厚なサウンドスケープを支えています。
