ロンドンを拠点にアヴァンギャルドなポップ・シーンを牽引するHMLTDが、10月23日にLucky Numberよりリリースする待望のサード・アルバム『FANGS』を発表しました。2023年の壮大なロック・オペラ『The Worm』発表後、一度は完成させたアルバムを「安全で保守的すぎる」として全消去し、ゼロからのDIYアプローチで再構築された本作。ロワール渓谷の廃城での隔離生活の中で生まれたサウンドは、オーケストラからAbletonへと移行し、EBMやレイヴ・シンセ、ブラック・メタル、ブログ・ハウスを凶暴にブレンドした新ジャンル「Götherdammerüng(またはÜberGöth)」を確立。後期資本主義下における「消費に囚われた現代人の吸血鬼化(Vampirism)」やクラブ・カルチャーの退廃をテーマに掲げ、ゴスというジャンルを現代のエレクトロニック・ダンス・ミュージックの鏡を通して劇的に再定義した極彩色の問題作となっています。
アルバムの全貌を告げる先行シングル「I Used To Ride In Limousines」は、こうした作品全体の壮大なコンセプトと音像をストレートに体現したトラックです。かつてのクラシックなゴスやEBMのパイオニア精神を受け継ぎながら、強烈なサイドチェーンの効いた4つ打ちビートとレイヴ・シンセ、そしてグロウルが激しく交錯。リリックでは「成功と失敗」の本質に切り込み、生産性や承認欲求によって人間の価値を測ろうとする現代社会の道具主義的なシステムを拒絶。「失敗」の中にこそ存在する解放と真の自己定義を見出すという、歪みつつも凛とした哲学が力強く歌い上げられています。
ダンスフロアの快楽と歌詞がもたらす恐怖や歪みが背中合わせに存在する本作は、ただ聴き手を踊らせるだけでなく、享楽の裏に潜む虚無を暴き出すトロイの木馬のような毒と刺激に満ちています。自己肥大化した現代カルチャーに対する鋭烈な批判でありながら、その陶酔感自体の美しさにも身を投じるHMLTDならではの美学が凝縮。『FANGS』と「I Used To Ride In Limousines」は、アヴァンギャルドな挑発者としての彼らの本領を発揮し、2020年代のオルタナティヴ・シーンに強烈な衝撃を与える傑作の誕生を予感させます。
