ニューヨークを拠点とする Grumpy が Bayonet Records より10月23日にリリースするデビュー・アルバム『Unfindable Ring』は、中心人物 Heaven Schmitt のソロ・プロジェクトから、Anya Good、Ellie Long、Austin Arnold、Diego Clare、Lane Rodgers を含むフルバンド体制へと拡張して制作された渾身のデビュー作です。「見つからぬ指輪」を追い求める冒険者の叙事詩になぞらえた本作は、80年代映画風のシンセ、アメリカーナやフォークのニュアンス、シューゲイズ、ジャズのパーカッションからボコーダーまでを自在に横断。ポップで軽快なフックの裏に、アメリカで生活するトランスジェンダーとしての等身大の死生観や現実を潜ませた、野心的かつ親密な作品に仕上がっています。
アルバムからの先行シングル「OBL」は、フィドルや熱量の高いヴォーカルをフィーチャーした爽快なアルト・カントリー・アンサムです。タイトルは「One Beautiful Life(一度きりの美しい人生)」に由来し、トランスジェンダーのメンバーが大部分を占めるバンドがツアー中に直面する世間の冷ややかな視線や暴力の脅威、そしてそれに対する抵抗の精神を描いています。「死んでしまいそうなほど幸せ」というフレーズを響かせながら、存在を否定しようとする世からの不意の悪意に対峙しつつも、互いを守り合いながら生きる仲間同士の確かな愛と日々の歓喜を力強く祝福する一曲となっています。
Alex Tepper が監督を務めたミュージック・ビデオでは、Schmitt が他のメンバーを物陰から覗き見たり追跡したりする不気味な人物を演じる演出が印象的です。これは彼らが現実世界(例えばガソリンスタンドなど)で直面する「向けられた視線は嫌悪なのか困惑なのか」という曖昧で不穏な日常の恐怖や不信感を客観的に落とし込んだものであり、意図せず繰り返されてきた手法の理由を自ら解き明かす試みでもあります。不気味な視線に晒されながらも、メンバー同士で確かな絆と温もりを育み、探求と演奏を続けていくバンドの意思が象徴的に捉えられています。
