DIMAのシングル「APOGEO」とそれを内包するアルバム『Salva』は、静寂と変容の狭間でゆっくりと展開する音の道程(パッセージ)のような作品です。深く個人的な血統や古くからの家族の傷跡を、古代西洋神話や原型のレンズを通して再構築する試みが行われています。出来事を単に物語るのではなく、音を通じて過去の記憶や痛みを再構成し、その進む方向を変えるための並行世界のようなナラティブ(物語)が構築されています。
制作面では、DIMAはコンピューターをメインの楽器として扱い、直感的なスタジオワークから音を紡ぎ出しています。音の断片、サンプリング素材、即興のジェスチャー、そして映画的なインスピレーションから得たステムデータを、進化し続ける緻密な音の建築物へと昇華させています。広大な実験的サウンドスケープの中には、控えめなポップの感性や一瞬のメロディ、明瞭な楽曲構造が不意に顔を覗かせ、リスナーに緊張感と壊れやすい開放感を同時に抱かせます。
アルバム全体、そして楽曲を通じて、反復と静寂が重要な推進力として機能しています。倍音と不協和音が擦れ合い、目的地に着くことのない「途上」にいるような感覚、あるいは物事の中間状態に佇むような奥深いリスニング体験がもたらされます。歪んだサンプルや繊細なエレクトロニックの介入が、言語だけでは決して解決できない感情や先祖の反響を内包しており、聴くこと自体が一種の「修復の行為」となるような、静かで確かな空間が広がっています。
