Mazen Kerbaj – Sampler / Sampled

‘Sampler / Sampled’ は、ダブルアルバムというよりは、互いに独立した2つのパートからなるアルバムである。

第一部は、Mazen Kerbajが過去25年間にこの楽器のために開発したユニークなサウンドと拡張技術をカタログ化したトランペット・ソロ・アルバムで、それぞれ1秒未満から40秒までの318曲からなり、異なるサウンド・マテリアルを提示している。
この音のカタログは様々なレベルで機能する。まず第一に、これはトランペット・ソロであり、オリジナルの順序で演奏することも、ランダム・モードで演奏することもでき、異なる音楽のピースを作り出すことも可能である。しかし、それはまた、様々な用途（着信音、電話の効果音、映画…）に使用することができ、もちろん、サンプリングに基づく新しい音楽を作成するためのサンプルのコレクションでもあるのです。


プロジェクトの第2部は、ループやサンプルを使って作業するミュージシャンのためのコンポジション ‘Sampled’ です。サンプラーのトラックだけを音源として音楽を作るというものです（あらゆる種類のエフェクトや処理を使用することができます）。
そのため、各インタープリター/ミュージシャンは、作品を自分のものにする共同作曲家になります。この点で、Sampledの演奏を依頼されたミュージシャンは、地理的にも音楽ジャンル的にも異なる人たちが選ばれ、非常に異なった、個人的な音楽を作り出しています。


このプロジェクトの重要な成果のひとつは、「音楽は世界共通語である」という使い古された考え方を実践していることです。この考え方は、異なる出自の音楽家が初めて出会い、異なる音楽的伝統に適応する必要なしに一緒に音楽を作ることができる「自由即興音楽」に非常によく表れている。

しかし、ここでは、リアルタイムで音楽を創るという集団的な部分は関与していない。一人の中東の音楽家が西洋の楽器のために新しい言語／語彙を創り出すことから始まり、その語彙を世界中の音楽家が自分たちの言語／文法に当てはめて使うことになる。
コヴィッド閉鎖期間中に録音されたこの二面性のあるアルバムの最終的な成果は、世界が孤立した時代に離れた場所から共同作業を行うための非常に効率的な新しい方法であることを証明し、最終的には、最も破ることが難しいジャンルの境界を破ることによって音楽の普遍性を実践することになったのです。