ARTIST : Avery Tucker
TITLE : Paw
LABEL :
RELEASE : 10/10/2025
GENRE : indierock, rock, ssw
LOCATION : Los Angeles, California
TRACKLISTING :
1. Like I’m Young
2. Malibu
3. Knots
4. Rust
5. In The Smoke
6. Baby Broke
7. Big Drops
8. Sunkiss
9. Angel (feat. Katie Gavin)
10. Dusk
11. My Life Isn’t Leaving You
インディー・ロック・デュオ Girlpool(Avery Tucker と Harmony Tividad)が解散してから3年が経ちました。2014年の『Before the World Was Big』から2022年の『Forgiveness』まで、二人はその密接な声の絆とソングライティングで、ニッチながらも熱心なファンを獲得していました。特に2017年に Tucker がトランジションを経験し、彼の声域が変化した後も、そのダイナミックさは深みを増していました。
解散後、Tucker はソロ活動への願望から、それぞれの道に進みました。
Harmony Tividad: 姓を外し、昨年リリースのソロデビュー作 『Gossip』 では予想外のハイパーポップ路線に進みました。しかし、期待に反してアルバムは表面的なもので、Girlpool 時代のリスナーが期待するものを逸脱しようとする試みは評価されつつも、内容の深さに欠けると評されています。
Avery Tucker: 一方、Tucker は Girlpool の多才なサウンドの中でも、グランジで生々しい側面に深く踏み込み、ソロLP 『Paw』 をリリースしました。このアルバムは、Girlpool の特徴であった繊細なプロダクションと親密な歌詞の痕跡を残しつつ、Tucker の芸術的な志向をより明確かつ効果的に確立しています。
『Paw』 は、秋のリリースにふさわしい「憑りつかれたような、大地のような性質」を持っています。カントリー調のギターリフとシューゲイザーに近い雰囲気が、アルバムの一部が録音されたモンタナの風景と相まって、季節のメランコリーを深く反映しています。
Tucker は、ささやくような唸り声と全力の叫び声を同じ曲の中で使い分ける声の力で、霧がかった音の風景を確立しています。この荒々しさと脆さの融合は、彼がアルバム全体で取り組む自己批判、失われた繋がり、そして過去の痛ましい引力といった複雑な感情にも通じています。
『Paw』 は、同様のテーマを探求した Girlpool の最後のアルバム 『Forgiveness』 の厳粛なエピローグのような役割を果たしています。
オープニングの 「Like I’m Young」 は、性的に弱い立場にあることのエロティシズムとぎこちなさを熟考する、優しさから腸をえぐられるような叫びへと変化するバラードです。この曲のクライマックスで Tucker がジェンダーとセクシュアリティの葛藤を叫ぶ様子は、アルバム全体を通して彼のアイデンティティが人間関係や自己認識にどう影響したかを探る土台となっています。
このアルバムは、「Can you learn to love what’s happened to you?」(自分に起こったことを愛することを学べるか?)という強力な問いをテーマとしており、経験した悪いことを、自己を定義づけることなく受け入れることが可能か、という問題を扱っています。
アルバムには、MUNA の Katie Gavin(デュエット曲「Angel」)、共同プロデューサーの Alaska Reid(リバーブの効いた「Rust」)、Porches の Aaron Maine(「Baby Broke」)がバッキング・ボーカルとして参加し、絶望的な雰囲気に救いの空間を与えています。特に Julee Cruise を思わせる「Rust」は、Tucker の歌とソングライティングの最高の部分を際立たせています。
一方で、『Paw』 は全体的に一貫して厳粛なムードを保ちすぎているため、Girlpool の魅力であったユーモアや軽快さの欠如と相まって、Tucker が目指す影響力をやや弱めているとも評されています。それでも、この作品は彼の過去の多様性を尊重しつつ、新たな創造的な道筋を示すものであり、今後さらなる感動的な作品が生み出される可能性を示唆する、いくつかの有望な火花を含んでいると結論付けられています。





