カナダ人シンガー、Sean Nicholas Savageが、新作『The Knowing』をリリースしました。彼は、日記作者と劇作家の境界線を頻繁に曖昧にするアーティストですが、今作ではそのシンプルさと大胆さで聴く者を驚かせます。その多作ぶりと演劇的なステージでカルト的な人気を誇る彼が、ポップの持つ遊び心ある演出を用いながらも、真摯な姿勢で制作されたアルバムを届けてくれました。
先行シングル「I Love Everything About You」は、ソフトなシンセと軽快なリズムに乗せて、彼の声が響きわたります。80年代半ばから後半のラジオから聴こえてきたような、懐かしくもパロディに陥らない楽観的な雰囲気を醸し出しています。Erasureの繊細な壮大さ、そしてCyndi LauperやNik Kershaw、さらにはNew Kids on the Blockの屈託のない甘さが感じられます。この曲を際立たせているのは、そのルーツにあるオマージュではなく、Savageが感情を込めて歌い上げる真摯なボーカルです。歌詞は「知る(know)」という言葉を中心に言葉遊びを繰り返しており、言語的な過剰さが親密さへと昇華しています。Johnny Dynamiteが監督したミュージックビデオは、皮肉を一切排除した献身への賛歌であり、彼のクリアな表現はとてもラディカルに感じられます。Savageは、愛の歌をその最も恥ずかしげのない形で臆することなく表現し、ポップミュージックを単なるジャンルではなく、メロディを通して意味を掴む哲学的な演劇へと高めています。
